伊藤恵理のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
航空業界の本というと、運航や空港、航空会社の経営など個別テーマを扱うものが多いが、本書はそれらを超えて、「航空ネットワークが国際政治・経済安全保障・産業競争力にどのような影響を与えるのか」という視点から体系的に論じている点が新鮮だった。
ウクライナ情勢や国際情勢の変化によって世界の航空ネットワークがどのように変化し、その結果として各国・各空港の役割がどう変わっているのかが、データやネットワーク分析を交えて分かりやすく説明されている。単なる時事解説ではなく、長期的な視点から航空政策を考える材料を与えてくれる。
専門書としての内容は充実しているが、文章は平易で読みやすく、航空関係者だけでなく、経済安全保障やインフラ政策に関心のある読者にもおすすめできる。
「空」を国家戦略の視点からここまで体系的に論じた日本語の書籍は非常に少なく、航空の見方が変わる一冊だった。航空業界に携わる人はもちろん、政策立案や社会インフラに関心のある方にもぜひ読んでほしい。 -
Posted by ブクログ
言葉ばかり氾濫する"AI"について、世界を股にかける科学者の伊藤さんが実際の導入の現場の話やたくさんの本の引用をつけて、「今後なにを学んでいけばいいのか?」を紐解いてくれた本。中高生向けの科学に終わりがないこと、発明を実際の現場に導入するまでの難しさなど解説されつつ、科学者じゃない一サラリーマンの私も今後生き抜いてけそうなヒントが沢山あってよかった〜結局ビジネスに生きる知恵って、学問や社会で生きる知恵と根本的に一緒よね…
人工知能・ビッグデータ・ディープラーニングについてSF好きな私も知っときたいな…と思ってたら素敵な本に出会えた。
今回、何かを判断するための7つの軸がめちゃくちゃいい軸。先進性、機能性、効能性、普遍性、目的性、唯一性、審美性…美しさを問う軸ってのが、価値観や資本主義が氾濫した現代にとても合っていると思う。
あと著者の伊藤恵理さんの筆致も優しくエネルギッシュ、聡明でユーモアのある40代前半のまだまだ若い女性科学者。これからも沢山本を出してほしいな!本書は3冊目で、うち1冊は大学の講義向けのような専門書だったので、これからが楽しみだ〜 -
Posted by ブクログ
空からみた地経学、という新たな視点の一冊。
筆者の専門とする航空ネットワークの解析から、コロナ禍前後の航空ネットワークの盛衰が明らかになる。中東勢の台頭やコロナ禍をきっかけとした欧州大空港の凋落、しかしながらその欧州の中でもヒースローが勢いを取り戻している姿がそれぞれ興味深い。
またコロナ禍にも関わらず、ウクライナ戦争勃発直前にロシア航空ネットワークが一時的に繁栄したのをデータから明らかにしているが、これは危機を予見するという意味からも大変貴重な教訓を含んでいるのではないか。
惜しむべくは、ネットワークの解析から明らかになった事象に対し、安全保障や国際政治、経済学といった視点からの考察をより踏み込んで行っていれば、さらに地経学としての深みが出たのではないだろうか。
例えば、
◯欧州大空港凋落の原因はシェアの食い合いとし、EUの合意形成の遅さと戦略不在を挙げていたが、では具体的にEUを離脱した英国の国家戦略がEUのそれと具体的にどのように違ったのか。それを踏まえ我が国はどのような戦略を持つべきなのか。
◯台湾有事の際は「仁川」が日本の出入り口になる、というが紛争の烈度が低ければ(台北FIRが閉鎖されただけなら)回避経路で対応できないのだろうか。また逆に米軍が介入するような高烈度の紛争になってしまったら、東アジアの空全体が動きを止めてしまうのではないか。
◯羽田国際化により成田からの撤退が相次ぎ、ネットワークとして貨客の動きが分離してしまったことにより結節点としての日本の航空力の地位低下がある。では、羽田成田の両首都圏空港はあるべく「強靭な」ネットワークにおいてどのような関係性であるべきなのか。また本邦航空会社はそこにどのような経済合理性を見出すべきなのだろうか。
もちろんこれは筆者一人の力で解決するべき問題ではなく、我が国が多様な知恵を集めながら形成すべき国家戦略なのだろう。
その礎となるべく、これからはぜひ他分野の知見も巻き込みながら、我が国で空の地経学が発展していってもらいたい。本書がその端緒となることを願う。 -
Posted by ブクログ
帰納; 集めた事例から一般的に通用する法則を見つける推論
強い、弱いとしか評価できない
演繹; 一般的、普遍的な法則や原理から結論を見つける推論
正しい、正しくないと評価
アブダクション; 観察-ひらめき-仮説の思考プロセス
科学的な思考方法; 帰納、演繹、アブダクションを組み合わせて思考する方法
コンピュータは演繹的だったが、DLで帰納に
パズル; 情報が多い方が満足のいく結論に達する
ミステリー; 情報量の増加は事態の混乱を招く
サイコパスの脳; 共感(empathy)を欠くが、
同感(sympathy)という自分が体験した感情記憶から
他者の体験を照らし合わせて予測することはできる。 -
Posted by ブクログ
「航空管制科学」という、これまでの管制官の経験や勘を頼りにやってきた航空管制の分野に、どうコンピュータが人間を支援できるかということを研究する航空宇宙工学が専門の研究者のエッセイ。航空管制科学についての話と、理系研究者の生活、日本から出て仕事をすることについての思いなどを述べた話が、半分ずつくらい載っている。
おれにとっては新しい本で、結構難しい話のはずなのに、とても柔らかく書かれていることと、研究者として生きることの喜びや厳しさを率直に書かれていることが、新鮮だった。後は何よりもおれと年齢が近いことだ。おれはこんなんなのに、この人こんなことまでやって、何かを成し遂げようとする人はほんとすごいなあ、といったことをずっと考えてしまった。
著者が教授から聞いたという印象的な話、「大学院の博士課程を卒業してからどう研究者として成長していくか」に「甘柿コース」と「渋柿コース」がある(pp.25-6)というのは印象的だ。おれが同じ立場だったとして、「渋柿コース」を選べる勇気や自信があるのか、すごい不安だ。「孤独は、創造の代償だ。孤独を失えば、創造なんてなしえない。」(p.145)という言葉が印象的だ。
あとは航空管制の現場のFirst Come First Served(先着順制)というのは聞いたことあったけど、「将来、エアラインに公平な航空管制サービスを提供しきれなくなってくることがあります。」(p.166)、ということで「良い機材を搭載した航空機にはよりよい管制サービスを提供」(同)するという、Best Equipped Best Servedという考え方があるらしい。
それにしても、職人技のようなことをする管制官に機械を導入して、それを管制官が受け入れるようになるのかどうか、管制官のプライドを傷つけることにはならないのか、という疑問を持った。結局人間は感情で動くのだと思うが、そういう旧態依然といった人は特に航空の現場では生きていけないだろうなあと思った。
航空に興味がある人だけでなく、将来研究者を目指す人にも有益な本だと思う。(17/08)