國重惇史のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
学生時代、官庁訪問でいつくかの地検にいったときに、パンフレットや広報映像で代表的な経済事件として取り上げられていたのが、このイトマン事件でした。自分にとってはもの心つくかつかないかの「過去の話」だったわけで、現実感はあまりなかったのですが、それでも、検察が戦った「巨悪」、「社会の闇」の象徴として紹介されていたのが印象に残りました。
さて、本書、さながらリアル半沢直樹の銀行内の権闘争が描かれるわけですが、件の主人公がときに自ら不正に加担したり、明らかに違法な「危ない橋」を渡るのに対して、本主人公は、怪文書「Letter」をだしたり、社長解任を主導したりと暗躍はするものの、一貫して自分の身はきれいで、不正をやっつけた正義漢のスタンスは変わりません。あまりに身ぎれいすぎて、むしろ本書に書かれていない(書けない)部分に何かあるんじゃあるまいかという想像が膨らみます。
刑事事件として終わったものの、解明されない謎やカネの動きも多く、非常に興味深い事件だなと思いました。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ当時の住銀中堅社員の目線から見たイトマン事件の記録。
あくまでも当時の著者の立場から事件を振り返ったもの。
●危機を察知してからも行内は保身や派閥争いで動きが鈍い。そうこうするうちにイトマンの借金は劇的に膨れ上がる。銀行の危機察知から詐欺師たちの巻き返し、住銀のカネをしゃぶれるだけしゃぶり尽くそうとする詐欺師たち、それに操られる会長、幹部、イトマン、、。
●行内政治、イトマンでの多数派工作、社長の追い落とし、、財界の大物でもある磯田会長を篭絡していた詐欺師、会長や役員に直電する詐欺師、、これ恐ろしいのは事件の全貌はいまだに明らかになっていないということ。今後も明らかにはならない。数千億円が闇に消えた。
●謎は30年たっても謎のほぼ謎のまま。伊藤寿栄光とは何者なのか。そもそも不動産でイトマンの取引相手、それが役員クラスでスカウトされて社長と二人三脚で不動産投資に邁進する。さらにするするっと住銀の会長と昵懇の仲になり、住銀役員に電話で指示したりもする。イトマン社長の嫁が当たり前に5000万円受け取ったとか、イトマン社長は会社のために頑張っていたのか私欲が絡んでいたのか、その辺も謎。磯田会長の娘が勤務する会社での絵画取引、ここに許永中が絡むがここらも謎が多い。登場人物が何を考えてそんなことをしていたのか??というのはわからない。イトマン処理反対派の役員らもどこまでのことを知ってそうしていたかはわからない。磯田会長もどこまで何を知っていたのか知らなかったのかわからない。そういう積み重ねがイトマン事件であるバブルであったというところだろうか。
・磯田会長は戦前生まれのバリバリエリート。
・70歳すぎても住友銀行に君臨、アンタッチャブルな存在に。
・一人娘を通じて詐欺師が侵食。
・磯田会長派の役員は磯田の子飼い。高卒を磯田が引き上げた。
・イトマン社長も磯田の子飼い。高卒を磯田が引き上げた。
・イトマンには住銀が首都圏進出やら初期の不良債権処理を押しつけた貸しがあった。
・著者は中堅幹部候補として事件を知って処理する方向へもってこうと悪戦苦闘。
・著者の上司が当時は役員だった西川善文。のちに頭取として君臨。
・著者が住銀辞めたあとに楽天副会長やらになるのは全て西川の後ろ盾によるもの。
・そういえば東芝もとある社長が傍流の子飼いを自分の出世に帯同させて引き上げて社長にまでして原発で失敗してグループ解体へまっしぐら中なので似てる構造。
・エリートたちの世界はコネ、同期、兄弟分、子飼いなどの関係性でつくられている。案外に狭い世界。そこに地べたにいた詐欺師が入り込んだことで起きたのがイトマン事件などなどバブル期の事件。 -
Posted by ブクログ
当時の住友銀行の部長が、イトマン事件について書いた本。ほとんどの登場人物が実名で書かれている。著者が当時つけていたメモを基に書かれているため、日付や場所、発言にも信憑性があり、説得力がある。巨大銀行、巨大企業の意思決定のやり方や、内部抗争の実態について理解できた。
「(国会答弁補佐)野一色部長は想定問答集にあちこち付箋をつけて「これでもう完璧だ」と言う。私は「そんなに付箋だらけにしたら、どの付箋が何をさしているこかわからなくなってしまいますよ。こういうのは、自分の知識の範囲で答えるしかないんですよ」と応じた。実際、その場になって彼の担当分野について質問されると、彼はどの付箋だかわからなくなって、ページをめくりながら往生していた」p193
「(役員の動き)皆、流れを読んで、いま何をするのが得策なのかを嗅ぎ取る。それに乗ることにかけては超一流なのだ」p314
「(野村證券 中野常務 1990年)子供を入れたくない企業ワースト10を知っているか。1 イトマン、2 秀和、3 住銀、4 野村證券、5 大昭和製紙。野村が住銀より下なのでホッとしたよ」p452
「(裁判)相手側(許氏や伊藤寿永光氏側)の弁護士も、おそらく元検事総長などの相当の大物がでてくるはずだ。彼らは、検察がどういうロジックで攻めてくるかがわかるから、相当慎重にならざるを得ない」p458
「もし、銀行で頭取になりたいのならどうすればよかったのか。それは何もしないことだ。減点主義の組織なのだから」p464 -
Posted by ブクログ
イトマン事件の顛末を当時部長クラスの著者(トップ昇進組、転出後のちに楽天DLJ社長)が、自分の当時の詳細なメモをもとに日時単位で記録する。
イトマンという中堅商社がバブルの最中不動産(ヤクザ絡み)でズブスブになってしまうところに、住友銀行が当時の天皇と呼ばれた会長がこれまた身内共々ズブズブに入り込んでしまい、銀行を巻き添えに総額5000億円の損失を出す。
全く仕事(適正なサービス・商品を提供し対価をもらう)という話がなく、校内の争い、および外部からの圧力を使って内部に関わっていく話が繰り広げられていく。
とても生々しく面白い。銀行が生き生きしていた時代ともいえるが、30年弱でこうも変わるのかという感慨も起こる。