今井章子のレビュー一覧
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原著は2018年発行。ごくまっとうなことを述べていると思うが、世の中はますます悪いほうに。まさかトランプがもう一度大統領になるとは思わなかっただろう。
「コモングッド(共益)」とは何世代にもわたって積み上げられた「信頼」の集合体である。
世の中のゲームのルールは「コモングッド」を尊重するものから、「何が何でも手段を選ばず勝ってやろう」に代わってしまった。
・「手段を選ばず」勝つ政治
・「手段を選ばず」利益を最大化する人々
・経済を不正操作するためなら「手段を選ばない」人々
【原題】THE COMMON GOOD
【目次】
第1部 「コモングッド」とは何か
第1章 シュクレリ
第2章 私 -
Posted by ブクログ
政治献金や天下りをエサに自分たちに有利なように市場のルールを変更する各業界の強欲さに呆れ返る
法律の成立を妨害し、法律を骨抜きにし、あるいは執行させないよう予算を削らせる
身勝手の極地だろう
歪んだ資本主義ではなく、資本主義を歪めたのだ
こんな市場を誰が信じるというのか
ビジネスマンとしても大統領としてもトランプがでてきたのは当然だと思えた
市場万能という神話は誰がルールを決め、ルールを執行しているかを見過ごさせるというのはもっともな指摘だ
富裕層は嫌がらせのためにこんなことをしているのではない。
ただただ自分のことしか考えていないだけなのだ
昔のように下位層で連帯し、歪められたルールを元に戻 -
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本書は、グローバル化する社会を、Tシャツの一生を追うことでわかりやすく可視化したユニークな物語だ。
グローバル化、とくに市場万能主義が世界にひろまることで、貧困がさらに拡大するという見方がある。反対に、市場拡大・自由貿易こそが世界を貧困から救うのだという見解もあるだろう。しかし、著者が実際にTシャツの一生を追うことで目にしたものは、どちらの主張とも違っていた。
Tシャツの一生は、いまだに市場原理ではなく、政府による規制や介入・保護などによって決められていた。ほんとうの意味でTシャツが市場と出会うのは、古着としてアフリカに入ってからだ。世界を貧困から救うには、グローバル化する市場経済をどー -
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一枚のTシャツがどこで生まれ,どこで一生を終えるかを追うことによって,グローバル化の現実を描き出した著作。中国産のTシャツの原料である綿花は,実は大半がアメリカのテキサス産であった。そして,アメリカで着古されたTシャツは日本やアフリカの古着市場に送られ,そこで一生を終えているのであった。
市場経済を「正しい」社会システムと考える著者による本であることをある程度割り引いて考える必要があるが,グローバル化によって貧窮する人びとが生じるのは,市場原理によってではなく,市場競争から除外され,市場に参加することが政治的に抑えられているせいであるという指摘は説得力がある。中国製品が安いのは,市場原理によ -
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Tシャツの一生は、原材料はどこで産まれ、どこで加工され、どこで仕上げられ、どの市場へ、最終的にはどこで一生を終えるのか。長い長い旅だ。ものすごく多くの複雑怪奇な政治的思惑がべっとり絡んでいることに衝撃を受けた。「底辺への競争」は悪なのか、保護主義政策はやめるべきか。いろいろ考えさせられる。全体を通して思ったことは、一度生まれた流れは止めることはできないのではないか、一時的に止めることができても、形を変え、角度を変え再びやってくる、そんな印象を受けた。コスト云々でなく、絶えず、柔軟に変化し市場に対応できる者だけが生き残ることができるのであるから、生きている間は落ち着くことはできないものかもしれな
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本書はアメリカ社会について書かれているものではあるが、訳者の指摘する通り、日本にも当てはまるものだと思う。
かつて、市民の間で信頼の元、共有されていた「コモングッド(共益、公共善、良識)」といった価値観が、
「勝つためなら何でもあり」の政治と「大儲けするためなら手段を選ばない」経済により、蔑ろにされ衰退してきてしまった現代において、
「コモングッド」を取り戻すためにはどうすればいいのか、というのが本書のテーマである。
日々のニュースを見るだけでも、政治家や大企業にたいして、公益を重視する公正で良識ある存在だと思うのは、かなり難しい。
「どうせ悪いことしてるんでしょ」と冷笑しながら見る方がは -
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ライシュ氏の本はすでに日本語版で何冊か出ていますが、2017年時点では本書が最新になります。原題はSaving Capitalism、つまり資本主義を救え、ということです。ライシュ氏の主張を一言で言えば、今の資本主義は大多数の人間のための仕組みではなく、少数の富める人間のためのシステムになってしまっているから、そのルールを修正することで資本主義を健全な形に戻そう、ということです。その意味では、訳者解説の中にもありましたが、本人は共産主義者でもアナーキストでもなく、資本主義礼賛者であって、今の「ゆがんだ」資本主義を「健全な」資本主義に戻す必要がある、というのが主眼になっています。
また彼の主張 -
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資本主義の根幹である自由主義は、所有権、独占、契約、破産、執行の5つで構成されているが、それらは富裕層、大手企業に利するようにルールが歪められており、中間層が没落しているというのが、本書の一貫した主張。
市場の失敗を抑制する手段として、公共事業の実施、財政政策、などの政府による介入があるが、政府自体も富裕層や大手企業など、自由市場から利益を享受しているグループと結託している。それ故に、政府も過度な自由主義を推進することになり、中間層・貧困層と富裕層との格差は拡大してしまう。
能力主義と自由主義が合わさることで、中間層・貧困層と富裕層の分断は一層進んでいる。多くの富を持つことが、価値であると考え -
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この世のどこかに「自由市場」という概念が存在しており、そこに政府が「介入する」のだ、という考え方ほど人々の判断力を鈍らせるものはない。政府なくして自由市場は存在しない。文明とはルールによって成るもの。
法律のどこを見ても、「株主が企業の唯一の所有者であり、したがって企業の唯一の目的は彼らの投資価値の最大化にある」とは書かれていない。
これは、1980年代に企業の株主利益を最大化したい乗っ取り屋が経営者達に対し、採算性の悪い資産を売却し、工場を閉鎖し、借金をもっと引き受けて社員を解雇するよう要求し始めた頃に出てきたもの。
1978年から2011年にかけて、新しい大企業が支配力を強めていくのに -
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25年ほど前に著者の本「ワークオブネイション」を大学時代に読み21世紀はグローバル化が進み、国家の最大の役割は人材をつくることになる、そしてもっとも付加価値の高い人材はシンボリックアナリストと呼ばれるものをつくるのではなく概念的思考をする人になる、という内容に衝撃をうけて自分のその後の職業観、就職におおきく影響をされたとおもう。
あれから26年、著者の予言どおり、世界はグローバル化し、そしてシンボリック穴リストの職業としてインターネット関連、グローバルな金融、バイオなどまさに予言どおりとなっている。
しかしながらそれによって、あらたにシンボリックアナリストがあまりに力をもちすぎて、市場のルール -
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主人公が中国の工場で製造された一枚6ドルのTシャツの、経済ドキュメンタリ。
米テキサス州産の綿で、綿作りのように単純な川上産業が高度なサービス業中心の米国経済で繁栄し続けているのはなぜか。
筆者は歴史をひもとき、米政府の補助金制度、つまり200年以上にわたり発達してきた綿の生産・販売におけるリスクを緩和する政策が競争優位に影響していると分析する。
そして綿は遠く海を隔てた中国・上海で糸に紡がれ、布に織られ、Tシャツに縫い上げられる。18世紀に産業が興って以来、繊維・衣料品生産の単純労働は低賃金、長時間労働、粗末な労働環境に耐えて働く労働者が担ってきた。中国は労働者の移動を制限する戸 -
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Tシャツというどこの国にでもある商品からグローバル経済を見たという本。
まず、取材がしっかり頑張りましたという印象を読後に覚えます。
アメリカ基準のグローバル経済は、アメリカの政策に左右されすぎではないか?と思ったり、中国が肥大化しすぎではないかと思ったりしました。
これは、ひとつに、繊維産業が労働力集約型なので、技術集約型ならあんまり起こらなかったことが原因でしょう。
そのためか、アメリカには高度な製造業の集積は残っていません。
それに、「底辺への競争」とも言うべき、低賃金、低コスト国家へのシフトがもたらした結果でもあります。
日本語訳のために本の末尾に参考文献の記述が全く無かったこ -
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この本を初めて本屋で見た時は、「どうせそこらの運動家が書いた反グローバリズムの本でしょ〜。」と触れもしませんでした。
今回、ふと手に取りイントロを読んで面白いと感じ読み始めました。
本書は今日の世界経済の現状をTシャツというありふれたプロダクトを題材に語る物語です。あくまで学術書ではありません。ただ、その内容は一読に値するものであるのは確かです。
何よりも、自由貿易や保護貿易、反グローバリゼーションなどの主義主張に捉われることなく客観的に世界経済を描いている点は考えるところの多いものかと思います。物事の両面性や多様性を考えることなく単純化された議論を行う某ロックバンドのボーカルが推薦