今井章子のレビュー一覧

  • コモングッド―暴走する資本主義社会で倫理を語る

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    原著は2018年発行。ごくまっとうなことを述べていると思うが、世の中はますます悪いほうに。まさかトランプがもう一度大統領になるとは思わなかっただろう。

    「コモングッド(共益)」とは何世代にもわたって積み上げられた「信頼」の集合体である。
    世の中のゲームのルールは「コモングッド」を尊重するものから、「何が何でも手段を選ばず勝ってやろう」に代わってしまった。
    ・「手段を選ばず」勝つ政治
    ・「手段を選ばず」利益を最大化する人々
    ・経済を不正操作するためなら「手段を選ばない」人々

    【原題】THE COMMON GOOD
    【目次】
    第1部 「コモングッド」とは何か
     第1章 シュクレリ
     第2章 私たちはどんなコモングッドを共有しているのか
     第3章 「コモングッド」の起源
    第2部 「コモングッド」に何が起こったか
     第4章 搾取
     第5章 三つの構造的崩壊
     第6章 「コモングッド」の衰退 
    第3部 コモングッドは取り戻せるか
     第7章 受託者精神というリーダーシップ
     第8章 名誉と恥
     第9章 真実の復活
     第10章 みんなのための市民教育

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    2025年02月10日
  • 最後の資本主義

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    政治献金や天下りをエサに自分たちに有利なように市場のルールを変更する各業界の強欲さに呆れ返る
    法律の成立を妨害し、法律を骨抜きにし、あるいは執行させないよう予算を削らせる
    身勝手の極地だろう
    歪んだ資本主義ではなく、資本主義を歪めたのだ
    こんな市場を誰が信じるというのか
    ビジネスマンとしても大統領としてもトランプがでてきたのは当然だと思えた
    市場万能という神話は誰がルールを決め、ルールを執行しているかを見過ごさせるというのはもっともな指摘だ
    富裕層は嫌がらせのためにこんなことをしているのではない。
    ただただ自分のことしか考えていないだけなのだ
    昔のように下位層で連帯し、歪められたルールを元に戻すことが必要だというのは賛成する
    訳者あとがきで日本はむしろ超富裕層の程度が弱まっているとあったが、これは日本人が逸脱を許さないことと金に対してマイナスイメージがあるせいかもしれない。

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    2017年12月22日
  • あなたのTシャツはどこから来たのか?―誰も書かなかったグローバリゼーションの真実

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     本書は、グローバル化する社会を、Tシャツの一生を追うことでわかりやすく可視化したユニークな物語だ。
     グローバル化、とくに市場万能主義が世界にひろまることで、貧困がさらに拡大するという見方がある。反対に、市場拡大・自由貿易こそが世界を貧困から救うのだという見解もあるだろう。しかし、著者が実際にTシャツの一生を追うことで目にしたものは、どちらの主張とも違っていた。
     Tシャツの一生は、いまだに市場原理ではなく、政府による規制や介入・保護などによって決められていた。ほんとうの意味でTシャツが市場と出会うのは、古着としてアフリカに入ってからだ。世界を貧困から救うには、グローバル化する市場経済をどーこーというより先に、発展途上国の人たちの識字率を上げ、政治を立て直すことのほうが重要だという結論に、著者は到達する。
     自由貿易を世界中に押しつけて廻っているアメリカが、必死に自国の繊維産業を保護している姿が描かれる。にもかかわらず、繊維業界は虫の息だ。アメリカの保護主義政策は自国の労働者を守ることはできなかったが、まわりまわって発展途上国の経済のためにはかえってプラスとなっている側面もあったりして……。黒か白かで語られることの多い「グローバル化」について、じっくりと地に足をつけて見直すために、「物語」という形式が非常に大きい効果を上げている。
     個人的な話をすれば、アメリカのヘビーウェイトTシャツが大好きで、10枚単位で注文するくらいだ。「フルーツ・オブ・ザ・ルーム」「ジャージーズ」「ユナイテッド・スポーツ」「アンヴィル」……最近は「GILDAN」(これはカナダメーカーだが)がお気に入り。これらのTシャツのほとんどがアメリカ産綿100%で、ホンジュラスやニカラグアやメキシコでつくられている理由が、アメリカの保護主義にあるとわかってたいそうおもしろかった。
     グローバル化する経済が、世界にどのような影響を与えているのか。そしてグローバル化の意味するものは、いったいなんなのか? わかりやすくて、爽快な読み心地の、じつに優れた論考だと思う。

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    2014年03月30日
  • あなたのTシャツはどこから来たのか?―誰も書かなかったグローバリゼーションの真実

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    一枚のTシャツがどこで生まれ,どこで一生を終えるかを追うことによって,グローバル化の現実を描き出した著作。中国産のTシャツの原料である綿花は,実は大半がアメリカのテキサス産であった。そして,アメリカで着古されたTシャツは日本やアフリカの古着市場に送られ,そこで一生を終えているのであった。

    市場経済を「正しい」社会システムと考える著者による本であることをある程度割り引いて考える必要があるが,グローバル化によって貧窮する人びとが生じるのは,市場原理によってではなく,市場競争から除外され,市場に参加することが政治的に抑えられているせいであるという指摘は説得力がある。中国製品が安いのは,市場原理によって安価な労働力が買いたたかれているのではなく,政治的に抑圧された農民が国家によって不当に安価で働かされているからである。一方,アメリカの繊維産業のように,政治的な影響力を強く持つ人びとは,グローバル化や市場開放の影響を巧みに避けることによって利益を得ている。このように考えると,健全な市場原理が世界全体に浸透すれば,たしかにみながハッピーになる世の中が来るかのように思えてくる。

    健全な市場原理が世界全体に行きわたるということはほとんど期待できないということだ。市場原理を浸透させようとすればしただけ,市場を回避しようとする人びとが現れ,そこで利益や幸福の不公正な分配が生じるだろう。そうであれば,健全な市場原理の浸透を目指すことは逆説的に利益の不均衡を生み出すのだと考えられないだろうか。まさに,ポランニーのいう二重運動である。

    著者のバランスのとれた現状分析が心地よい。物事の両面をしっかりと見ることの大切さを教えてくれる。

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    2014年02月08日
  • あなたのTシャツはどこから来たのか?―誰も書かなかったグローバリゼーションの真実

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    Tシャツの一生は、原材料はどこで産まれ、どこで加工され、どこで仕上げられ、どの市場へ、最終的にはどこで一生を終えるのか。長い長い旅だ。ものすごく多くの複雑怪奇な政治的思惑がべっとり絡んでいることに衝撃を受けた。「底辺への競争」は悪なのか、保護主義政策はやめるべきか。いろいろ考えさせられる。全体を通して思ったことは、一度生まれた流れは止めることはできないのではないか、一時的に止めることができても、形を変え、角度を変え再びやってくる、そんな印象を受けた。コスト云々でなく、絶えず、柔軟に変化し市場に対応できる者だけが生き残ることができるのであるから、生きている間は落ち着くことはできないものかもしれないと感じた。ビジネスは信頼関係の上に成り立っているというのも改めて思い起こさせられたし、これからの世の中で大事なキーワードのひとつになる気がする。そして、中国恐るべしというのはものすごく感じたし、中国の優位性はまだまだ続くだろうし、底辺への競争には負ける日が来ないのでないか。それ故に数年前にあったチャイナフリーの運動や、トヨタ危機なんかもアメリカ人の特性というか、危機感というか同情意識が過剰に作用した結果なのかもしれないなと思った。

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    2012年02月18日
  • あなたのTシャツはどこから来たのか?―誰も書かなかったグローバリゼーションの真実

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    グローバリズムの本は1冊だけ読んでも偏った知識を得るだけ。
    この1冊を読めば、経済と政治のダイナミックな動きを知れる。

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    2009年10月04日
  • コモングッド―暴走する資本主義社会で倫理を語る

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    本書はアメリカ社会について書かれているものではあるが、訳者の指摘する通り、日本にも当てはまるものだと思う。

    かつて、市民の間で信頼の元、共有されていた「コモングッド(共益、公共善、良識)」といった価値観が、
    「勝つためなら何でもあり」の政治と「大儲けするためなら手段を選ばない」経済により、蔑ろにされ衰退してきてしまった現代において、
    「コモングッド」を取り戻すためにはどうすればいいのか、というのが本書のテーマである。

    日々のニュースを見るだけでも、政治家や大企業にたいして、公益を重視する公正で良識ある存在だと思うのは、かなり難しい。
    「どうせ悪いことしてるんでしょ」と冷笑しながら見る方がはるかに簡単な状態である。

    でも、そんな社会嫌だなと、ちょっとでも思う人なら本書を読んでほしい。

    政治や経営、報道に関わる人たちだけでなく、私たち1人1人が社会に対して責任ある存在なのだと思い出さないといけないと感じた。

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    2024年11月19日
  • 最後の資本主義

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    ライシュ氏の本はすでに日本語版で何冊か出ていますが、2017年時点では本書が最新になります。原題はSaving Capitalism、つまり資本主義を救え、ということです。ライシュ氏の主張を一言で言えば、今の資本主義は大多数の人間のための仕組みではなく、少数の富める人間のためのシステムになってしまっているから、そのルールを修正することで資本主義を健全な形に戻そう、ということです。その意味では、訳者解説の中にもありましたが、本人は共産主義者でもアナーキストでもなく、資本主義礼賛者であって、今の「ゆがんだ」資本主義を「健全な」資本主義に戻す必要がある、というのが主眼になっています。

    また彼の主張の中心にあるのが、特に米国を中心に起こっている「自由主義」(右)vs.「政府の介入」(左)という政府の介入度合いをベースにした対立はまやかしであって、資本主義のルールが「誰を利するようになっているか」という視点で対立軸を考えるべきという主張でしょう。「自由主義」(右)vs.「政府の介入」(左)という視点は、特に知識人の間では根強く、おそらくその根底には、ハイエクvs.ケインズの論争があります。それに対してライシュの視点は、むしろ資本家と労働者の対立にフォーカスをあてたマルクス色が強いと言えるのかもしれません。ただ厳密に言えば、ライシュ氏自身も本書で述べているように、現代の資本主義では「資本家になった経営者」と労働者の対立と言った方がよいとは思います(つまりストップオプションを大量に付与された経営者と従業員の対立)。

    本書で説得力があると感じたのは、米国が過去にも同様の境地に陥った際に、民主主義が最後は機能して、多数のための資本主義、つまり資本主義が民主主義と折り合いをつけた事例をいくつか紹介していることです(19世紀のジャクソニアンの登場など)。それらを事例に挙げながら、ライシュ氏は米国の資本主義はまだ終わっていない、今は修正の時である、と力説されていてそこは希望が持てる点でした。その意味では邦題の「最後の資本主義」というのは少し誤ったニュアンスを読者に与える気がしました。このタイトルだけを見てしまうと、あたかもライシュ氏はアンチ資本主義者であって、資本主義の終焉は近いぞ!と歓喜の声を上げている論者かのような印象を与えてしまいます。ですから邦題は素直に「資本主義を救え」のようなものにした方が著者のメッセージが伝わるのではないでしょうか。

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    2023年04月30日
  • 最後の資本主義

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    資本主義の根幹である自由主義は、所有権、独占、契約、破産、執行の5つで構成されているが、それらは富裕層、大手企業に利するようにルールが歪められており、中間層が没落しているというのが、本書の一貫した主張。
    市場の失敗を抑制する手段として、公共事業の実施、財政政策、などの政府による介入があるが、政府自体も富裕層や大手企業など、自由市場から利益を享受しているグループと結託している。それ故に、政府も過度な自由主義を推進することになり、中間層・貧困層と富裕層との格差は拡大してしまう。
    能力主義と自由主義が合わさることで、中間層・貧困層と富裕層の分断は一層進んでいる。多くの富を持つことが、価値であると考えられていることで、富を持たない人は、自身の能力不足・努力不足ゆえに、年収が低いのだと屈辱感を覚えてしまう。
    マイケル・サンデルの「実力も運のうち」の主張と似ているが、本書は経済的な側面から過度な能力主義を批判している。

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    2022年08月21日
  • 最後の資本主義

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    拮抗勢力の衰退、労働組合、中小企業
    ※健全で信頼されるカウンターパワーが必要
    グローバル化と技術革新は遠心力を持つ、繁栄を分かち合うための抜本的手段が必要
    ステークホルダー資本主義対株主資本主義、ステークホルダー資本主義を勝利させなければならない。
    新たなルールの構築が必要

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    2017年12月06日
  • 最後の資本主義

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    「暴走する資本主義」から10年。その後も富の格差は広がり続けている。本書のテーマは一貫して自由経済と政府の対立軸がなくなっていること。資本主義は自由経済によって健全な競争が保たれる前提だが、資本主義の勝者がゲームに勝つことよりルール(法律)を変えることを優先した場合、富は適切に配分されずに一部に集中し続けてしまう。
    問題定義からその真因分析、そして目指すべき方針まで示された優良図書。

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    2017年05月13日
  • 最後の資本主義

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    この世のどこかに「自由市場」という概念が存在しており、そこに政府が「介入する」のだ、という考え方ほど人々の判断力を鈍らせるものはない。政府なくして自由市場は存在しない。文明とはルールによって成るもの。

    法律のどこを見ても、「株主が企業の唯一の所有者であり、したがって企業の唯一の目的は彼らの投資価値の最大化にある」とは書かれていない。
    これは、1980年代に企業の株主利益を最大化したい乗っ取り屋が経営者達に対し、採算性の悪い資産を売却し、工場を閉鎖し、借金をもっと引き受けて社員を解雇するよう要求し始めた頃に出てきたもの。

    1978年から2011年にかけて、新しい大企業が支配力を強めていくのに伴い、新規企業の参入割合は半減した。

    モンサントの市場独占により、大豆畑1エーカー当たりの平均作付け費用は、1994年から2011年の間に325%増、とうもろこしの作付けコストは259%増となった。そして、種子の遺伝子的な多様性は劇的に減少した。

    個人の収入を決定づけているのは、相続、コネの有無、先入観等その人の能力以外のもの。能力主義では全くない。

    納税者が社会的意義のある職業をもっと強く支援する方法として、社会福祉や幼児保育、高齢者介護、看護、法律相談、教育などの職業を選択した卒業生についてはその学費ローンを免除するのがよい。

    CEO報酬は1978年から2013年の間に937%増加し、同時期の労働者の賃金上昇はわずか10.2%。

    最も報酬の高い役員上位5名に対する報酬額がその企業の法人所得に占める割合は、1993年には平均5%であったが、2013年には15%を上回る。さらにこれらの報酬のほとんどは法人所得税から控除されていた為、残る普通の人々が所得の割に高い税金を払い、税収の穴埋めをしてきた。

    2001年から2013年にかけて、S&P500インデックス企業による自社株買い額は3.6兆ドル。CF総額の3分の1。

    2003年から2012年にかけて、自社株買いが最も多かった上位10位のCEOは、報酬の70%をストックオプションもしくはストックアワードで受け取っていた。

    高額のCEO報酬を出している上位150社のPERは、同業他社よりも10%低い。業績も平均15%低い。さらに、高額報酬のCEOの在任期間が長ければ長いほど業績が悪化している。

    2013年銀行上位5行に出された640億ドルの補助金は、この5行の年間利益総額とほぼ同額。この補助金がなければ、267億ドルもの賞与の原資はおろか、利益の全てが失われていた。彼らが賞与をもらう事ができたのは、彼らの能力ではなく、米国の政財界において特権的な立場にいるから。

    1950年代初頭、GEは全てのステークホルダーにとってバランスのとれた最善の利益を追求する事で有名であった。

    企業経営は全ての人々の利益になるような経済を期待して国民から託される職務。

    米国の富裕上位1%層に向かう国内総所得の割合は1960年代の10%から2013年には20%を超えるまでに上昇したが、ドイツのそれは40年間11%のまま。

    ドイツのガバナンスは、取締役会の上に監査役会があり、監査役会の半数は社員の代表者で構成されている。この為、労働者の権利が受容的。

    労働者の所得の低下は、彼らが経済力や政治力を持っていない事に起因する。

    最低賃金が高いほど、従業員の離職率が低い。

    低賃金で働く労働者の給与が引き上げられても、競争にさらされているので商品価格が上昇する事はない。

    貧しい人は向上心がないから貧困から抜け出せないのではなく、機会とそれを獲得する政治力がないから。

    最も裕福な米国人上位10人のうち、6人が遺産相続によるもの。

    システムが不公平で独断に満ちており、勤勉が報いられないと人々が感じると、私たち全員が損をする結果になる。マイナスサムゲーム。

    この30年間、企業を動かす誘因の全てが一般労働者の賃金を引き下げ、取締役の報酬を引き上げる結果につながった。

    カリフォルニアでは、CEOの報酬がその企業の平均労働者の賃金の100倍であれば、法人税率が8.8%から8%に下がり、25倍なら7%に下がる。200倍であれば9.5%、400倍であれば13%に引き上げられる。

    平均的労働者の賃金に対するCEO報酬の比率開示義務はドッドフランク法。

    年間生産性上昇率に合わせて労働者の賃金を引き上げる経営者には低い税率を課し、引き上げない経営者には高い税率を課す方法もある。国全体の経済的利益と労働者の収入を連動させる。

    カリフォルニアでは、低賃金の仕事を多く下請けに出すほど高い税率を課し、企業が雇用者を個人請負業者として不正に分類する事や、かつて社内で働いていた低賃金労働者を他者に転属させる事を禁じている。

    従業員持株制度や利益分配制度、または従業員が会社を所有する形式に協同組合を組織する事に優遇税制を適用して、従業員により直接的なオーナーシップを与える方法もある。

    企業とは契約と知的財産の集合に過ぎず、株主に所有されているわけではない。

    企業の取締役には自社の株式価値を最大化する信任義務があるという考え方は法的根拠のないフィクションにすぎない。株主は企業の役員を選ぶが、役員には株主利益を最優先しなければならないという法的義務はない。

    2014年スーパーチェーンのマーケットバスケットの取締役会は、CEOのアーサーT.デモーラスを解任した。それは彼がステークホルダー全員が利益を享受できる合同会社とみなしていた為だが、これに対し社員と顧客がデモやボイコットを起こし、最終的には取締役会は同社をアーサーに売却した。

    パタゴニアは、ベネフィットコーポレーションという形態で組織されている。株主と共に社員や地域社会、環境の利害を考慮する事を定款に定めている。

    60年前の米国では当たり前だったステークホルダー資本主義

    1980年代に定着した株主資本主義は、労働者の賃金を下げ、地域社会が荒廃した。

    1990年から2008年の間に、高校を卒業していない米国白人女性の平均寿命は5歳短くなった。

    ベーシックインカムがあれば、人々はあらゆる種類の芸術や趣味の追求に意義を見出せ、社会は芸術活動やボランティア活動による成果を享受できる。大多数の人が肉体的、精神的な活動よりも怠惰を貪る事を選ぶとは考えにくい。むしろ、多くの仕事が「天職」、すなわち働くことが単なる金稼ぎの手段ではなく、個人としての深い関与であるとみなされた時代に回帰するだろう。→hanahanaそのもの!

    次は民主主義に対する挑戦。将来を決定づける議論は政府の「規模」に関する議論ではなく、政府が誰の為にあるのかという議論。
    人々が幅広く繁栄を分かち合うように設計された市場か、ほぼ全ての利益が頂点にいる限られた人々に集中するように設計された市場かという選択をする事。

    事後に再分配を行わなくとも、公平な分配がなされていると大多数の人々が受け止められるような経済を生み出す市場のルールを設計する事。

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    2017年03月28日
  • 最後の資本主義

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    25年ほど前に著者の本「ワークオブネイション」を大学時代に読み21世紀はグローバル化が進み、国家の最大の役割は人材をつくることになる、そしてもっとも付加価値の高い人材はシンボリックアナリストと呼ばれるものをつくるのではなく概念的思考をする人になる、という内容に衝撃をうけて自分のその後の職業観、就職におおきく影響をされたとおもう。
    あれから26年、著者の予言どおり、世界はグローバル化し、そしてシンボリック穴リストの職業としてインターネット関連、グローバルな金融、バイオなどまさに予言どおりとなっている。
    しかしながらそれによって、あらたにシンボリックアナリストがあまりに力をもちすぎて、市場のルールを自らの都合の良いように策定していると主張。その結果、経済格差が進み中産階級が崩壊しつつあると。
    自由主義か政府による管理かという二元論にいみはなく、自由主義とはいっても、だれかがだれかのためにルールを策定する、それは誰がだれのためにつくってるのか?ということをみるべきだと主張。たとえば金融業界が強くなれば金融に関する規制緩和が進むし、インターネット業界が強くなればねっとん関する規制緩和が進む。
    いくら金融系の社長の能力がたかくても一般社員の1000倍の給料をとる理由はないと。
    著者はあまりの巨大格差は資本主義の自壊をうむ、だからそれをふせがないといけない。とくにルールの策定に誰がどのようなロビー活動で影響をおよぼしてるかを情報開示して、チェックしなければと。最終的にはベーシックインカムのような所得を配る政策を実施。とくにAIによって労働力がおきかわるリスクがあるのでBIをすることで、人はついに労働から解放され、ボランティアや芸術に取り組む時代がくると主張。
    グローバル化の実相を世界でもっとも早く予見した人が、そのあとの格差を予見できなかった悔恨の書ともいえるが、こういう知的巨人がクリントン政権で労働長官をつとめていたという人材の分厚さにアメリカ政治のすごさを感じる。

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    2017年03月05日
  • 最後の資本主義

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    米国で格差が広がっているのは、ウォール街などの富裕層が共和党だけではなくビル・クリントン大統領あたりから民主党にも膨大な献金を行い、富裕層に都合の悪い法律(グラススティーガル法など)は次々に骨抜きにして、特許権の延長などは富裕層に更に利益をもたらすように改訂して来た結果であり、神の見えざる手の所業ではないと糾弾し、下位層から上位層への「事前配分」に終止符を打つ新しいルールを提唱している。トランプ旋風の背景がわかる好著です。著者はクリントン政権では労働長官を務め、オバマ政権ではアドバイザーを務めていたようですが。。。

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    2017年01月29日
  • あなたのTシャツはどこから来たのか?―誰も書かなかったグローバリゼーションの真実

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    面白かった。
    しかし、アフリカというと子供の頃ご飯を残すと言われていた、食べられずに死んでいく、というフレーズ。
    終わった話なのかどうか、無知なのは残酷だと思いつつも興味を持てない。
    結局、変われる者だけが生き残れるのは間違いない、のか。

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    2013年02月16日
  • あなたのTシャツはどこから来たのか?―誰も書かなかったグローバリゼーションの真実

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    主人公が中国の工場で製造された一枚6ドルのTシャツの、経済ドキュメンタリ。


    米テキサス州産の綿で、綿作りのように単純な川上産業が高度なサービス業中心の米国経済で繁栄し続けているのはなぜか。
    筆者は歴史をひもとき、米政府の補助金制度、つまり200年以上にわたり発達してきた綿の生産・販売におけるリスクを緩和する政策が競争優位に影響していると分析する。

    そして綿は遠く海を隔てた中国・上海で糸に紡がれ、布に織られ、Tシャツに縫い上げられる。18世紀に産業が興って以来、繊維・衣料品生産の単純労働は低賃金、長時間労働、粗末な労働環境に耐えて働く労働者が担ってきた。中国は労働者の移動を制限する戸籍制度の下で、従順な労働者を尽きることなく供給している。豊富な労働力と低い人件費により、現在、中国は世界の繊維・衣料品産業に君臨している。もちろん今後人件費は高まるだろう。


    調べていくうちに、米国の綿産業保護のための助成金がアフリカの最貧国のGDPを上回っていること、米国綿をめぐる権益がテロ組織に対抗するための重要な外交カードとして使われてきたことが分かる。

    ところが同時に、これまで筆者が抱いてきたグローバリゼーションについての自身の考えを疑い始めることになる。なぜなら自由経済は実は「自由」ではなく、かたくななまでに自由市場主義を標榜する国々ですら、実は保護的規制によって国内産業を救済していること、またいわゆるグローバリゼーションの「被害者たち」が実は「最大の受益者」であることに気付かされたからである。

    アメリカの国内繊維産業の保護政策は結果的に最貧国の産業発展を助けていて、最近の自由主義経済の名の下で中国から輸出される安い大量の衣類は、実は最貧国の繊維業界をつぶし、失業者をたくさん生んでいる事実に筆者は直面する。

    よく経済メカニズムをダーウィンの進化論の世界になぞられるが、「人工的介入」は一見不自然そうで不自然ではない。市場の力には市場から保護されたいという需要に見合う「2重運動」がある。

    グローバリゼーションをめぐる議論が市場経済の競争原理の「功罪」にとどまっている中、筆者はTシャツの運命が市場原理だけでなく、むしろ「権力と政治」によって決まっていくことを発見するのである。

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    2010年06月27日
  • あなたのTシャツはどこから来たのか?―誰も書かなかったグローバリゼーションの真実

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    Tシャツというどこの国にでもある商品からグローバル経済を見たという本。
    まず、取材がしっかり頑張りましたという印象を読後に覚えます。

    アメリカ基準のグローバル経済は、アメリカの政策に左右されすぎではないか?と思ったり、中国が肥大化しすぎではないかと思ったりしました。

    これは、ひとつに、繊維産業が労働力集約型なので、技術集約型ならあんまり起こらなかったことが原因でしょう。
    そのためか、アメリカには高度な製造業の集積は残っていません。

    それに、「底辺への競争」とも言うべき、低賃金、低コスト国家へのシフトがもたらした結果でもあります。

    日本語訳のために本の末尾に参考文献の記述が全く無かったこととアメリカンアパレルというアメリカでカラーデザインを武器にしている企業が頑張っているということ(ちょっと本書の主旨と外れますが)という記述が無かったことが少し残念な気がします。

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    2009年10月04日
  • あなたのTシャツはどこから来たのか?―誰も書かなかったグローバリゼーションの真実

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    この本を初めて本屋で見た時は、「どうせそこらの運動家が書いた反グローバリズムの本でしょ〜。」と触れもしませんでした。
    今回、ふと手に取りイントロを読んで面白いと感じ読み始めました。

    本書は今日の世界経済の現状をTシャツというありふれたプロダクトを題材に語る物語です。あくまで学術書ではありません。ただ、その内容は一読に値するものであるのは確かです。

    何よりも、自由貿易や保護貿易、反グローバリゼーションなどの主義主張に捉われることなく客観的に世界経済を描いている点は考えるところの多いものかと思います。物事の両面性や多様性を考えることなく単純化された議論を行う某ロックバンドのボーカルが推薦する経済学先生の本と比べたらお金を出すかいもあると思います。

    この本を読んで再認識したことは、自由貿易や保護貿易、グローバリゼーションの議論において純粋に経済学の理論だけでは議論ができないということです。それはWTOの協定を純粋に法学の議論だけで考えることができないのと同じであり、政治や経済、法学など様々な要因が複雑に絡み合ったものという事です。このような状況というのは全ての事象に言えることでしょう。今日の様々なイシューに対して学問的見地から取り組んでいく者にとってより客観的、多角的な視点はより重要なものとなってきます。物事の一面のみに捉われていてはいけません。そんな事を考えさせてくれる良書です。

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    2009年10月04日
  • あなたのTシャツはどこから来たのか?―誰も書かなかったグローバリゼーションの真実

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    Tシャツの物語とは、綿花の物語でもあり。さらには古着の物語でもあるのです。副題のせいで「アレ」な感じはするものの、なかなか興味深い本でした。

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    2009年10月04日
  • あなたのTシャツはどこから来たのか?―誰も書かなかったグローバリゼーションの真実

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    アメリカの綿産業は政治的な政策で手厚く守られている。そのテキサスで生産された綿は中国に渡り中国の国営企業でTシャツに織られ、世界中に輸出されている。

    自由貿易とは程遠い構図が明らかとなる一方で、古着産業は明確な自由貿易であった。

    なるほど。

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    2019年07月28日