仕事や手先は器用なのに生き様が不器用な元脳外科医の殺し屋。有能な医者だった彼が活躍するミステリー仕立ての社会派小説。
どんな業界にも歪んだ事情や黒い話はあるでしょうし、そういった暗部に紛れて美味しい思いをする連中はいるのだと思います。そして、それら煽りを食うのはいつだって業界で一番弱い存在になりま
...続きを読むすよね。医療の世界では、その弱い存在は取りも直さず「患者」に相当するわけで、この小説ではそういった患者たちの無念を晴らす話もそれなりに出てきます。そういう話だけでないのは読者を飽きさせない工夫だと思ってたんですが、今から振り返ると伏線といっても良かったのでしょうね。
悪役として出てくる医者みたいなのはゴロゴロいると文庫版巻末のあとがきに書かれてあったのは、意外でした。