曾根元吉のレビュー一覧
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ネタバレまず、描写が綺麗、美しい。脳内でその綺麗な映像が細かく、鮮明に思い浮かべられるし、その映像が本当に綺麗。文章力に、脱帽です。ところどころの表現はすこし非現実的で、けど内容はどこか現実味を帯びているような表現だなと思いました。
アリーズとシックの結末、またハツカネズミのこと、残されたコランのこと。すべてなにをとっても切なくて、もう、本当にすてきな小説でした。
ニコラとイジスの話が少なかったのが少し残念かな。でもあの二人はこの後も幸せに暮らしていくんだろうと思うからこそ書かなかったんろうと思いこむ!目に見えてわかるぐらいの展開に持ち込んで、あえてかかない。コランやシックたちのことを読んでいればわか -
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幻想と皮肉と遊びと悲壮の入り交じった、美しいメルヘンです。根底に暗澹とした「不条理」が見え隠れしているところなんかは、いかにも当時のフランスらしい感じもしますが、簡単にフランス文学と一括りにはできないほど力強い作品だと思います。耽美で独特な描写は、このボリス・ヴィアンでしか見たことがありません。
ストーリーだけ追ってしまうとなんだかいただけないのだけど、その見せ方は本当に秀逸です。ストーリーのトーンと同調して、描写の色合いも変化していくところはとても見事でした。おおまかに言うと、前半はライトでファンタジック、透き通った色水のようなのですが、物語が進むにつれてそこに濃紺のインクがぽたりぽたりと -
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再読。もう何度読み返してるかわからない大好きな小説
というか世界でいちばんこの本がすき
あまりにも道化で可笑しいことばかりがあふれるのにどうしてこう悲痛なのかしら
本当に悲しいことは真面目なもののなかよりも、ふざけたものの中にあるのだと思う
幸せな時は全然長続きしないなぁ
そんなことないっていうひと達はとても多いけど、人間関係の脆さと同じくらい壊れやすいものだと思う、私は。
この小説だけが彼の作品の中で飛びぬけて評価されてるのも皆そのことに気付いてるのだと
だからこそ、コランとクロエが二人で過ごした時や、シック、アリーズ、ニコラ、イジス達との楽しい時がよりいっそう、きれいにみえる
酷い小説。残 -
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ネタバレ読み始めと読み終わりでは全然印象が違う小説。
最初はシュールだなあ、なんて笑いながら読んでいた。
けれども、現実と非現実が絡み合い混じりあうように紡がれる文章が、どんどん笑えなくなってくる。
シュールというよりサイケデリック。
好き勝手に生きているように見えて、生きていくための手段を全くもたない登場人物たち。
奔放に生きるというよりも、緩やかに死んでいくかのように。
自覚のない自傷。
彼らが痛ましくてしょうがない。
自分を生かすことすらままならないクロエ。
クロエを支えたいのに、気持ちばかりでなんの力もないコラン。
ふたりの生は、どんどん小さく儚くなっている。
しかしそれよりも、シック -
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全く同じ内容であるという「うたかたの日々」(ハヤカワepi文庫)は翻訳文に抵抗があって、全く読み進めることが出来なかった。
しかしこの曾根元吉訳の「日々の泡」(新潮文庫)は問題なく読むことができた。日本人作家でも合う合わないがあるから、それの違いかな?
肺に睡蓮の花が咲く奇病に冒されたクロエと、彼女に恋をしたコランの物語なのだけど、シックやアリーズ、そしてニコラと、彼らを取り巻く人々までもが不幸になっていく。
救いのない哀しい物語。
もう少し、彼らに救いがあってもいいのではないだろうか?
シックは致し方ないにしても…。
カクテル・ピアノや素敵なギミックがあちこちに。
部屋や街の様子、物事の描 -
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初めてのシュールレアリズム文学でした。
最初は、コミカルな印象を受けて、本当に面白いのかと思いながら読み進めました。
中盤、斜陽文学の感じが出てきたので、谷崎の細雪に近いものを感じました。
そして、終盤の急展開がまさに悲劇でしたね。読書会では意見が別れましたが、私はラストがとても強く印象に残りました。
シュールレアリズム文学ってどうなのかなと思ってましたが、不思議な現象の描写が、逆に心理描写を際立たせている感じを受けました。
クロエに関しては、悲劇のヒロインなのか、さげまんなのか考えるのはとても面白いと思います。
そして、花が何を象徴してるのかという事も。
カフカの変身の様に、何かの象徴何で