竹信三恵子のレビュー一覧
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日本の労働環境は、もはや、マスコミや評論家達がこぞって使う、賃金格差なんていう生易しい言葉では済まされない。著者が言うように、現代の労働環境はまさに「差別」であり、「身分制度」そのものと言っても大げさではない。この大きな社会問題に対して、この国の立法府は、まったく手を付ける気もなければ、ましてや法を整備して改善する気はさらさらないようだ。このような事を放置すると、今に世界の先進国の中で、唯一、日本だけが、労働環境に関しては、国際的な人権問題に発展し各国から批判される状況に陥ってしまう可能性は否定できない。先進国、特にヨーロッパでは、同一労働、同一賃金が常識になりつつある現在、この問題を放置した
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ネタバレルポ 賃金差別
竹信三恵子著
ちくま新書
2012年4月10日発行
読み間違えやすいタイトル。「賃金差別(さべつ)」が正解。「賃金格差(かくさ)」ではありません。
著者はジャーナリストで和光大学教授、元朝日新聞記者。ベテランらしく、読みやすく、整理された内容でした。
「現代社会福祉辞典」での定義、「差別」とは「人々が他者に対してある社会的カテゴリーをあてはめることで他者の具体的生それ自体を理解する回路を述断し、他者を忌避・排除する具体的な行為の総体」を引用しつつ、性別、組合活動との関わり、雇用形態(パート、契約)、所属会社の違い(派遣、下請け)などの違いでレッテルを張ってしまい、賃金が差別 -
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正社員の待遇悪化に向け露骨に政策誘導されている実情を改めて知ることができた。労働者も数ある生産財の一つとみなし、欲しいときだけ、かつできるだけ安く使いたいとの動機は資本主義の必然的な帰結である。サントリー新浪の「在庫」発言にそれが良く表れている。原材料や機械とは異なる血の通った人間だからこそ、先人たちは知恵を絞り資本家の搾取に対抗してきたのだが、資本家サイドの手口も巧妙になってきて、最近では労働者自ら望んで隷従したり、労働者同志が反目したりするようになってきた。本来我々庶民が戦うべきは「上級国民」といわれる高給サラリーマンではなく、資本階級の利害を代表する竹中平蔵のような悪党であろう。
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「正社員消滅」
思わずドキリとするようタイトルだ。既に派遣社員が4割というのが現実であり、派遣社員と言っても昔のパートとは違って正社員並みに働いているのだから事態が悪い。そして、既に派遣社員無しでは業務は成り立たない。
そもそも正社員とは何なのか、戦後の国際社会の中で働き方の標準として正社員と言う考え方が生まれてきたらしい。つまり、経営者の勝手な判断で解雇できないという、労働者の生きる権利を守るという観点からの労働者保護である。
しかし、グローバル化が進み人材派遣が解禁され非正規社員と言われる人たちが増えてくるに従って、正社員というものが改めて意識されるようになってきたと言うことである。
確か -
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パート労働は、所詮夫の収入がある女性たちの仕事、生活費がいらない女性たちの小遣い稼ぎ。こういった位置づけが、非正規の低処遇に対する社会的抵抗を阻んできた。女性の家計補助だからと、仕事の内容を問うことなく容認されてきた非正規は、いまや、男性たちにまで広がっている。また、シングルマザーも男性ではない、新卒ではないというだけで低賃金で不安定な働き方を余儀なくされている。非正規は理不尽に特定のカテゴリーへ押し込められ、低賃金でも当然だというレッテルを貼られ、働く意欲や気力を奪われている。安くても当然の人たちを作ることにより企業は人件費を抑え、労組の組織率を下げ賃金交渉力を弱体化させた。正社員は正社員で
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その筋によれば、東北大震災後の混乱の中でも女性が性的暴行を受けたケースがあったという。また、本書にも書いてあるが、避難所に女性用のスペースがなかったり、着替えや授乳も落ち着いてすることができない環境に置かれた女性たちも多いという。本書は「スフィア基準」などを紹介しながら、被災の場で女性たちが、女性であるがゆえに困ることがないような態勢整備(平常時からの準備や仕組みづくりも含めて)を訴える点が一つ。そしてもう一つは、災害支援において女性たちが支援側として能動的に活動することが、地域などで効果的な事後の生活を築くのに役立つということを述べている。
女性たちは被災の地で、確かに不自由な思いをすること