素晴らしい作家を発見。
この葛西善蔵の芸風、好きに決まっている。
芸のためなら女房も泣かす、ついでにメカケも泣かす。
これも全部芸のため。
思わず笑ってしまう自己暴露的私小説。
ダメ人間は借金しても必読の一冊。
この葛西善蔵は青森出身で、その業の深さに思わず納得してしまった。
かの太宰
...続きを読む治も「善蔵を思う」という短編まで書くほどの敬愛ぶりだったそうだ(因みにこの作品はネットでも読むことができる)。
確かにその芸風は似ている。
ただ善蔵の素晴らしい点は太宰とは違ってナルシズムがないところだろう。
鼻につく自己愛がない。
そして何より金がない。
このダメさ加減はまるで『僕の小規模な失敗』時代の福満しげゆきが失敗したまま大人になって未だに芸術家ぶりっ子をやっている、そんなイメージなのだ。
この一冊は短篇集なのだけど、全部が私小説でなおかつ時系列順に所収されているためさながら自叙伝のようになっており、どれもビンビン伝わってくるエピソードばかり。
小説家らしい小説家を堪能した。