坂田道太といえば、明治期のようなまん丸眼鏡の風貌を思いだす。文部大臣にも起用された文教族議員が、防衛庁長官に任命され結構そこそここなしていた、との認識しか私はなかった。
防衛庁長官になったのが1971年とそんなに昔だったのだ。その素人の業績たるや、基盤的防衛力構想、防衛計画大綱、防衛白書、ミグ2
...続きを読む5事件処理、などがあり、前3項は今に至る日本防衛戦略構想の確立という大仕事であると、本書を読んで知ることができた、
軍事には素人かもしれないが、政治家としては課題の把握と解決策の立案実行、視野の広さ、雑音に惑わされない強い意志、あるべき姿に立脚する識見の高さ、など理想の人物ではないかと思うほどに描かれている。確かに近年の政治家に坂田ほどの仕事をする人物は見かけないのかもしれないが、ひとつくらいは本人の失敗談を載せてもよかったかもしれないと思うほどに、非の打ちどころがない素晴らしい仕事ぶりである。
本書は、遺族の資料や当時の記事など多くの資料に基づいて書かれているが、官僚作文などは最低限に留め、とても読みやすい。飽くことなく、次々とページを捲ってしまった。坂田道夫のは、もっともっと知られてもいい政治家である。