高橋和海のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
大崎善生作品の中で、一番のびのびとしたほんわかヒューマンラブコメディ。
大崎作品の中で、これほどコメディ色が強い作品は珍しい。
一番、大崎さん自身を生身で感じられる、まるで大崎善生さんと旅をしているかのような作品。
大崎作品の中ではトップレベルに読みやすく、またふんわりとして温かい。
それでいて、キュンキュンする。
「スワン・ソング」とは正反対で、この登場人物である冴えないのか冴えてるのか分からない、"のしイカ"のようにヒラヒラとした"おじ"に、淡く鮮烈に恋する読者は少なくないのではなかろうか。
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恋というものは、
人間の一番性的な部分と、一番プラトニックな部分が一つにつながっている部分を刺激する。
メビウスの輪なのか螺旋状なのか、本来相反する二つの本質ががっちりとつながっている部分。
大崎さんはこの作品で、それを描いているように思う。
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大崎善生作品の「ディスカスの飼い方」に出てくるハイコプレハのように、「ロックンロール」で登場人物が云うように、
"意味もない海底の石をめくってはめくり、
焦げ付いた鍋の底を磨いては磨き、
人生でいつの日かレンブラントの大作のような作品に挑めるように、
片方のポケットに小石を入れて、
諦めず、悔やまず、振り返らない、
何があっても最後まで生き抜く"
そんな人生にしてゆきたい。
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Posted by ブクログ
ネタバレ大崎善生さんの書くものが好きだ。
読むのは12冊目になる。
熱帯魚、出版業、環状線をぐるぐると回る、ヨーロッパ、音楽…
そういう繰り返されるモチーフの中に、はっとする言葉がある。
キャラクターとか関係性とか心情とかそういう物語の在り様ではなくて、
言葉拾いをしながら読むような感じ。
安定して流れる物語の中で、安心して自分のための言葉を探せる。
小説の中で扱われたような意味合いでは見たことの無い言葉。
今回は「くもの巣の修繕」、「窓」、「掘削機」がわたしに差し出された。
「鍋」や「ノシイカ」、「ロバ」、「小石」、「中指」、それだって良かった。
読みながら、沢山の知人を想起したこともおもしろかった。
それから、イッセー尾形さんの解説もぴたり。
これでまた、大丈夫になった。
きっと、次読むときに見つかるのは別の言葉だろうっていう予感。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ大崎善生さんの『ロックンロール』
主人公の作家の植村は、第2作目の小説執筆のため、パリ近郊のポートオルレアンのホテルに滞在しています。そもそも彼は、熱帯魚の雑誌の編集長をしていたが、高井という編集者が彼を訪れ、口説き落とし、小説家にしたのだ。植村のデビュー作は評価が高かったが、2作目の筆が遅い。そのため、ヨーロッパに来訪し、小説を書くことにしていた。しかし、それでも筆が進まず、焦燥感に苛まれる日々を送っている。
植村は、彼宛に送られてきたCDをふと思いだす。ジョージハリスンの『All things must pass』。送り主の名前に心当たりはない。
ではあるが、20歳の頃、ジョンレノンが亡くなった夜、ロック喫茶で出会って一夜を共にした女性、そしてその女性とのセックスを思い出していた。
そんな中、突然、ある女性がポートオルレアンの彼の部屋のドアをノックする。名前は石井久美子。彼女の登場により、植村生活に変化が訪れる…。
物語は、レッド・ツェッペリンの名曲を背景に、パリで繰り広げられる恋模様を描いていきます。
と言ってもなんだか美しい恋愛小説というわけではなく。
笑ってしまうような縺れた人間関係。
久美子は高井の3人いる彼女の1人ではあるし、久美子は元彼の鏑木との仲も煮え切らない。植村の態度もはっきりしない。
響いてくるのは植村の好きなロックンロールのメッセージ。ロックンロールの小さな石を握りしめて、歩いていこう。どんな哀しみにも対抗できる魔法の歌。
相変わらず、大崎善生さんの文章は表現が美しく、流れるようでとても読みやすいです。
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Posted by ブクログ
大崎善生を読むと小説の醍醐味は中身の内容だけではないことに気づかされる。
このロックンロールというなんの中身の無い小説が面白く感じるのは、1行1行の文章がとても緻密で、計算されていて、繊細で、優しくて、突き刺さるような言葉の集合体だから。
この小説の中でも語られていたが、
「なんでもいいからひとつのことを、正確で美しい、ということはつまり適切な言葉を使って表現する。その枝葉の積み重ねの先にある樹が小説なんだ。」「犬の交尾を正確に描いていても泣くね。」
とある。1つのことを洗練させる必要性。小説家でないがしろにしてはいけない要素。人にとっても何かを1つ正確に出来る人の方が、心を揺さぶるのだろう。
小説の書き方や出版者とのやり取りや執筆活動など、著者と重なり合うような自伝的な要素もいれたかったのだろう。でも嫌味がない。
中身はないけど、面白い。文節すべてを人生と照らし合わせる小説。でも中身があれば☆5つだろう。
作中名言
「僕に出来たことは無関心を装うことだった。社会通念から遠ざかる。尻尾をまく。耳をたたむ。夢や希望や反骨心といったものは全て危険だった。もちろん捨てた。
そうすると少しだけ心が軽くなった。」
「とにかく女性はヒステリーを起こす。
それはまるでバスの停留所のようだ。
世の中の女性は全て、そうゆう名前の停留所を勝手に作り上げていて、必ずそこに停車しなければいけないと考えている。
それは分かっているつもりだが、もしかしたらこの人に限って、そうゆう停留所を持っていないのではないかと幻想を抱くことがある。その大きな勘違いが、結局は新しい恋が始まるきっかけとなる。」
「きっとお互いを深く傷つけ合ったりすることのないように、ガラス玉を真ん中において付き合っていたのかも知れない。でもそれは何か違うのだという感覚ー。人間と人間が繋がるということは、ときとして物凄く動物的なことだという、理屈ではないとても皮膚的な感触。」 -
Posted by ブクログ
最近の作家さんで唯一読み続けているのが大崎善生です。
作品のトーンは毎回似ているんですが、でも、読み出すとしみこむように文章が頭の中に入ってきて、さくさくと読み続けることができます。
この作品の主人公が語った言葉にそのヒントが。
「僕にとっての小説の感動は、ストーリーや感情の起伏というよりも、もっと単純で文章そのものということが多いんだ」
「何でもいいからひとつのことを、正確で美しい、ということはつまり適切な言葉を使って表現する。その枝葉の積み重ねの先にある樹が小説なんだと僕は考えている」
これは主人公の小説家の小説感として描かれていますが、筆者自身の小説感ではないかと思うのです。
文章そのものの質。
それがこの人の特徴なんだと。 -
Posted by ブクログ
ベックの「哀しみの恋人達」がず~~と流れている。
《本文より》
小説を書いてみませんか、と高井の言葉は小さくて性能のいいマグネットのように僕の心にピッタリと吸いついた。
何をしていても、何を考えていても気がつくとふくらはぎや肩甲骨あたりに、離れずに張り付いているそのマグネットの存在を感じる。
僕はこれは恋に似ているなと思った。そう、この感情の揺れは確かに恋に似ている。
それからこう考えた。
恋に似ている感情なんてあるのだろうか。恋に似た感情をも含めて、それを恋と呼ぶのではないか。
そうだとすれば、薔薇窓からの光の輪の中に立ち、それに手をかざしている久美子に、僕は恋をしているのだ。そう思うと、焦燥感に似た痛みのような感覚が胸の中を駆け抜けていった。