白石朗・他のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
大好きなキングの短編集です。7編収録。大好きなキングがあの「9.11」を題材にしているなんて、それだけでどんなものか心躍らせて読み始めました。
「ジンジャーブレッド・ガール」
ローズマダー的な怖さ。追われる恐怖、逃げる女性。すごい緊迫感で次々読み止まらなかった。
「ハーヴィーの夢」 、「パーキングエリア」、「卒業の午後」
世にも奇妙な的な。しかし描写が緻密。
「エアロバイク」
すごくドキドキした。自分の体という工事現場でカロリーと糞の処理に働く4人の男たち。画家の想像の産物にすぎないはずだった彼らは、「ダイエット」によって自分たちの仕事を奪う「体の持ち主」に憤りを感じ始めていた。
絵が動く、自分が自分に殺される。現実か夢かわからなくなっていく構成が良い。
「彼らが残したもの」
9.11を偶然回避した男。しかし彼の部屋にはなぜか死んだ同僚たちのデスクにおかれた”遺品”が現れ…
アメリカに大きな衝撃を与えた9月11日のテロ。少し怖く、ミステリアスに、しかし暖かく短編にまとめているのは素晴らしいと思う。いいエンディングだった。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ正直微妙な話も含まれてる短編集だが中編「ジンジャーブレッド・ガール」はガチ。
幼い娘を亡くした痛手から立ち直れない女は、ある日ふと走ることに興味を持つ。何の脈絡もない行為ではあったが「取り憑かれたように」走り始めた。倒れるまで走る彼女を夫は理解できない。
夫婦は「冷却期間」を設けることとなり、エミリーは父親の別荘がある島へ移った。
普通に予想される展開としては、人々と触れ合い心の交流を果たすうちに傷が癒え、人生と前向きに付き合っていく決意を固めたところで夫と和解して終わりだろうが、そこはキング御大。まったくこちらの期待どおりにならない。
エミリーは頭のイカれた殺人鬼に遭遇する。死体を発見してしまったのだ。一度は彼に捕まったエミリーだったが隙を見て逃げる。そして彼女は走る、走る、走る。なぜ走るのか。これまで自分でも分からない衝動に突き動かされてきた彼女は、今度はハッキリと「生きるために」走る。その中でエミリーは再生していく。その姿が実に感動的。
小難しい哲学や宗教、通り一遍の感傷的なスタイルに用はない。エミリーはガムテープを剥がし、肉切り包丁を振り回し、椅子の肘掛けで男を殴打するのだ。そして追いかけてくる男を振り切るため走る。そうした具体的でサスペンスフルな行動の積み重ねがエミリーを再生させる。
説明してしまえば1行で終わることを1ページ、2ページかけて語り尽くさねば気が済まないキング御大の執拗な描写も今回は冴え渡っている。 -
Posted by ブクログ
ひたすらに具象を積み重ねた質実な行間からしっかりとみずみずしい感傷が立ち上がる。今、自分はこの本と、とても人間的な何かを分かち合っているという思い。
『ジンジャーブレッド・ガール』では筆力は最高潮に達する。非常にスピード感のある緊迫した文章に、「読んでいる」意識がすっかり飛んでいたほどだ。それにしてもまるで現在の自分の体験を実況しているかのような、具体的描写のうまさはすさまじい。私が文字を追う速度と、描かれている事件が進行するシンクロニシティも絶妙だ。この中編を読んだあとはしばらくの間、自分の些細な行動を頭の中で詳細に実況してしまう癖がついてしまった。
ストーリー的には、どの作品も起承転結があいまいで、完結した印象をあえて排除している。その代わり、ある人物のある状況を、深層までも克明に浮かび上がらせようと試みているようで、個人的には好きな作風だ。しみじみした筆致が胸を打つ『彼らが遺したもの』、ナンセンスで可笑しい『エアロバイク』、得も言われぬ不安の予感を的確に文字に置き換えた『ハーヴィーの夢』、さすが巨匠とうなずく粒ぞろい。 -
Posted by ブクログ
分冊短編集の後半。「N」★★★ラヴクラフトにも通じる、別の次元からの侵入してくる物と強迫神経症的に精神が壊れて行く過程をからめた恐怖。他人と共有する事ができず自分で抱え込むことで問題はどんどんふくらんでくる。これって早めに誰かを巻き込んでいたら問題そのものが成立しないのでは???でも、逆にタイミングを外してしまうことは日常的によくあることか・・・おそろしい「魔性の猫」★★ストレートに恐ろし〜猫「ニューヨーク・タイムズを特別割引価格で」★★★★9.11の影響を受けたと思わせる飛行機事故が生み出した切なくも不気味なお話。親しい者の死と直面した時の感情の切り出しかたが見事です。「聾唖者」★★★公金横領の上、不倫相手の男と逃げた妻を持つ冴えない中年男をいったい誰が救ってくれるのか?「アヤーナ」★★受け継がれて行く奇跡の力。これも映画にピッタリか。「どんづまりの窮地」★★★★悪趣味大好きキング全開。食事しながら読んでしまい大失敗。う〜ん、こんな窮地にだけは追いつめられたくない。簡易トイレがこんな恐ろしい場所に変わるとは・・・使うたびに思い出してしまうのだろうか・・・昔「恐怖新聞」って漫画を読んで夜トイレに行けなくなった事を思い出してしまった。いやだなぁおまけに解説として「今日の早川さん 特別出張版」がついています。もちろんホラー大好き帆掛さんと早川さんの掛け合い。楽しい。喫茶店での一コマで壁にかけてある絵がキングの長編「悪霊の島」のカバー画なのにも気づいたぞ。
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Posted by ブクログ
キングの割りにはひっそりと出版されていました。気付かなかった・・・再開したダークタワー・シリーズがあまりにつまらないので少しキングから離れ気味だったのですが、この短編集(第2分冊もあるとのこと)は面白い!しみじみ幽霊話から、これでもかっ、の殺人鬼からの脱出、自分のしょうもない夢、9.11後をテーマにした作品など多彩。短編の書き方を忘れたなんて嘯いてますが、昔の短編集より断然面白くなっています。著者の作品はホラーといわれていますが、ホラー的には怖くない。でも、ちょっとした不安感もキングにかかれば、虫眼鏡で見るように拡大して、とてもグロテクスクな世界として描き出されてしまうし、遠くの大災害や事件も望遠鏡のように目の前で起こっているように恐怖させてしまう。エアロバイクをホラーの題材にしますか普通(話としては、どうということはないのですが忘れられなくなります。)虫眼鏡や望遠鏡で「こんな不安、気持ち悪さを感じているでしょう」が明らかになる快感。これこそが僕がキングに感じている魅力なのだと思う(マゾか俺)
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購入済み
やっぱり、キングは長編のほうが圧倒的に面白い。短編だともっとキレのある作家のほうが読んでてドキドキする。
これは次はどうなるのかなと思ったらもう終わりみたいなのが多くて、キングだから期待してしまう部分があったから尚更あれ?って感じでした。 -
Posted by ブクログ
原著2008年刊行、比較的新しいスティーヴン・キングの短編集。収録された6編ともホラー・オカルトの系譜に属する(ファンタジーっぽいものもある)。
この中では「N」「魔性の猫」「どんづまりの窮地」が印象的だった。
巻頭の「N」は強迫性障害の症例報告のスタイルで、いつもとは違うメモ書きの文体で始まるために違和感があったが、最後の部分でいつもの、主体のモノローグを組み込んだ生々しい文体に戻る。内容はちょっとラヴクラフト風かもしれない。
最後の「どんづまりの窮地」はなかなかスカトロな光景がおぞましく描かれるので、上品な方は読まない方が良いかもしれない。
いったいに、キングは『ペット・セメタリー』辺りを頂点として、後は下り坂というか、少なくとも自分にとってはあまり満足できないような作風に変貌してゆくのだが、作家の力量としては充実しており、その余裕からこの短編集のような多彩さを醸成することができるのだろう。
視点となる作中人物のモノローグを混合させ、緊迫した読書時間をもっと体感したいのならば、やはり長篇の方が読み応えがあるのかもしれない。 -
Posted by ブクログ
まァ、面白かったのだけれど、短編集にしては読み辛くもあったな。なんでだろう。一番気に入ったのは救いのある話の「アヤーナ」。「どんづまりの窮地」は、いままでもフェスやら観光地やらに行って仮設トイレを使う際に感じていた不安感というか嫌悪感を具体的な形にしてくれちゃったワケで、これからその手のトイレを使う際には必ず反芻してしまうこと請け合い。マイッタな。TOTOやINAX等日本のトイレメーカーの皆さん、日本のトイレは世界一キレイみたいなので、仮設トイレも「どんづまりの窮地」が笑い話になってしまう位、どうかひとつよろしくお願いしますよ。じゃないと、トイレに行けなひ。です。