ウッドハウス暎子のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
『日露戦争を演出した男モリソン』と『北京燃ゆ―義和団事変とモリソン』に続く、著者のモリソン研究の第三弾。
19世紀末から20世紀初頭にかけてロンドン・タイムズの北京特派員となり、辛亥革命後は中華民国大総統・袁世凱の政治顧問となった豪州人ジャーナリスト、ジョージ・アーネスト・モリソンの生涯の最後の部分を描いています。
英国のアジアにおける権益を守るため、日本を鼓舞してロシアに当たらせたモリソンが、日露戦争後は一転して反日になったのは何故か?
親日的であった彼が反日に転じた理由は、日本の成功と、40年後の破滅への道を示しています。
キーワードは「英国の権益」ですが、もう一つ、豪州人としての視点も描かれているのが興味深いです。
「豪州の安全保障にとって日本が脅威」というのは、たぶん日本人にとっては意外でしょうねw
著者の前二作が日露戦争へ到る過程を描き、小説のようにテンポ良く読めるのに対し、本書は著者の20年以上の研究の集大成であるためか、学術書の趣きがあります。
歴史の教科書では袁世凱が革命を翻弄してまんまと大総統の地位を手に入れたかのような印象を受けますが、本書ではそこへ到る駆け引きを詳述しています。
日・中・英・米・独・仏・露の外交官たちや政治家、軍人、借款や鉄道などに関する動きを詳しく知ることができます。
ニン、トン♪ -
Posted by ブクログ
19世紀最後の世界的大事件、義和団事変(1900年)。
公使館街に閉じ込められた外交官たちとその家族は、いかにして危機を乗り切ったか?
ロンドンタイムズ紙の北京特派員で、重要機密を何度もスッパ抜いた「北京ライオン」ことジョージ・アーネスト・モリソン(George Ernest Morrison)の活躍を通して、事件の背景から発生・経過・結末までを描いています。
救援部隊を送り込んだ八ヶ国の思惑の違い、連合軍の足並みなどが描写されていて面白いです。
最初に殺害されたのがドイツ公使ケテラー男爵だったことで、またまたドイツ皇帝ヴィルヘルム2世が大暴れしてますねw
まるで北の将軍様みたいにwww
ニン、トン♪ -
Posted by ブクログ
「小黄猿(日本)は必ず大白熊(ロシア)に勝てる。和平などとんでもない!」
こんな過激なことを言って日露戦争を仕掛けた人物がいました。
ロンドンタイムズ紙の北京特派員で、後に中華民国大総統・袁世凱の顧問を務めたジョージ・アーネスト・モリソン(George Ernest Morrison)。
日本で東洋史を研究する人なら、なんらかの形で関わる『東洋文庫』の設立のきっかけともなった人です。
豪州人ジャーナリストの彼は、極東における大英帝国の権益を守るため、日本を尖兵としてロシアに当たらせようと奔走。
彼が見極めた、日本がロシアに勝てる可能性とは?
豪州は英連邦の自治領でしたが、彼は宗主国たる英国の覇権、「パックス・ブリタニカ」の強化を望んでたんでしょうね。
「英国が享受する東亜の遺産は、現在の長江流域だけでなく、東南アジア全体である!」
そのために日英同盟締結から日露開戦まで、ジャーナリストのモリソンが世論形成に果たした役割、日・英・露・独各国の「外交の舞」を描いており、当時の日本の外交史をテンポよく学べます。
ニン、トン♪ -
Posted by ブクログ
まず、著者、ウッドハウス瑛子氏の研究に深く敬意を表します。
丹念に資料をおい、世界史の中に日露戦争を位置付け、それをタイムス記者モリソンからの視点で描いたこの作品は非常に深い示唆を与えてくれます。
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さて、日本の外交を見たとき、不平等条約の改正交渉、日清戦争後の三国干渉、日露戦争後のポーツマス条約(本書P181以降)、そして日独伊三国同盟からの第二次世界大戦突入などをあげて、当時の日本の外交の未熟さ、稚拙さを指摘することは容易であろう。
しかし、一方でロシアによる旅順港へのスパイ侵入を高い感度で防いだ上海総領事代理小田切万寿之助など、インテリジェンスの領域で大国の向こうを張って活躍した外交官が多数いたことも事実である。
本書でもカイザーをはじめとするヨーロッパ諸国の意向に紙幅が割かれている通り、当時の極東情勢は欧米諸国による中国、満州権益の争いの従属変数であり、外交の主舞台はヨーロッパであった。
そんな中、ヨーロッパの複雑怪奇な諸国間の力学を見据えつつ、戦争の終わりを見据えて金子堅太郎を送ってアメリカを味方につけて、事実日露戦争を戦力のギリギリのとのろで講和に導いた外交力はあっぱれというべきであろう。
こうした戦闘で危険なのは勝ち気に乗じて興奮する国内世論である。(原因を辿れば、軍事の実情の秘匿性と国民世論形成のジレンマにあるのだが)
ナショナリズムに基づく「国民」の存在は、国家の必須条件であるが、その形作る世論が常に正しいとは限らない。
軍部、外交、そしてそれを統制する政府首脳は、常に世論をリードし、「国の存続を守る」ことが最大の使命である。
その点、国の存続が危機に瀕した明治維新から日清、日露戦争を経て、不平等条約の撤廃まで実現した明治期の政治、外交、軍部の力は、日本史上最強であったと言ってよいだろう。
そして、外交の主舞台がヨーロッパから米中角逐する太平洋、すなわち日本の真正面に移ったいま、軍事力、外交力、そして世論を導く政府首脳の力が、明治期に勝るとも劣らないレベルで切実に必要とされている。
日本を取り巻く状況は違えど、明治期のような国家への危機意識、大国を向こうに回して戦う力、短期的に沸騰する世論、メディアの論調を制御しリードする力を備えた人材の必要性は変わらない。