稲垣美晴のレビュー一覧
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「その頃私は、芸大のチンピラ学生だった」。ポール・ニザンの『アデン・アラビア』の有名な冒頭部分を思わせる。
フィンランドを表わす漢字は「芬」。1976年、この東京芸大4年のチンピラ女子学生は「渡芬」する。本書はその奮闘記。異文化体験のおもしろさ、そしてユーモアあふれる文章に引き込まれる。半世紀近く経ったいま読んでも、新鮮に感じられる。
日本や日本語の特異性にも気づかせられる。たとえば「きょうはアタタカカッタ」が外国人には太鼓でも叩いているように聞こえる、とか。不得意のrの発音を猛練習するあまり、とろろこんぶが「とろろろろろろろこんぶ」になってしまった、とか。
フィンランドといえば、ムーミン。で -
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著者のタフさに惹かれる。
常人では身につけられない圧倒的な強さとしなやかさ。(作中、"フィンランドで泣いたことは2回ある"と書かれていたが、たったの2回!?と驚かされた)
何のアテもない外国へ一人渡り、文字通り、言葉がなにも分からない状態から著者のフィンランド語の学びがスタートする。
大学での試験の様子や摩訶不思議な文法・授業内容に苦戦する著者の目線が克明に描かれる。
何も知らない状態からスタートした外国人の気持ちと読んでいる私たちが同化して、混沌としたフィンランド語の世界に迷い込む。
作中、フィンランド語に関する文法や発声学などの詳細な話が出てくるのだが、読むのだけで -
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このごろフィンランドのエッセイを立て続けに読んだので、もやもやと一緒くたになっていた北欧の中から、フィンランドがぬっと立ち上がってイメージができました。
家具やインテリアのイメージしかなかったけれど、言葉や生活の話を読むと突然身近な存在に感じます。
稲垣さんの言葉はリズムが良くってとても読みやすかったです。
フィンランドへの愛がひしひしと伝わってきて、ものすごくいいところなのでは、と思えて、とっても渡芬したくなります。
それに、きっと稲垣さん、謙遜されてますが、すごく勉強家だし、頭が良い方なのだろうという、人柄の良さに惹かれる本でした。
いまでは割と留学が普通で、留学していた友達も何人もい -
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フィンランドがマイブームになっているところで目についたこの本。私は猫語が得意だし、フィンランド語に向いてるかも?ということで読んでみた。
そもそもこの著者、どうしてフィンランドなのかというと、フィンランドの美術史に興味があるので留学ということだそうだ。芸大なのに芸術より語学…芸大なのに?というか、芸大ってどういうところ?と違う方向に思うところはあるのだが、日本人には身近ではない言語をとても楽しそうに学んでいるし、留学生活もとても楽しそう。留学は1970年代なのに、今読んでも、違和感がないのもこの本のいいところだ。猫語の話はほとんどなかったけど。今のフィンランドと昔のフィンランドは当然違うんだろ -
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面白かった!
フィンランドでの経験を、あれだけクスッと笑えるような、知的でユーモアのある文章で読者を惹きつけれる稲垣さん、素敵すぎる。
今まで読んだエッセイの中で1番好きかも^_^
寒いの苦手な私でも、「マイナスごっこ」してみたいと思ってしまった。
フィンランド語を少しかじった人間なので、フィンランド語がどれだけ難しい言語かは重々承知してますが、その言語を使って新たなことを学んでいた日本人が、50年以上も前のヘルシンキにいたなんて、、
コロナ禍が明けたら、フィンエアーに乗ってヘルシンキへ行き、サウナに入ったり、コーヒーを飲んだり、森の中を何も考えずに歩いたりしたい。
太るだろうけど、 -
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フィンランドはトランジットで一度降り立ったきりだが、外が真っ暗だったにも拘らず何故かほっこりしたのを覚えている。「乗り換えと言わず、いつかこの国でガッツリ過ごしてみたい」と思ったのも。
その後もSNSでフィンランドの幻影を追い続けていた中で、akikobbさんに本書をご紹介いただいた。(有難うございます^ ^♪)
留学のため1970年代後半に渡芬(漢字表記にすると「芬蘭土(フィンランド)」)した著者の、フィンランド語奮闘記。…だけでなく、現地での生活模様や文化の違いが赤裸々に明かされている。
それなりに厳しい面もあっただろうなーと感じることもあったが、ますます彼の国への憧れを募らせる運びとな -
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1970年代に単身でフィンランドに留学(渡芬)したエッセー。
フィンランドに行くことを、渡芬って言うらしい。
フィンランド語の学習を通して出会った、現地の文化・風習が詳しく描かれている。冬になると海の上を歩く話や、コーヒーの受け皿の使い方の話、お城のようなホールで一人暮らしをした話など、刺激的だった。なかなかバイタリティーに溢れる人だと思う。
また、筆者が自分だけ授業についていけず泣いた話や、英和辞典と英芬辞典の2冊を駆使しながら日々勉強していた話、フィンランド各地の方言やエストニア語まで同時に学んでいた話を読んで、英語だけで何年も苦労している自分が恥ずかしくなった。
母語以外の言語を、 -
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タイトルの猫という言葉に惹かれて購入。
著者自身のフィンランド留学時の奮闘ぶりを綴ったエッセイ。
フィンランドと聞いて思い出すのはシベリウスとサウナくらいで、フィンランド語は聞いたこともない。猫の言葉とはどういうことか?と思い読み始めた。
彼女はフィンランドの美術を勉強するために留学を決意したようだが、当時の日本にはフィンランド語の指南書的な本は皆無に近くとても大変そうだが、その大変さが楽しく読める。
ヘルシンキ大学での奮闘ぶり、フィンランド語の文法の難解さ、日常生活のこと、おそらくとても大変だっただろうことでも楽しく読める。
そして時折、語学の本質のようなものも書かれている。
そしてタイトル -
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「電子書籍がセール価格になっていた」「最近気になってるフィンランド」「表紙がかわいい」と三点セット揃ったので買って読んだ。著者稲垣美晴さんは1952年生まれということで私からするとだいたい親世代。1970年代終盤、東京芸大(芸術学)在籍中にフィンランドへ留学したさいの、語学習得奮闘記。フィンランドに魅せられたきっかけは音楽、芸大生としての研究テーマはフィンランド美術史、と書いてあったはずだが、ヘルシンキ大学では言語学で学位をとることにしたようで(そのあたりの細かい経緯は書いてあったかもしれないけど忘れた)、こんなとっつきやすげな、そして実際ユーモア溢れる楽しいエッセイにしては、格変化やら構文や
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ネタバレ先日読んだ津村記久子の『枕元の本棚』でも紹介されていたので、積読棚から順番を繰り上げて読んでみました。
最近の話なのかと思ったら、もう40年も前に出版された本が、何度目かの出版社のお引越しで出版されたものなんですね。
つまり従来から相当読まれている本なんですね。ふむふむ。
のっけから「解体新書」をなぞらえているように、手がかりの少ないフィンランド語の学習はとても大変だったと思います。
が、それを感じさせないユーモアが、とにかく愉快。
「大変だ~」「全然わからん~」と言いながら、着実にフィンランド語をものにしていく姿は、読者に勇気を与えるのではないでしょうか。
実は私、高校生の時に半年ば -
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海外旅行はまだ一般的はなく、「北欧」というフレーズもまだメジャーではなかった1970年代、フィンランドへ留学した女子のエッセーです。
1981年に出版されて以降、今も読み継がれているとても楽しいエッセーです。フィンランドの素敵な留学生活とフィンランド語についていろいろと書いてあります。
「海外適応の時間的経過」について、フィンランドで食べるじゃがいもの味の変遷を例におもしろおかしく記載してあります。海外で暮らしていくと、現地の味にどのようにして順応していくのかよくわかりました。
フィンランドで相槌をうつ時に「ニーン」という言葉を使うそうです。著者の稲垣さんによるとこの「ニーン、ニ