サバイバル登山の定義は少し難しい所だが、著者である服部文祥氏によると、自分が許す可能な限り軽量な装備で、食料を現地調達しながらする登山、と言った感じだろうか。
本作には服部氏が実際に行った、北アルプス単独縦断11日間の記録が紹介されている。主食である米や、現地調達が不可能な基礎調味料類は持って行く
...続きを読むが、基本的には採った山菜や川で釣ったイワナを食べながらの縦走である。
釣り方にもこだわりがあって、毛バリを使用したテンカラ釣りという方法だ。
釣りをする方ならわかるだろうが、エサ釣りの方が確実に多くの魚を釣る事が出来る。しかし毛バリを使用した方が、自分の能力が占める割合が高い、というのが理由のようだ。
時にはロープなしのフリーソロという危険な方法で、難所を越えることもあるらしい。サバイバル登山とは死と向かい合う事で、よりいっそう強く生を感じる行為であり、彼の言葉を借りれば、「あいまいな生命の輪郭に触れる瞬間」なのだろう。
かなりストイックな行為の反面、避難小屋に置いてあったカップ麺を無断拝借した事や、たまたま出会った知人に食べ物をねだった事など、俗世間的な一面も正直に書いているところが面白かった。