嘉納治五郎の一生をコンパクトに纏めていて読みやすい。
嘉納は、柔道の創始者であることは有名だが、この本を読んでいると、例えば、水泳、マラソン好き、部活等、日本ユニークなスポーツ関連事象のルーツがここにあることに気付く。
因みに、日本では公立小中学校の殆どにプールがあり、多くの生徒(日本人)が泳ぐことができると思うのだが、欧米では学校にプールがあること自体珍しい。
日本人として初めてIOC委員に選ばれ、スポーツは国際平和に繋がる、という信条の持ち主だったと思う。
ただ、当時はヒットラーがオリンピックを政治利用し、1940年の東京オリンピック招致のところも、もう少し当時の状況を調べたいところ。
嘉納治五郎は、日本の近代化に影響を与えた人物であることは間違いない。日本の近代化の目標は、”欧米に追い付くこと”、であったわけだが、日本の成功の特徴は、そこに、日本らしさを追い求めていたこと。
独立自尊の考え方。
柔道も、そのひとつの象徴的なものかもしれない。
以下抜粋~
・押し寄せてくる外からの力に対し、逆らわずに受け止め、それを自分自身の枠の中に収めつつ、以前より良いものに創りかえてきたのであり、これがハーンの目からは、「逆らわずにして勝つ」という日本人の精神性であり、日本文化の特徴と映ったのだ。
・(東大にて)スペンサーの「教育論」では「知育」「徳育」「体育」の「三育思想」を主張し、明治以降の日本の教育に大きな影響を与えている。
・柔術は勝負を目的とするが、柔道は勝負に加え、体育と修心の目的も合わせ持つもの。
・嘉納は、柔の理を柔よく剛を制すの意味であるとした。
・精力善用・自他共栄
・嘉納は、歩行と長距離走、水泳が日本人に適したスポーツだと考えた。