南日本新聞社のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
もしアインシュタインが現在も生きていたとして、講義で彼が数式を黒板の端から端まで細かい字でびっしりと一心不乱に書き切ったときの、その数式の内容もさることながら、黒板を占める数式の構成美に思わず“Vollkommenheit!”と言ってしまうような感じ-
-この本の口絵としてカラー印刷された田中一村(たなか・いっそん)の数枚の絵のもつ、まるでピカソのゲルニカのモチーフを奄美の自然に移し替えたかのような多感さと多弁さを私はこう例えたい。
そして、このような絵を描き、残した人物はどのような人生を送ったのか-
-画壇でも名を知られず、その完璧主義によって絵画も少ししか残していない一村の生涯が、この本 -
Posted by ブクログ
こういう画家がいたのだな、と知るには良い伝記だった。
が、認められないこと=孤高の人、真の芸術家、とは思わないし、藝大の同級生で「認められた」画家への屈折した思いなど鑑みると「本当は羨ましかったのでは?」「売るために描くのではないと声高に主張することで、自信のなさを補っていたのでは?」と感じられてしまった。
芸術家であれば、破天荒で周囲に迷惑をかけまくる生き方が認められるわけではないと思うし、本人の思いとこの本の表現がどこまで一致しているか不明だが、「すごい人がいたんだ!」というほどの感動はなかった。
菜食主義で、自己に厳しく、自らの肉体を動かして生活を保とうと努力した点は偉い人だなあと思うが