大嶽秀夫のレビュー一覧
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[特異な二人三脚]米中接近、米ソ間のデタント(緊張緩和)、そしてベトナムからの「名誉ある撤退」をはじめとして、アメリカの外交において特筆すべき役割を果たしたニクソン大統領とキッシンジャー大統領補佐官。「リアリズム」と評される二人の外交政策の背後に控えていた理想主義・ナショナリズムにスポットを当てながら、なぜこの二人が特筆に値すべきかを論評した作品です。著者は、戦後日本政治に関する著作を多く残されている大嶽秀夫。
ニクソンとキッシンジャーというと、地政学に重きを置いた現実主義の外交を展開したと評されますが、本書ではそこからさらに突っ込んで、その現実主義を成り立たせるための柱として機能した2人 -
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ウォーターゲート事件の印象が強いニクソンだが,本書では彼が主導した三つの
外交成果(対ソ緊張緩和,対中接近,ベトナムからの名誉ある撤退)に絞って,
その世界史的意義を論じていく。タイトルに反してキッシンジャーはかなり脇役。副題の方が内容をよく表している。
反共の闘士として頭角を現しながら,中道政策を掲げて「普通のアメリカ人」
(=サイレントマジョリティ)の支持を調達,イデオロギーを排して地政学とパ
ワーバランスに基づく外交を繰り広げたニクソン政権。その現実主義的な政治姿
勢が,実は多分に理想主義的な使命感に裏打ちされていたことまで踏み込んで考
察している。もちろんニクソン・キッシンジャー外交が -
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ニクソンが構想し、キッシンジャーが理論化した、バランスオブパワーを基軸とする現実主義外交。ソ連とのデタント、中国との国交樹立、ベトナム戦争からの名誉ある撤退がテーマとして取り上げられている。
そこでは、冷徹な計算、国益の追求から、イデオロギーが反する国家とも手を結ぶ、国民の支持を確保しつつ、兵を撤退させるといった離れ業があった。
ただ印象的だったのは、最後の方で筆者が指摘している、ニクソンらが有していた発想。すなわち国家の名誉、や国家の自尊心というものだ。それは、時に商人的狡猾さを拒否するような、ある種理想主義的な発想に結びつく。それに対し、日本やドイツははるかに、功利主義、現実主義的な -
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京都大学名誉教授(政治学)の大嶽秀夫(1943-)によるニクソン・キッシンジャー外交再考。
【構成】
第1章ニクソン・キッシンジャー外交の基盤
1 「外交大統領」
2 準備期間と在任期間の長さ
3 ニクソン・キッシンジャーの国際秩序観
4 ニクソン・キッシンジャー外交の本質と評価
5 パーソナリティ
第2章ニクソン大統領の対ソ戦略-戦略兵器削減交渉(SALT)への道
1 核バランスの変化
2 ニクソン政権によるデタント政策開始とソ連の事情
3 ニクソンの戦略
4 SALT締結への経過
第3章米中和解-ソ連と日本の脅威を梃子に
1 ニクソンの狙い
2 中国の国際認識
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小泉純一郎を「ポピュリズム」の政治家と位置づけたうえで、道路公団民営化、郵政民営化、9.11およびイラク戦争への対応、対北朝鮮外交の4つの事例を取り上げて、小泉のリーダーシップの新しいあり方を分析している。
本書を読んで印象に残ったことは、主に三点ある。第一にポピュリズム政治の意味である。本書では、ポピュリズムというのを「大衆迎合政治」という意味ではなく、善悪二元論のもとに、「プロフェッショナル」な政治家・官僚に対峙する「素人」であり「普通の人」の人であることを強調する政治家による政治と意味で用いている。「素人」だからこそ大胆な政治運営ができるともいえるが、「素人」=善、官僚をはじめとする -
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ニクソンとキッシンジャーの業績のうち、主に外交面に絞って新書サイズにまとめた一冊。中公新書のアメリカ大統領シリーズ(?)のうちで読んだのはこれで2冊目。
中公新書は安心して買えるし読める。特に目新しいことはなく淡々と書かれているところも新書らしくて気に入ってる。最近は「わざわざ1冊の本にまとめるほどのことか?」という新書が多く出ているので買うのに躊躇することもあるが、中公新書なら安心。
内容については特に目新しいことはないが、ニクソン外交とはどういったものだったのか、ニクソンとキッシンジャーは何に恐れを感じ、何を見誤り、何を求めていたのかといった就任前から就任中の動きがまとまって描かれてい