実説 城谷怪談 撰集一

実説 城谷怪談 撰集一

440円 (税込)

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1.「嗤う」
四十年輩の男性が、20年ほど前、大学卒業後、社会人1年目の盆に里帰りした時の体験。地元の友人と深酒をして実家まで歩いて帰る道すがら、地元唯一の小さな商店街に差しかかった時の事。なつかしい気持ちに誘われてフラフラとシャッター街になってる商店街を歩いているうちに、幼い頃聞かされた都市伝説を思いだす。ところが、実はその都市伝説はきっかけになった凄惨な事件があった事を知る事になるのだが・・・。

2.「電話ボックス」
雪降りしきる12月の札幌。当時中学生だったY君は、初恋の相手と毎夜のようにこっそりと電話をしあっていた。ある夜、Y君は母親に長電話を咎められ、自宅の電話を禁じられてしまう。仕方なく、家の前にある電話ボックスを使う事にしたのだが・・・。そこで彼を待ち受けていたのは背すじも凍る不可思議な体験だった。そして、謎に包まれていた怪体験はその数年後に思いもよらない形で真相を顕す事になったのだが・・・。

3.「壁のシミ」
7、8年前のこと。当時18歳だったミホちゃんは、上京して小さなワンルームで一人暮らしを始めた。昼は正社員、夜は大学の夜学に通うハードな毎日を過ごしていた頃、ある時期から自分の部屋の壁におかしなシミを発見する。やがて何かに突き動かされるように毎日そのシミを監察するようになるのだが、しばらくして、遂にそのシミが原因と思われる異変が彼女を襲う。霊感の強い友達によれば、7、8年前のある出来事が、実はまだ終わっていなかったという。

4.「玄関」
およそ10年程前、一人の若者が舞台俳優を目指して劇団に入団してきた。屈託なく華のある男ではあったが、ある夏の夜、彼が住まう一人暮らしのアパートに帰って来た時、立て続けに奇妙な体験に巻きこまれてしまう。初めての怪奇現象は、結局解決をみる事なく数日が経つ。そして、更なる恐怖が彼らを飲み込む事になる。果たして何が起きてどうなってしまったのか。

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実説 城谷怪談 撰集 のシリーズ作品

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  • 実説 城谷怪談 撰集一
    440円 (税込)
    1.「嗤う」 四十年輩の男性が、20年ほど前、大学卒業後、社会人1年目の盆に里帰りした時の体験。地元の友人と深酒をして実家まで歩いて帰る道すがら、地元唯一の小さな商店街に差しかかった時の事。なつかしい気持ちに誘われてフラフラとシャッター街になってる商店街を歩いているうちに、幼い頃聞かされた都市伝説を思いだす。ところが、実はその都市伝説はきっかけになった凄惨な事件があった事を知る事になるのだが・・・。 2.「電話ボックス」 雪降りしきる12月の札幌。当時中学生だったY君は、初恋の相手と毎夜のようにこっそりと電話をしあっていた。ある夜、Y君は母親に長電話を咎められ、自宅の電話を禁じられてしまう。仕方なく、家の前にある電話ボックスを使う事にしたのだが・・・。そこで彼を待ち受けていたのは背すじも凍る不可思議な体験だった。そして、謎に包まれていた怪体験はその数年後に思いもよらない形で真相を顕す事になったのだが・・・。 3.「壁のシミ」 7、8年前のこと。当時18歳だったミホちゃんは、上京して小さなワンルームで一人暮らしを始めた。昼は正社員、夜は大学の夜学に通うハードな毎日を過ごしていた頃、ある時期から自分の部屋の壁におかしなシミを発見する。やがて何かに突き動かされるように毎日そのシミを監察するようになるのだが、しばらくして、遂にそのシミが原因と思われる異変が彼女を襲う。霊感の強い友達によれば、7、8年前のある出来事が、実はまだ終わっていなかったという。 4.「玄関」 およそ10年程前、一人の若者が舞台俳優を目指して劇団に入団してきた。屈託なく華のある男ではあったが、ある夏の夜、彼が住まう一人暮らしのアパートに帰って来た時、立て続けに奇妙な体験に巻きこまれてしまう。初めての怪奇現象は、結局解決をみる事なく数日が経つ。そして、更なる恐怖が彼らを飲み込む事になる。果たして何が起きてどうなってしまったのか。
  • 実説 城谷怪談 撰集二
    440円 (税込)
    1.「かくれんぼ」 三十代の主婦ミサキさんは、家族で新築二階建てに引っ越して間もなくの夏、娘と娘の友達二人と三人で、家の中でかくれんぼをすることになった。激しい雨の薄暗い夕方…、ミサキさんを待ち受けていたのは。 2.「ミヤビちゃん」 城谷が怪談バーに勤めていた頃の常連客ホステスをしていたミサちゃんが体験したエピソード。独り暮らしのマンションで、ある時期からアクセサリーが見つからなくなってしまう事案に悩まされた。闇雲に探す内に部屋は散らかり放題、次第に生気が失われ親友のミヤビちゃんに片付けを手伝って貰う事になったのだが、思いもよらぬ結末に言葉を失う。 3.「糠平温泉」 北海道の観光地にある古びたホテルには関係者が忌み嫌う部屋があった。観光バスのベテラン運転手トモさんが、ある時外国人観光客の団体のツアーでそのホテルに宿泊したのだが、深夜にトモさんの部屋を訪ねて来たのは招かれざる客だった。 4.「自撮り」 とある日、元システムエンジニアのシマダさんに一枚の自撮り写真を見せられる。その写真が撮られた数年前の冬、シマダさんは多忙を極め不眠症に陥り病院で診察を受けていた。しかし複数の医療機関にて診察を行っても、期待はずれの診断ばかり。落胆して飲み耽り、ふと気が付くと何故か故郷の駅にいたシマダさんは、学生時代の親友イシバシさんとバッタリ再会したのだが…。自撮りの写真に隠された意外な真実が紐解かれる。
  • 実説 城谷怪談 撰集三
    440円 (税込)
    1.「新築マンションの呪い」 三十代半ばの独身女性が、長年住み慣れたアパートを出て新築の大きなマンションに引っ越して間もなくのこと。深夜一人きりの寝室に足音が聞こえてくる。足音は彼女の寝ている背後でピタリと止まるのだが…。連日に渡って彼女に襲いかかる怪奇現象には悲しい事実が隠されていた。 2.「魚溜の滝」 札幌市から南に進む山中、峠道の途中に突如表れる滝の入り口。獣道を下った先の沢の大きな1枚岩があり、水死体が引っ掛かっていたとの噂に好奇心おおせいな若者が五人肝試しに訪れた夏の深夜。待ち受けていたものとは…。城谷氏本人の体験談。 3.「もう淋しくないよ」 当日三十二才だった体験者の女性。いつも決まった通勤路を徒歩で行き帰りしていたのだが、その日は深く考えもせず、普段使わない小路に足を差し向けた。するとそこには想像もつかない景色が広がっていた。好奇心の赴くままに進んでいった先にあった小さな公園…異世界に足を踏み入れた彼女を待っていたものは 4.「薄野交差点の花魁」 札幌薄野と言えば、明治時代から続く花街である。霊感の強い飲食店経営者の男性がまだ十代後半、とある小料理屋で板前の修行をしていたころ、同い年の後輩が入店してきた。聞けば後輩も霊感があるという。意気投合した二人がある日の閉店後、帰路の途上にある小さな交差点で出会った不思議な光景とは
  • 実説 城谷怪談 撰集四
    440円 (税込)
    1.「ドーベルマン」 50年輩の鈴木さんという男性は木枯らしの吹く寒い晩になると、かつて不慮の死を遂げた親友の事を思い出す。事の起こりは今から三十年以上も昔、鈴木さんと親友のシンヤ君が学校帰りの路地で出くわした一頭の犬だった。野良犬と化した大きなドーベルマンが牙をむいて2人に近づいてくる。恐怖のあまり傍にあった板切れを振り回しけん制したところ、それが犬の額にぶつかってしまい、錆び釘が飛び出ていて犬の眉間に突き刺さってしまった。この時、シンヤ君は聞いてはいけない声を聞いてしまうのだが……。 2.「ジョーク」 海上保安庁の船員である23歳の青年ヨネ君の体験。船員になって間もない夏、休暇のスケジュールを道東にいる親友に伝え、小樽まで迎えに来てもらう約束をした。親友は高校時代から仲の良いお人よし。 二人は約束の日、久しぶりの再会を喜び昼食を済ませると夕方に札幌を立ち、一路地元を目指したのだがその道中、怪談好きのヨネ君は怖がりの友人にある悪戯を仕掛けようと思いつく。見えもしない幽霊が見える振りをして、翻弄してやろうと……。軽はずみなジョークのつもりだったのだが、思いもよらない結末が待ち受けていた。 3.「Iさんの話」 六本木で飲食店を何軒も経営しているIさんは非常な霊感の持ち主でもある。そのIさんがおよそ二十年前、先輩に初めて連れていかれた都内でも指折りのキャバクラで一歳年下のホステスさんとすっかり馴染みとなった。仕事が立て込み一ヶ月ほど振りにお店に顔を出すと、そこには眠れずにげっそりとやせ細った彼女の姿があったのだが、その理由を聞けば、ここ一カ月、深夜になると何かが彼女の部屋に「やってくる」ということだった……。 4.「バタトンネル」 埼玉県飯能市にある通称ハタトンネルは有名な心霊スポットである。全寮制の高校に通っていた秋山君は小さい頃から怪奇現象に興味深々、あちこち心霊スポットを巡るのが趣味だった。いつもビデオで現場を映像に納め後から見直しては楽しんでいたのだが、その年も悪友と連れ立ってどこに行こうかと算段を練っていると同級のY君を同行させようということになった。臆病者の友人を連れていき現場で驚かしてやろうというつもりだったのだが、そのいたずら心が招いた悲劇の結末とは……。
  • 実説 城谷怪談 撰集五
    440円 (税込)
    1.「犬鳴峠」 福岡県にある全国でも有数の心霊スポット。高校生だったチナミちゃんは、先輩にドライブがてら肝試しに誘われる。行先は犬鳴峠にある旧トンネル。チナミちゃんは霊感の強い幼馴染のアズサちゃんに声をかける。夏の夜、男女四人で訪れたそのトンネルは異様な空気感に包まれており、車中で写された記念写真にはいなかったはずの男の子の姿が。運転していた先輩の突然の死、肝試しに出向いたチナミちゃんに次々襲い掛かる怪異は日毎に増していき…。 2.「お化け屋敷」 中島さんという男性がまだ小学生の頃に体験したエピソード。当時、近くの神社のお祭りの縁日にあった移動仮設式のお化け屋敷は、チープな作りであったものの、子供心にはそら恐ろしい面白さを感じるものだった。五年生の中島少年が今年こそは独りでと、いざお化け屋敷の中に入ろうとすると、耳鳴りがしてきた。受付のおじさんの言葉も無視して中に踏み入ると…。そこは真っ暗で、外の喧騒も聞こえない異常なくらいの静けさだった。初めての体験に胸躍ったのもつかの間…。 3.「子取ろ」 全国の民話的伝承にも見られる子取ろ(一部では子取りとも)。体験者の石井さんは無根拠な伝説ではないのではないかと顔を曇らせた。彼がまだ子供の時分、冬休みに東北地方の祖父母の家に独り連泊で帰省した時の話である。夕方までに帰ってくるようにと言い含められて遊びに出た帰省の初日、石井少年はすっかり夢中になり、気が付けば日がとっぷり暮れてしまった。慌てて帰ると申告すると、一緒に遊んでいた友人たちの中に見覚えの無いやたら背の高い人影が目に留まった。気にせず雪道を急いで帰宅する道すがら後ろから誰かがついてくる。やがてすぐ近くに来ると石井さんにこう話しかけた。 「ねぇもう帰るの?」 4.「消える鍵」 札幌のとある高級マンションは幽霊スポットとして噂されていた。事情を知らずそのマンションに引っ越してきたある独身女性は入居して程なく不思議な出来事に遭遇する。お酒を飲んで帰宅したある晩。部屋の前まで見つからない鍵を取り出そうと、その場にしゃがみこんで鞄の中を探していると、突然目の前で玄関が音を立てて開いたのである。見知らぬ中年の男が隙間からこちらを見下ろし「お前じゃない」と呟いた。侵入者だと思い改めて部屋番号を確認するとそこは隣の部屋の前だった。ただの勘違いかと思っていたのだが、それがすべての始まりだった。
  • 実説 城谷怪談 撰集六
    440円 (税込)
    1.「福岡駅傍レディースホテル」 若い女性タレントと、霊感の強いその母親が共に体験したエピソード。 当時小学生だった体験者とその母は、夏の夜、福岡市内にある一軒の女性専用のビジネスホテルに宿泊することとなった。 夜も更けており、二人はチェックイン後、早速汗を流そうと地階にある大浴場に入ることにした。母子二人だけのはずの深夜の浴場の引き戸が開き、一人の人影がゆっくりと入ってきたのだが・・・。 2.「札幌市北区心霊屋敷」 北海道在住でバスガイドを務めるナオちゃんという女性の体験談。 昭和53年冬。ナオちゃんの家族は父親の仕事の都合で釧路から札幌に急に引っ越すことになった。急なこともあり、家族五人で住まえる一軒家を適当に見繕ってほしいと不動産屋に一任し、決まった転居先は札幌市北区の中古賃貸の5LDKだった。ところが越してきて間もなく家族が一人ずつ不慮の事故に遭い、意識不明の重体に陥っていく。 唯一無事だと思われた父親も遂に川に車ごと転落し、身体は無事だったものの記憶喪失になってしまった。その原因が紐解かれていくにつれ明らかになったのは・・・。 3.「影踏みチイちゃん」 小学校の教員を務めていた青田さんが、かつて地方の古い小学校で高学年のクラスの担任をしていたころの事。ある時期、学校中の生徒が「影踏み鬼」という遊びに夢中になったことがあったそうだ。夢中という言葉ではもはや説明できないくらい、休み時間や放課後になると全員が校庭に駆けだしていく。ある日の夕暮れ時、職員会議を終え、クラスに置いたままの荷物を取りに教室に向かう途中、西日の差しこむ木製の廊下でふと気づいて足を止める。三階の廊下の窓から下を見下ろすと中庭で影踏み鬼に興じる生徒の姿。ところが次の瞬間、違和感を覚えて振り返った対面にある壁を見た青田さんは慄然として息を飲んだ。 4.「木偶」 五十代のその女性にはマモル君という一人息子がいる。今から十年余り前、家族で新築の一軒家に引っ越して間もないある時、マモル君が一人の友人を家に連れて来るようになった。かつては学校から帰ってくるなり、暗くなるまで外で遊んでいたマモル君だが、二人は決まって夕方まで二階の子供部屋にこもるようになっていった。次第次第にやつれていく息子を不審に思った彼女はある日こっそりと子供部屋の様子を伺ってみるのだが。 「食べたけど全部吐いてるから大丈夫」「本当に?」「うん、僕神様になれるかな」という異様な話し声が聴こえてきたのだが・・・。
  • 実説 城谷怪談 撰集七
    440円 (税込)
    1.「鬼の手」 城谷が10歳の時に体験したエピソード。 開かずの間が幾部屋もある小樽の古い二階家に住んでいた頃、ある晩2歳年下の弟と子供二人きりで留守番をすることになった。急な眠気に襲われ兄弟は仏間に敷かれた布団に潜り込む。明かりが消えると何やら物音と気配が忍び寄ってきて…。 2.「百物語」 怪談好きの売れない舞台役者仲間3人。8月下旬の暑い盛り。酒を飲み、酔った勢いで百物語をやろうと算段がまとまる。場所は村木が住んでいる築50年の事故物件アパートの一室。夜10時に始まった怪談会だが、村木は必ず話しの最後をはぐらかして真面目に参加しない。そこに実は、重大な秘密が隠されていた。 3.「さちよ」 看護師のMさんが31歳の時のエピソード。 担当していた入院病棟の6人部屋に新しい患者さんが入る事になった。柴田さんと言う偏屈なお婆ちゃんだった。ちっとも言うことを聞かないお婆ちゃんに皆辟易していたが、Mさんは根気強く向き合い、次第に仲良くなっていく。しかし、心暖まる交流の裏に潜む戦慄の展開がMさんの身に降りかかる。 4.「ぬいぐるみ」 ゆみちゃんが念願だった独り暮らしを始めたのは大学2年の春。大好きなぬいぐるみを部屋中に飾り付け、早速仲良しの女友達3人を招いて引っ越しパーティを開く事になった。ところが、ある時期からいくら誘っても誰も遊びに来てくれなくなってしまう。勇気を出して原因を尋ねると、困った顔の友人が重い口を開いた。「前に上からテレビの音が聞こえるって言ったでしょ…あれねテレビの音じゃないんだ」 一体友人は件の夜、何を聞いたのか…。
  • 実説 城谷怪談 撰集八
    440円 (税込)
    1.「いいものがあるよ」 霊感の強いAさんの体験談。店を開業するにあたり、全国に散らばっている仲間たちと都内行きつけの居酒屋で飲んだ帰り、終電間際の某駅でのできごと。酔っぱらった友人の一人が「電車が止まる」理由と「止まる駅は決まっていると」話し出す。ホームの端でふざけあっている内、Aさんは何者かに強く引っ張られ膝をついて四つん這いに。その視線の先にいたものは……。 2.「墓荒らし」 御存命であれば90代のお婆さんがまだ幼少の頃の話。彼女が生まれ育った田舎は、当時まだ土葬であった。まだ小学校にも上がらない小さなころ、親戚の叔母が若くして亡くなった。通夜の晩、布団に入った彼女は、隣室にて一夜明かして起きている大人たちが、墓守を誰がやるかという相談を真剣にしている声を聞く。新仏の墓を暴く妖が出ると困ると難しい顔で話しあっているのだ。その晩は何事もなく、葬儀まで滞りなく終わったのだが。初七日を迎えるころそれは彼女の部屋にやってきた。 3.「またくる」 50年輩のサトミさんは人生で二度、お風呂場でそれに出くわしている。もともと気配や悪寒に敏感だった彼女が、小さい頃姉たちと留守番をしていた秋の日の夕暮れ、長姉の背中に張り付くように見えた黒い影に目を奪われる。やがて入浴しようと風呂場に向かったのだがいざ入ってみると、狭い風呂場に姉の姿はない、途端に体が熱く重くなり朦朧とした視界に蠢く者は長髪を振り乱し、異様に手足の長い人であって人でない何かだった。やがて、「また来る」という謎の文言を残して姿を消してしまったのだが、サトミさんは数十年後再びソレと出くわすことになる。 4.「訪ねてくる女」 体験者がまだ新社会人だった二十数年前、就職先も決まり彼女も出来、都内某所の新しいマンションの角部屋に引っ越して間もない頃、出勤するのに部屋を出た朝7時にふと気づくと自分好みの綺麗な女性が廊下の奥に立っているのに気が付いた。それから毎朝のようにすれ違い、ある日とうとう男女の一線を越えてしまう。逢瀬を重ねて一カ月、本命の彼女からかかってきた一本の電話から事の異変を知らされることになるのだが。
  • 実説 城谷怪談 撰集九
    440円 (税込)
    1.「この子そんなに怖い」 経営者の高橋さんは、元来幽霊お化けには否定的な豪放磊落な性格だった。ところが、ある時期から妙な夢を見るようになった。決まって九月の初旬、嫌な夢は三夜にわたって繰り返す。見知らぬ古い座敷に布団を二組延べて寝ている夢なのだが、カリコリカリコリという音が聞こえて目が覚める。横に寝ているとばかり思っていた妻の姿はない、音は切れ切れに妻の布団の脇にある衝立の向こうから聞こえてくる。気になった夢中の高橋さんは思わず衝立をどかしてみると、白髪頭をザンバラに振り乱した老婆が、何かを両手でわしづかみ歯を立ててガリガリとかじりつく様を目の当たりにする。 2.「エレベーターの子供」 とにかく安い部屋を。その条件だけで初めての一人暮らしに望んだ体験者が案内されたのは築数十年の五階建てのアパートだった。旧建築法の時に建てられていたから、最上階まで階段でしか上がれないボロボロの建物不だったが、部屋を見るとリフォーム済みでユニットバスに水洗トイレ。不満なく暮らし始めたのだが、しばらくたったある晩、何気なく視界に飛び込んできた時計の針が8時を指そうというとき、廊下の奥からチンというエレベーターの到着音が聞こえ、小さな子供達の嬌声と駆け回る足音を聞いた。実はないと思い込んでいたエレベーターが一基だけ存在していた。 3.「隙間」 体験者は二十代前半の一人暮らしの女性。彼女が中学生の時分止むを得ず、母と二人で古いアパートに引っ越しをする。地域ではちょっと噂になっていた心霊スポットまがいのアパートで一階の真ん中の部屋は8畳の洋間と6畳の和室の二部屋。寝室代わりの和室の曇りガラスの窓の向こうは砂利敷きの狭い駐車スペース。夜中になると上の部屋の住人が車で帰ってきて、音とテールランプの灯で起こされ、寝付けない夜を幾度も過ごすことになる。そして数年後、彼女がアルバイトに出るようになったとある日の深夜、信じられない出来事が母と娘に襲い掛かる。 4.「こっくりさん」 何時の時代も密かなブームを呼ぶ「降霊術」。城谷が小学生だった三十年ほど前、世間で「こっくりさん」が大流行したことがあった。ある日の夕刻児童会の会議で遅くなった城谷がランドセルを取りに教室に戻ってみると、クラスの女子が三人待ち構えて、先生に内緒で禁止されているこっくりさんをやろうと言い出した。好奇心も手伝って、四人で始めた訳だが、あまりに顕著な反応を示す降霊の儀式に不信感を抱いた城谷はタブーを敢えて冒かしてみたのだが。口演にかけると何らかのトラブルが続出する城谷怪談の中でも正にタブーの問題作。
  • 実説 城谷怪談 撰集十
    440円 (税込)
    1.「死神」 看護師をされていたNさんという女性。今から十年ほど前に勤めていた都内のある総合病院には、関係者なら誰しもが知っている噂があった。「三階の奥の病棟には死神が出る」迷信だと気にせずにいたNさんだったが移動の辞令が下りて、ある日、自分が三階のナースステーションに配属になってしまう。初めこそ明るい、感じのいい病棟だと思ったのが間もなく師長さんに呼ばれ妙な相談を受けることになってしまう。“この病棟にまつわる噂を知っているだろうか?”と。前任者もその前の担当者も「死神が出る」「死神を見ると必ずそのベッドの患者は死んでしまう」「人の死期が見えて、黙って送るより他ないのは辛すぎる」という理由で、皆辞めていったというのだ。やがて、噂だと思っていたそれをNさんも目の当たりにすることになるのだが。 2.「コンビニの二階」 体験者が高校生だった、約二十数年前。住まい近くのコンビニエンスストアは二階に住居スペースがあるタイプの建物だった。初代オーナーがもともとは住んでいたとのことだが、当時のオーナーは四代目。事務所の奥から上がれるようになっている二階へ続く階段にはカーテンが下ろされ誰も使うものはいなかった。夏休みに入り、体験者は少しでもたくさんアルバイト代を稼ぎたいと申し出て、夜勤帯での最初の出勤の日、自宅を出て坂を登り道路一本挟んで向かいに店が見えた時、二階の窓のカーテンが揺れ誰か人が居ることに気が付いたという。 見間違いだったかとその時は思ったのだが……。 3.「ついてくる足音」 札幌市の某区には歩道橋代わりに地下歩道という幅の狭いトンネルが彫られている場所がある。体験者の女性はその日も通勤路にあるその地下歩道を利用しようと入り口にまで差し掛かると、ぽっかりと開いた地下への入り口付近の草むらにビビットな原色の黄色いハイヒールが一つ転がっているのを見とめた。吸い寄せられるように近づき手に取ると、彼女は無意識に鞄にそれを入れて出勤してしまう。何故そんなことをしたのかはわからなかったが、彼女は午後の休憩でそれを捨てるつもりでいた。ところが休憩時間に鞄を見るとそのハイヒールは忽然となくなってしまっていたのだ。その日、残業で遅くなった帰り道、件の地下歩道を歩いていると誰もいないはずなのに後ろから足音がもう一つ響いてきて…。 4.「押入れの呻き声」 城谷がまだ小学生のころ。北海道には珍しく激しい雨が朝から降り続く嵐の晩、家の向かいの道路で大きな衝撃音が轟いた。慌てて駆け寄った窓を開けて外を見るとあらぬ方向に向いた何台もの車、沿道に群がる大勢の人、そして近くの横断歩道に転がった真っ赤な女性ものの傘。人身事故だった。明朝、嘘のように晴れた通学路には、まだ昨夜の雨が水たまりをあちこちに残していたが、現場傍らの電柱の根元、その水たまりは真黒で表面に油が浮いていた。血であった。聞けば被害者の女性は助からなかったという。子供心にも重く悲しい気持ちになったのだが……事態は一週間後の雨の晩に急展開を迎えることになった。打ち付ける激しい雨音を聞きながら、一人自室にこもって絵を描いていると。
  • 実説 城谷怪談 撰集十一
    440円 (税込)
    1.「学校の七不思議」 三十代女性が中学生の頃に体験したエピソード。彼女が通っていた中学校には、代々学校の七不思議と呼ばれる怪談が伝わっていた。中でも放課後四時過ぎに、校舎四階の女子トイレから現れるという「まゆみちゃん」という小さい女の子の話は、自分達でも呼び出せるという曰く付きだった。彼女が中学二年生の時、実際に怪異が起こるか試してみようということになったのだが、何も不思議は起こらない。実験を始めて五日目、遂に彼女が試してみることになるのだが、秋の日の夕暮れ校舎四階の廊下に現れたモノとは。 2.「とおりゃんせ」 石垣さんという女性はある夏の日の夜、帰宅途中にあるスーパーに食材の買い出しの為に立ち寄った。店内に入ってほどなく、急に視界から色が失われていく、同時にすべての音が聞えなくなっていくという不可解な出来事に遭遇した。不安に立ち尽くしていると、背後から歌が聞えてきた。途切れ途切れに聞こえる歌は小さい女の子が歌う童謡の「とおりゃんせ」やがて、自分のすぐ後ろに怖気だつような気配を感じて振り返ると、そこにいたのは腰の曲がった小さいお婆さんだった。しばらくして、スーパーを後にした石垣さんは、細い路地で再びお婆さんと遭遇するのだが……。神隠しにまつわる現代譚。 3.「鏡の怪」 とかく怪談によく登場する鏡。あの世とこの世の境目になっているなどと言われるが、四十代の男性は若い頃に思いもよらぬ体験をしている。当時設備関係の仕事に就いて間もない二十代前半、市内繁華街の雑居ビルの改修工事の現場でのこと。各フロアには小さな飲食店が入っている五階建てのテナントビルだったのだが、ある時現場の先輩から「五階の奥の部屋には一人では入ってはいけない」と忠告をされる。もちろん、言いつけに従って一人で入るつもりはなかったのだが、翌日の深夜、忘れ物を取りに一人真っ暗なビルに引き返した時、まるで引き寄せられるように件の部屋を覗いてしまう。ひと際大きな鏡に映ったのはもう一人の自分、そして……。 4.「闇」 現在は銀座でホステスをしているアリサちゃんが、高校を卒業して間もない頃。大阪で、親友のかなちゃんとルームシェアをすることになった。とても田舎で出向いてみると二人が住まうアパートのほかに近くには建物がない、あるのは田んぼと畑ばかりで嫌な予感がしたという。アリサちゃんは元来霊感が強く、予感とはつまりその類の予感だった。だが、おかしなモノが見えるでもないし、聞こえるわけでもなかった。ただ、暗がりが異様に気になる。かなちゃんを気遣って口にこそ出さなかったが、何か良くないことが待ち受けていると思っていた。そして、それは現実になる。およそ一カ月に及ぶ二人暮らしの中でアリサちゃんが巻き込まれた恐怖とは。
  • 実説 城谷怪談 撰集十二
    440円 (税込)
    1.「壁向こうの風呂場」 体験者がまだ二十代の頃。引っ越し先のアパートは古いワンルームで角部屋だった。住まいを始めて間もなく、夜になると水が滴る音が聞こえるようになった。確かめてみても自分の部屋で水漏れを起こしている箇所はない。幾晩も続く水滴の音に困惑していたある日、遂に彼の部屋を人ならぬものが訪ねて来てしまった。 2.「大峠左カーブ」 体験者は当時三十代の屈強な男性。数年前まで勤めていた運送会社での事。彼は長距離トラック運転手だった。ある日会社が新しいカーナビを導入したというので早速目的地までの住所を設定し、軽快に荷物の集積所を出発したのだが。旅慣れた道中の差し掛かった峠も半分を超えようとしたとき、突然音声ガイドが奇妙な指示を訴え始める。 3.「嘘から出た真」 怪談に興味がないというエミちゃんをどうにかぎゃふんと言わせたいという思いから、最後まで聞くと祟られるという都市伝説を語って聞かせたのだが、効果はなかった。ところが翌日からエミちゃんの様子がどうやらおかしい。そもそも作り話で実際には起きないだろうと思っていた枕元に老婆が出てくるお話が夜ごと現実となっているという。そのお話は、最後祟り殺されるという結末。言霊にまつわる城谷の体験談。 4.「網走Hホテルの怪」 北海道在住の体験者の男性がまだ若い頃に、当時付き合っていた彼女とドライブに出かけた時のこと。行先も決めずに遠出をして気付けば深夜。たどり着いたのは網走。引き返すには時間がかかりすぎるし、翌日は休日ということもあり、市内で一泊しようとホテルを探したのだが。どこも満室で、諦めかけた時、一軒の元モーテルらしいビジネスホテルを見つける。彼女が先にシャワーを浴びるということで、一人でごろりとベッドに横になると、どこからともなく鼻歌のような声が聞こえてくる。
  • 実説 城谷怪談 撰集十三
    440円 (税込)
    1.「小学校の物品庫」 昭和二十年代の北海道のとある小学校は校舎の建て替え中であった。当時小学校中学年だった体験者は、ある日の下校途中、忘れ物に気付き学校に引き返した。彼女のクラスは旧校舎の二階。灯の消えた廊下の端にある階段を上ろうとしてふと嫌な噂を思い出す。本来12段しかないその階段が13段になることがある。それは13段と数えてしまうと不吉なことが起きるという、ありがちな噂なのだが…。急いで忘れものを取って帰ろうとしたとき、思わず彼女はその段数を数えてしまう。すると足元から引っ掻くような物音が聞こえてくる、下は鍵のかかった物品庫。その物品庫から聞こえてくる音の正体とは。 2.「インターフォン」 体験者の男性が引っ越した都内某所のアパートは独身者向けの古い三階建てだった。引っ越し当日、自分の部屋にだけ真新しいインターフォンが設置されていることに気が付くが、特に気にも留めず、管理会社に問い合わせることもせず新生活を始めた。間もなく。夜の八時になると宅配業者らしき男が訪ねてくるようになる。しかし実際に訪ねてきたのはどうやら業者ではなかったようで…。 3.「まだ寝ないの」 数年前、家族で住んでいたマンションは間取りも広く、部屋数も豊富な七階の一室だった。ある木枯らしの強く吹く深夜になって妻が「この部屋には自分たち家族以外の誰かがいる気がする」と言い出した。体験者の男性にはわからなかったが、妻も娘も異様な気配を感じ取っていたという。二人を先に寝かせた後、洗面所で歯を磨いていると何者かが廊下の向こうから近付いてきて、「まだ寝ないの?」と囁かれたのだが、これがすべての始まりに過ぎないことは…その時、気付く由もなかった。 4.「事故狐」 小学生のころから心霊やホラーが大好きだった男性が、社会人になって初めての夏、好き者の友人を誘って、心霊スポット目がけ車を走らせていた。夜の国道は空いていて天気も良い、テンションが上がって盛り上がる車内の空気は車の大きなバウンドと「ギャン!」という悲痛な叫び声のおかげで一気に盛り下がってしまった。恐る恐る社外に出て確認してみると、それは道路に飛び出してきたキタキツネが無残な格好でつぶれていた姿だった。運転手の友人はすっかり落ち込んでしまい、体験者が運転を交代することになったのだが、程なく後部座席に乗っていた友人の様子が急変する。
  • 実説 城谷怪談 撰集十四
    440円 (税込)
    1.「こつこつ」 藤田さんという男性が、29歳の夏に体験した出来事。小さい頃から可愛がってくれていた祖母が亡くなり帰省した新潟の実家で、久方ぶりに対面した祖母は、北側の暗く涼しい部屋で静かに横たわっていた。その晩は祖母の横で眠ることにした藤田さんが夜中トイレに起きると、廊下の奥からコツコツ…と何かの音が近づいて来るのを聴く。やがてその音はトイレのすぐ前にまで近づいてきて。 2.「赤い部屋」 石川さんが高校生の頃。住んでいた横浜の某駅付近には、かつて火事で全焼し人は誰も住んでいない立ち腐れたままになっていた、ある企業の社宅アパートがあった。ところが、10階建ての建物の最上階にたった一つだけ今も火事による被害を一切受けず、綺麗なまま残っている部屋があり、そこには人ならぬものが住んでいるらしいという噂が独り歩きしていたそうだ。ある時、悪友三人と連れ立ってその部屋を探索に訪れてみるのだが、それがすべての怪異の始まりとなってしまう。 3.「天井の隅」 城谷が小学生のころ、暮れも押し迫った十二月のある晩、父と弟と三人でトランプをして遊んでいた時の事。トランプに飽きた城谷は、その世界からぱったりと音という音が消え、同時に視界からは色が失われ、まるっきり時間が止まってしまった感覚に陥ってしまった。不意に襲い掛かった異変に躊躇していると、天井の隅にもぞもぞと蠢くモノがみとめられた。それは次第次第に大きく膨らみ、やがて…。 4.「鈴の音」 吉野さんという男性が少年時代の話。当時同級生と連れ立って訪れた公園には大きなグラウンドと、サッカーゴールがあった。また併せて少し妙な噂もある公園でもあった。暗くなるまでシュートの練習で汗を流したが、そろそろ帰ろうということになり、足元に転がってきたボールを正面の友人にポーンと蹴り飛ばした時のことだ。ボールは放物線を描いて飛んでいったが急に空中でピタリと止まりボトンと地面に落ちてしまった。気が付くと正面にいたはずの友人の姿はなく駐車場から「早く帰ろうぜ」と声を掛けられた。今蹴り飛ばしたはずのボールは駐車場にいる友人の手元に抱きか抱えられている。吉野さんという男性はこの日の出来事を三十九歳になって急に思い出したのだが、その訳とは。
  • 実説 城谷怪談 撰集十五
    440円 (税込)
    1.「白い子」 因縁因果とは何か。イワサキさんという営業の仕事をしている男性が、打ち合わせに訪れた都内某所の街を夕刻一人ぶらぶらと歩いていた時、思いがけず幼い子供の声を耳にする。気が付くと小学生くらいの男の子が現れる。誘われるようにその子についていくとオフィス街の中に思いもよらぬ公園がある。傍にあったベンチに腰を下ろし一息ついて目を閉じると喧騒が嘘のように消え、代わりにぴちゃぴちゃと水の滴る音が聞こえてきたのだが…。 2.「いらっしゃいませ」 今から二十年ほど前の事。八王子駅の近くにあった商業ビルの地階のオープンスペースには小さな居酒屋がお祭りの露店のようにひしめき合っていた。そのうち一つの店でアルバイトをしていたKさんは当時高校三年生。はす向かいのハワイアンバルの店長と特に仲が良く、ある日気掛かりなことを聞かされた。「この地階のオープンスペースには目に見えない客がいる。それは生者の客に混じって当たり前に現れる」と。冗談めかして話してくれたその話は過日現実になってKさんと店長の身にふりかかかることになった。 3.「湯煙に紛れて」 サカキさんは現在四十代の開業医である。彼がまだ駆け出しのインターン時代の事。勤めていた大学病院では冬になると若手の医者向けに長期出張のアルバイトの募集がかかった。N県のとあるリゾート施設で三食昼寝付きのアルバイト。内容は冬場雪山で遭難死された遺体の確認である。カチカチに凍り付いた遺体を温泉の湯気と蒸気を利用しいったん解凍させ、そこからがサカキさんの仕事だった。半月何もなく過ぎたある午後、遂に最初の仕事がやってくる。検死確認の仕事を終え、疲れ切ったサカキさんを思いもよらぬできごとが襲い掛かる。 4.「隣人」 都会ではビルとビルの間が非常に狭い場所が多々見受けられる。柿沢さんが住んでいた6階建ての集合住宅のワンルームも正にそんな条件の建物だった。暗く湿ったワンルームの窓のひとつは、隣接する隣の建物側に向いていた。そしてまた、奇しくも隣の建物の窓も同じように柿沢さん側に向いて設置されていた。ある日、柿崎さんがその窓のカーテンを開けてしまったのだが…。
  • 実説 城谷怪談 撰集十六
    440円 (税込)
    1.「千葉県某公園警備員」 長距離トラックの運転手をしている体験者の男性は、当時50代のベテランドライバー。その日も深夜長距離の運転に疲れ、運転手仲間の間で有名な、千葉県のとある閑静な住宅街にある大きな公園脇に、いつものようにトラックを停め、しばし休憩を取るつもりでいた。その公園は取り締まりの目からも逃れられ、大きな車両を駐車していても咎められることがない場所だった。シートを倒し目を閉じた時…コンコン。誰かが助手席側のドアをノックした。 2.「玄関の覗き窓」 自転車で日本を縦断中という若い青年。その年の夏、地元長崎県で不思議な出来事に遭遇した。訳あって母親と二人引っ越したのは新築でセキュリティーの整ったマンション一階の一室。盛夏の昼間、自室で彼は玄関の呼び鈴が鳴るのを二度聞いた。母親が内受けのインターホンモニター越しに対応している様子だったが、玄関に出向く様子もない。聞けば呼び鈴が鳴っているのに玄関先には誰もいないというのである。ピンポーン…。止むを得ず男性が玄関に向かうと、後ろで見ていた母親が真っ青な顔をして…。 3.「一人多い修学旅行」 怖い話をしたり聞いたりしていると、人ならぬものがいつの間にか近くに忍び寄ってきていると言われる。城谷が小学校六年生の修学旅行で出逢った怪奇。夜、先生の見回りも済んだころ、同じクラスの女子が八人連れ立ってやってきた。「怪談話を聞かせてほしい」というのである。同部屋の男子は怖い話が苦手だと言い、空になっている今来た女子の部屋で待っているという。かくして女子八人と城谷の合わせて九人で怪談話を始めることになったのだが…。 4.「重たい金縛り」 金縛りには二つのパターンが存在するという。肉体疲労と脳の覚醒からくる身体の不動。もう一つは…。城谷がまだ十歳のころ、寝室代わりの仏間に家族四人で布団を延べて寝ていたある夜中、妙な感覚に襲われ目が覚めた。両目を開いてみると嫌な怖気が全身に広がり、指先一つ動かせないことに気が付いた。そして自分の布団の足元からゆっくりと何かが這い上がってくるのを感じる。そして遂に這い上がってきたものが胸元に押し迫った時、とうとうそれを見てしまうことになる…。
  • 実説 城谷怪談 撰集十七
    440円 (税込)
    1.「ダブル不倫」 ある霊能者のもとに相談にやってきた三十代半ばの男性は、同じ社員寮に住む女性との不倫で悩んでいた。双方子供こそいなかったが既婚者であり、事情が露見すればお互いに家庭崩壊は免れず、会社にもいられなくなってしまう。わかっているものの相手との関係にピリオドが打てない。相手の女性は情念のようなものが強く感じられ、生霊ではないかとおもう気配に脅かされているというのである。早く関係を清算しなさいという先生の助言に男性は了解を示すもののなかなか行動に移せずにいた。しばらく連絡が途絶えたのちに遂に決着をつけたと報告にやってきたのだが、そこには思いもよらない結末が待ち受けていた。 2.「人面犬」 都市伝説やオカルトの噂は時代や場所を超え、姿やエピソードを変えて折あるごとに流布するようだが、人面犬もその一つだろう。だが、どの噂もそうであるように気が付くと全国で見た者、聞いた者が続出する。火のないところに煙は立たぬという…。城谷が中学二年生の晩秋、私塾への通り道には一軒の新しい家があった。 引っ越してきた中年夫婦は、その中庭で大きな白い毛並みの犬を飼っていた。その日、いつも通り件の家の前を通りかかった時、急に風が凪ぎ、時が止まったような静寂に包まれる。その犬は、鎖につながれ、こちらに背を向けたまま随分激しく餌にがっついている。何かその場を一刻も早く立ち去らなければと感じつつ、意思に反して犬に呼びかけてしまうのだが…。 3.「ここにいるよ」 いじめはどこにでもある。社会人になってもより辛らつに陰湿に、或は残酷に行われることがままある。ある会社の営業課は体育会系の部署だった。朝オフィスに出勤して来ると、朝礼後はすぐに外回りに出て暗くなるまで誰も帰ってこない。それぞれにデスクはあるが、日中のオフィスには殆ど人の姿はなかった。だがそこにひとり。キムラさんという平社員だけはいつも自分のデスクで日がな一日過ごしていた。営業の成績が悪く、上司からも見捨てられ、かといって不況のこの時代やめるにやめられず周囲からのいじめや罵詈雑言に打ちのめされながらも身動きが取れなくなっていたらしい。そしてある日、事件は起きてしまった…。 4.「長野県某宿奇談(前編)」 ツガワさんという男性の体験。彼が通っていた工業系の大学では、四年生になると卒業論文の代わりに、卒業発表という名目の旅行がある。風光明媚な自然豊かな長野県にある某宿泊施設におよそ一週間泊まり込みという企画で、予算は学校持ち、発表の時間以外は自由時間という触れ込みの人気のゼミだった。ところが大型バスでたどり着いた宿泊施設は市街地からは遠く離れた山間部にある殺風景な元は学校の校舎を改装した建物だった。初日の晩、暇を持て余した同部屋の男子六人はこっそり部屋を抜けだすと宿泊施設内を見て回ることにしたのだが…。
  • 実説 城谷怪談 撰集十八
    440円 (税込)
    1.「囁く男」 ある日、同じサークルに所属する霊感の強い先輩に呼び止められた大学生のサヤマ君は、通学に使っている地下鉄の電車についての嫌な噂を聞く。「○○駅から、前からか後ろからかは忘れたけれど三両目に乗り込むと、この世のモノではない何かに見そめられることがある。目を合わせたら、最後はダメになるかもしれないから気をつけろ」。幸いにもその駅はサヤマ君が利用する駅ではなかったのだが、その日、特別な理由から普段使わない駅で途中下車することになってしまったサヤマ君が見た駅名は。先輩から聞いた件の駅だった…。 2.「拾い物」 小池さんの二人の息子がまだ6歳と4歳だったころ、ある時期、二人の妙な行動が気になったことがあった。食事中や団らんをしている中、ふと気づくと二人の息子があらぬ方をジッと見つめ、視線の先に何かがいるように目で追う仕草を見せるのだ。ある晩、小池さんも息子たちの見ている方に目線を投げると、目の端に一瞬、動物ともボールともつかない黒い塊がスッと動くのが見えた。一瞬の出来事で塊は部屋の暗がりに消えてしまったため、ついに意を決し息子に問いただしてみると…。 3.「新居」 上原さんという女性。中学生の時分、母親と二人で郊外の一軒家に引っ越しをした。初めての引っ越し、両親の離婚、多感な少女は思春期と相まって沈んだ気持ちを隠し切れなかったそうだ。母親も引っ越してきてから元気がなく、次第に親子の距離が離れていったある日、学校から帰って来た上原さんは灯もつけず、カーテンも引かない薄暗い茶の間にまるで子供のように足を投げ出して座り込み宙に向かって楽し気に話している母親を見た。母親の周りには無残に切り散らかされた上原さんの大事なぬいぐるみの破片が散らばっていた。異様な光景に立ちすくみ身動きの取れなくなった上原さんに気付いた母親は、別人のような形相でゆっくり振り向くとしわがれた男のような声で「おかえり」と呟いた。 4.「うずくまる理由」 家のそばの廃墟に探検に赴いたのは、北沢さんが小学生だった40年ほど前の事である。友人が言うには、その廃墟で心中事件があったとか、小さな女の子が風呂場で大やけどを負って亡くなったなど、真偽のほどは定かでなかったが好奇心を刺激するには十分な噂があった。ある日の昼間、北沢さんは友達五人を連れ立ち、件の廃墟に侵入を試みた。ただの古めかしい一軒家の廃屋のようだが、二階を散策中に事態は急展開を迎えることになってしまう。
  • 実説 城谷怪談 撰集十九
    440円 (税込)
    1.「茶箪笥」 体験者のケイコさんは、亡くなった母親の遺品整理にかつての実家に訪れた。久方ぶりの古い二階家は、ひっそり閑として急激に朽ち始めている。急ぎ片づけて日帰りで帰るつもりが、遅々として作業は進まず止む無く一泊する羽目になってしまう。深夜、ふと目を覚ますと、隣に寝ていたはずの夫がいない。二階からは何かガリガリと引っ掻くような物音がする。起き出して誘われるようにやってきた階段下は、かつて死後半月誰にも見つからずに母が倒れていた場所だったのだが……。 2.「朧夜」 谷川岳などで著名な群馬県M市在住の美容師Sさんの体験談。11月半ば、彼がまだ高校生のだった頃のある夕方、空手部で汗を流した後、道場を出てから道着をロッカーに置きっぱなしにしてきてしまったことに気付いたSさんは、一人道場に引き返すこととなった。道場は学校敷地内、グラウンドの端にある特設のプレハブだった。朧月夜の人気のないグラウンドを通り、道着を確保し、いざ道場を出ようとした時、風もないのに重い鉄製の出入り口の扉が、ひとりでに閉まり、あろうことか施錠されてしまう。道場に閉じ込められたSさんが外の様子を伺うために、高い窓越しに見たものとは。 3.「一緒にいたよ」 子供の頃には大人には見えない何かが見えることがある。当時5歳の息子を持つ岩下さんの体験。ある日、仕事終わりに急いで幼稚園に息子を迎えに行くと、「お母さんが来たよ」という先生の呼びかけに「はーい」と奥のホールから元気な返事を返してきた息子の声。しかし、その直後、ホールから顔を覗かせたのはおよそ息子とは似ても似つかぬ、青白い顔をした男の子だった……。 4.「もう一度」 松下さんは都内で事務職をしているOLだ。自宅と職場の往復のみの毎日に辟易していた彼女はひょんな事から成人者向けのバレエ教室の広告を目にし、早速入会の手続きをした。その初めてのレッスンの日。買い替えたばかりの中古車のカーナビに住所を入力し急ぎ教室に向かうも、ナビに従って着いたのは、見知らぬ坂の上の一軒家。何度入力してもやはり先日訪れた教室ではなく坂の上の家に案内されてしまう。おかしいとは思いながらも、三度目に件の家に到着してしまった時、家から幼い二人の子供とその母親が出てきて車を覗き込んできたのだが。
  • 実説 城谷怪談 撰集二十
    440円 (税込)
    1.「事故物件の停電」 不動産勤務のベテラン男性、加納さんがまだ入社間もない若い頃に担当した事故物件での出来事。夏の晴れた日の午後、オーナーからの知らせに急行したアパートにはすでに建物の外にいてもわかるほどの異臭が立ち込めていた。マスターキーを使って現場と思しき三階の角部屋に立ち入ると、そこには開いたままの窓、揺らめくレースのカーテン、茶の間の横の和室の布団に腐敗の進んだ住人の遺体。確認のために更に部屋の奥に踏み込んだ時…。 2.「教育隊舎のトイレ」 城谷が26歳の時、事情あって陸上自衛隊に奉職することになった。入隊から半年の教育期間、前期3カ月が間もなく終わろうとしていたある日、勤務中にミスを犯し翌日までに反省文を提出しなければならなくなった。しかし日中は業務のためその時間が割けない。消灯、就寝後にこっそりトイレに起きだすふりをして仕上げようと画策したのだが。深夜、ペンライトと筆記具と用紙を隠し持って、隊舎の奥にあるトイレの個室に入ると、程なく隣の個室から苦しそうな呻き声が聞えてきた。 3.「彼に憑いた生霊」 霊感の強いバスガイドのナオちゃんは、二十代の頃のあるツアーを忘れられない。その日、大型バス二台で北海道の観光地を巡っていた初日の夜、先輩のバスガイドと同部屋で床に就いた直後、当時彼氏と住んでいた札幌市内のアパートに誰かが訪ねてくる夢を見た。夢の中で玄関を開けると、シャネルの五番が強く香り、黒髪ストレートでショートヘアの見たこともない女性が立っていて「彼を出して」と部屋に上がり込んでくる。うろたえるナオちゃんを尻目にその女はやがてショルダーバックからアイスピックを取り出して…。 4.「劇場の女の子」 城谷がまだ二十代の頃、ある演劇関係の先輩S氏から聞いた体験談。S氏は北海道で大手照明会社に勤めていた。若くしてめきめきと頭角を現し、或るとき大きなコンサートの照明チーフに指名される。劇場は市内でも有数のキャパシティを誇るホールである。無事にリハーサルも終わり明日は本番という土壇場で大掛かりな変更がかかり残業を余儀なくされてしまう。ギリギリまで照明チームに手伝ってもらったが、後は一人で大丈夫だと目処を立て、他のメンバーには帰るよう促すと、一人の先輩が「S、キャットウォークで作業するなら気をつけろよ」と呟いて帰って行った。

※期間限定無料版、予約作品はカートに入りません

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