この本を読むと、考古学者の一番の苦労は資金繰りなんじゃないかと思わせられる。いかに研究助成金を申請するか。アピールポイントとして発掘するのに的確な場所を見つけなくてはならない。そのために、人工衛星からの情報がいかに役に立つか。埋もれている遺跡を見つけることはできないだろうと思っていたけれど、過去は現在に色々な形で影響を残していて、植生や地形からわかることがいかにたくさんあることか。さらに著者は、考古学で過去の人々の生活を知ることの面白さと、それが未来へも繋がっていくこと、そのために現代で解決すべき問題にも触れている。たとえば女性のこの分野への進出について。盗掘についての警鐘と、それを防ぐための教育。考古学を限られた人だけのものにしないという発想から、クラウドソーシングの利用まで、話題は多岐に渡っている。放題は、考古学と人工衛星という思いがけないものを結びつける面白さがあるが、原題は"Archeology from Space - How the Future Shapes our Past”で、本書全体を表すには、邦題よりもこちらの方が適切だと思う。