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フランクリン・D・ローズヴェルトはアメリカ史上唯一4選された大統領である。在任中、大恐慌と第二次世界大戦という未曾有の危機に直面した。内政では大胆なニューディール政策を採用、外交ではチャーチルやスターリンと協力してドイツ・日本など枢軸国と戦い、勝利に導いた。ポリオの後遺症による不自由な身体を抱えつつ、いかにして20世紀を代表する指導者となったか。妻エレノアらとの人間模様も交え、生涯を活写する。
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Posted by ブクログ
フランクリン・ローズヴェルト 大恐慌と大戦に挑んだ指導者 著:佐藤 千登勢 中公新書 2626 フランクリン・D・ローズヴェルト(1882~1945)はアメリカ史上ただひとり4選され、12年の長きにわたり政権を担った大統領である ニューディール(新規巻き返し)とよばれる大胆な政策を実施することで...続きを読む、経済の立て直しを図った。 その政策は、景気回復や失業者の救済にとどまらず、国民に安定した生活を保障するという観点から、労働法や社会保障法の制定にも及び、構造的な改革が進められた ローズヴェルトは、とりわけ労働者や移民、マイノリティーの間で絶大な人気を博した リベラルな政党としての民主党の支持基盤は、この時期に確立され、今日まで続いている 気になったのは、以下です。 ・大海軍主義を信奉していたセオドアにならって海軍拡張論者になった ・グロートン校、校長のピーポディーとの出会い 公共への奉仕の重要性を説き、恵まれた境遇にある紳士の責務は不遇な人々を助け、社会の水準を高めることにあると考えていた。ピーポディーは、ローズヴェルトの生涯にわたる師となり心の支えになった ・権力は、育ちや物腰のよさだけでは獲得することができず、自ら求めなければ決して手に入らない 常に野心をもち、前に突き進まなければならない ・第一次世界大戦の時に、海軍次官へ就任したことは、その後のローズヴェルトの政治家としてのキャリアにおいて、非常に大きなステップとなった ・結局ローズヴェルトは、第一次世界大戦をはさんで、7年以上、海軍次官を務めた 海軍省という巨大な組織の中で多くの部下をもち、大戦中の海軍を動かした経験は、彼に大きな自信を与えた 大戦中の戦時経済は、政府の市場への介入を大きく認めるものであり、それが後年、ニューディールのモデルになったとも言われている ・ローズヴェルトは失業者に直接現金を給付して生活を支援するやり方は、短期的には意味があるが、救済への依存を高め、結果として怠惰を助長することになると考えていた そのため、公共事業を通じて政府が雇用を創出し、失業者に仕事を与える仕組みをつくることを重視した ・第1次政権:ローズヴェルトは、党派や派閥にはこだわらず、自分で適材適所だと判断した人物を閣僚に任命した ・ローズヴェルトは、ラジオ放送を巧みに利用した最初の大統領だった 就任後は、炉辺談話というラジオ番組をもち、そこで政治をかたった その時々の重要な政策を取り上げて、国民に説明した ・農民が貧しければ、工業製品を買うことができず、都市に住む者の生活も苦しくなる 農村が富まなければ景気回復はありえないというのがローズヴェルトの口ぐせだった ・第一次ニューディール:農業、工業の復興による雇用創出のための政策 ・第ニ次ニューディール:生活が困窮している失業者や高齢者、農民、労働者を対象とした政策 ・ローズヴェルトが政策を左旋回させたのは妻である、エレノアの影響が大きかった ・ファーストレディというのはホワイトハススでお高く留まっているものだと思っていた国民は、炭鉱にいって鉱夫と話したり、女性飛行士と空を飛んだりする記事にお泥器、エレノアに親近感を抱いた ・連合軍が戦局を好転できた原因は、アメリカの生産力の拡充においてであった アメリカのGNPは1939年の886億ドルから、1944年には1350億ドルへと増加し、GNPに占める軍需関連の生産は、1943年には40%にまで上昇い、ピークを迎えた ・軍需生産が拡大していく中で、新たな労働力として期待されたのは、黒人をはじめとするマイノリティや女性だった ・ローズヴェルトは、参戦前の1941年6月に大統領令を出して、軍需産業と連邦政府で雇用されている労働者を人種、信条、肌の色、出身国によって差別することを禁止した ・カイロ宣言 日本が無条件降伏するまで戦い続けること、日本が1914年以降獲得した太平洋の島々を放棄し、中国からの領土(満州、台湾、澎湖諸島)を返還し、朝鮮を独立させることを求めるものであった ・ヤルタ会談 大統領の4度目の就任式の2日目、ローズヴェルトは、地中海のマルタ島でチャーチルと会い、そこからヤルタへ向かった スターリンに対日参戦を促し、ドイツ降伏後、3か月以内に参戦することを約束した そして、裏では、ソ連の外モンゴルの領有をみとめ、樺太と千島列島をソ連のものにすることが極秘に合意された ・しかし、帰国後、4月12日に脳内出血をおこして帰らぬ人ととなる。 大恐慌から、第二次世界大戦までの難局に対処してきたローズヴェルトは、現役の大統領のまま、この世を去らなければならなかったのである。 目次 はじめに 第1章 名門に生まれて 第2章 政治の世界へ 第3章 大恐慌に立ち向かう 第4章 ニューディールの新たな展開 第5章 第二次世界大戦の舞台へ 第6章 最高司令官として 終章 ローズヴェルトの遺産 おわりに 主要参考文献 フランクリン・ルーズヴェルト関連年表 ISBN:9784121026262 出版社:中央公論新社 判型:新書 ページ数:288ページ 定価:880円(本体) 2021年01月25日発行
第二次世界大戦中の偉大な大統領、フランクリン・ローズヴェルトの生涯を描いた良書。 経済危機や戦争といった非常時、有効な意思決定がどのようになされたのかを知ることができるのは興味深い。 「専門家に議論を戦わせ最後に判断する」といった点や、路辺談話のように国民に分かりやすく説明しコミュニケーションを...続きを読むとる、といったことは、「決断の本質」や橋下徹さんの「決断力」「実行力」などにもその様式が現れており、良きリーダーとなるために身につけるべき必須の方法であるともいえる。 その他、妻との微妙な夫婦関係や、人権よりも政策を優先させれるといった、政治史には出てこない面も記述されており、歴史の一ページを知るといった目的で読んでも有用な知見が得られるように思う。
【彼の指導力を支えたのは、言葉の力であり、高いコミュニケーション能力で自分の考えを国民に伝え、信頼を勝ち取った】(文中より引用) アメリカ史上最長となる12年にわたって大統領職を務めたフランクリン・ローズヴェルト。大恐慌や世界大戦といった未曾有の危機を、彼は指導者としてどのように乗り越えていったの...続きを読むか......。著者は、筑波大学で教授を務める佐藤千登勢。 コンパクトにローズヴェルトの半生を知ることができるとともに、彼のどこが後世的にも評価されているかが把握できる良書。機を熟すのを待つことができただけでなく、その機をコミュニケーション能力によって手繰り寄せることに長けていたんだなと感じました。 最近は「ルーズベルト」ではなくて「ローズヴェルト」が主流なんだろうか☆5つ
アメリカ史上唯一4選され、第二次世界大戦を戦ったということで有名なのに、意外とこの人物のことは知らなかった。 1640年代からニューヨークに住んだオランダ系のローズヴェルト家の家系から、過保護な母、叔父への憧れ、ハーヴァードでの学生生活、エレノアとの馴れ初め、政界入り、ポリオ、ニューヨーク州知事、ニ...続きを読むューディール、第二次世界大戦など、FDRの生涯がわかりやすくまとまっている。 日米交渉に関しては、米国を大戦に引っ張るために日本を挑発したというイメージを持っていたが、この本によるとそれは意図的なものではなかったようだ。日系人の強制収容にも積極的ではなく、エレノアは強く反対していた。 FDRは経済政策等に関しての批判は多いが、国民に対する指導力など、今までもこれからも米国大統領のモデルとなり続けるであろうと結ばれている。
偉大なアメリカ大統領とされながらも毀誉褒貶が激しく、また日本人にとっては感情的なわだかまりもある人物、フランクリン・ルーズベルトの評伝。 もう1人のフランクリン姓を持つ大統領、セオドアの遠縁である事は知っていたが、妻エレノアがセオドアの姪であることまでは知らなかった。オイスター・ベイ、ハイド・パーク...続きを読む両家の血筋を知ると、アメリカがかなり血統を重要視する国柄である事がわかる(わざわざフランクリン家を挙げなくてもフォードやケネディ、ブッシュ家を見れば一目瞭然でもあるが)。 政策は内政・外交共にかなり一貫性がない。ただ彼が大統領を務めていだ時期は20世紀最大の乱世であり、時勢に上手くフィットした大統領なのだろう。第一次ニューディールの応急処置ぶりは見事の一言である。その一方で1938年不況などの影響もあり、結局完全に景気が元に戻ったのは太平洋戦争突入後となったため、第二次以降のニューディールについては評価が別れるところだろう。 外交に関してはチャーチルやスターリンに振り回されたような書き振りではあるが、その点についてはやや疑問も残る。少なくとも戦争後半に関してはチャーチルよりも強硬派だった筈だが…。あと真珠湾を予測していなかったことや日系人隔離政策を周囲の圧力で仕方なく行っていたのかについても一考の余地が残る、というよりフランクリン寄り過ぎる文献から話を集めているのではないかという気がする。
ローズヴェルトの生涯をコンパクトにまとめて読みやすい本ではある。しかし、彼の残した業績は問題が大きすぎて、その後の世界とアメリカの在り方に大きな禍根を残すことになっている。この点について全く触れていないのはどうしたことであろうか?
歴史に「たら」「れば」はないが、もしフランクリン・ローズヴェルトが第二次世界大戦後まで生きていたら。原爆投下はなかったか?どうだろう。
FDRについて、内政中心にざっくりと学べる。全体的には良著で政策の方針や結果を平易に記述しているが、ややもするとそれらの行動を一つの筋書きに収束させすぎるきらいがあった。しかし、FDRを学ぶ入門書としては十分に思う。
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