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彼を抱きしめると、俺はこの世のすべてを手に入れたような気がした。
光と影が渦巻く大都市ソウル。
最低賃金のバイトをしながら、くずみたいな文章を書きなぐって暮らす〈俺〉は、どれだけ派手に遊んでも、消せない孤独を抱えている。
そんな日々のなか、梨泰院(イテウォン)のクラブでバーテンダーとして働くギュホと出会い、愛を分かちあう。
しかし〈俺〉には、人に言えない〝秘密〟がある……。(「大都会の愛し方」)
喧騒と寂しさにあふれる大都会で繰り広げられる多様な愛の形。
さまざまに交差する出会いと別れを切なく軽快に描く。
韓国で新時代の文学として大きな話題を呼んだベストセラー連作小説。
【もくじ】
・ジェヒ
・メバル一切れ宇宙の味
・大都会の愛し方
・遅い雨季のバカンス
・あとがき
・訳者あとがき
※アプリの閲覧環境は最新バージョンのものです。
Posted by ブクログ
ギュホへのとても深い愛情と他愛無くも眩しい想い出が語られる4つ目の話は、切なくて胸がギュッと締め付けられる。ギュホが現れないかと期待しながら読んでしまった。大切な人と過ごす瞬間の尊さ、煌めきの描写が本当に素晴らしいし、恋の始まりはロマンチックでときめきまくりでした。その反面、疲労、孤独や寂しさなどもしっかり描かれているのがリアルでとても良かった。オ・ヨンアさんのあとがきにある"明るいさみしさ、前向きになるほかないさみしさを知る作家"という表現がまさしくその通りで素敵です。"パク・サンヨンの大都会の愛し方とは、おそらく空間に伴う感情と出会った人との瞬間を克明に記録することであったのかもしれない"。主人公の軽い語り口調や、人生を受け入れている感じが切なくも救われる面白さがある。クマ吉とうさみちゃんが出てきた時は笑ったし、嬉しかった。1人の人生と感情の変遷を見れたという心地良い満足感があります。良い物語を読みました。
Posted by ブクログ
映画が今年ベスト級に良かったので、原作も。若いころに読んでいたら確実に多大な影響を受けていただろうな…という傑作だった。映画は原作をとてもていねいに扱っていてそこも良かったのだけれど、やはり原作は当事者ならではの生感や踏み込みが段違いで、激烈にエモかった。
これが自伝じゃなかったら天才だよ、と思わせるようなリアルなディテール。けんかのエピソードがどれもとてもいきいきとしてチャーミング。口が悪くて皮肉屋だけど情が深い主人公の、都会人らしい気質。どんな人ともずっとそばにはいられないという予感が通底しているので、すべての言葉がたまらなく切ない。
バーで読んでいたのだけれど、何度も人目をはばからず号泣しそうになってしまった。わたしは「メバル一切れ宇宙の味」が好き。
Posted by ブクログ
これは私たちの、私の物語。
あとがきにあるように、多くの人から寄せられた声、クィアっていったらその通りなんだけど、無視されて、逆に吊し上げられて、罵られて、うるせー!でもそんなの関係ないって、生きてる、恋して、出会って別れる孤独な私たち。
連作でありながら、一人称の「俺」(ヨン)はすべておなじ存在であると同時に異なる存在でもあるという。自嘲ぎみだけどいちばんくつろげる場所を見つけてのびのびして、絶対にその子を、その場所を守ろうとする俺。いたいけな風で、ちょっとかっこ悪いけどそこがグッとくる年上にいかれる俺。イケイケゴーゴーで、ナンパなんかしちゃって?運命?と出会う俺。ひとりになって、おなじように寂しいおじさまをひっかけて、でもやっぱり運命を失った穴から、沈み込んでしまう俺。
痛くて、悲しくて、でもなんだか笑っちゃう。
とにかく訳がいい。軽やかで読みやすくって。大好きな、イ・ランさんの『悲しくてかっこいい人』のオ・ヨンアさん。他の翻訳本も読みたいな。
ジェヒ がとにかく痛かった。なんだか思い出の、いちばん柔らかいとこにぐっときた。
大学時代その頃のわたしが、わたしたちがここに描かれていた。これが青春。これを青春と呼んだ…。なんでこんなに、リアルで、宝物みたいな小説が書けるんだろう。その痛みをほんとうに知っているからなんだろう。なんて安心できるんだろう。
海外の方の動画で知って、映画からドラマを調べて辿りついた原作の、『大都会の愛し方』。本当に読めて良かった。
とつぜんのギャクマンガ日和に吹き出したが。
Posted by ブクログ
久しぶりに会ったらきっとお互い「お前超老けたね」って言い合ったりしちゃうんだろうな。大学の近くのモールの喫煙室で、講義終わりにチューハイ片手に馬鹿話に興じていたのが、もう随分昔に感じちゃう。
そんな感じで、本作第一編目を飾る「ジェヒ」は私に大学の友人を思い起こさせた。今となっては彼はもう結婚してしまって、すっかり疎遠になってしまったけれど。特に共通の趣味があるわけじゃないのに仲良く毎日つるんでたなんて、今考えると若かったからできたのかもしれない。だってそうでしょう?今も関係が続いている友人なんて、大体が映画や音楽、ファッションの趣味でつながっている人ばかりだ。
ジェヒと主人公の男の共通点といえば、どちらもぺらっぺらの貞操観念の持ち主だということくらいかもしれない。お互いいつも男の話をして、ゲラゲラと笑って過ごす。まるで学生時代の私達のように。そして二人とも、とんでもなく口が悪いのだ。語り口もいい意味で軽薄で、飾らない言葉が並んでいく。なんとなく日本よりも「オカタイ」印象がある韓国の作家の、こんな文章を読むのも斬新で、大嫌いな紙の本だったけれどすいすいと読めてしまった。
幸いなことに私の学生時代は男に関して言うなれば、ジェヒのようなドラマは起きなかったけれど(他の意味でのドラマ―それもとびっきりヘビーなやつはあった)、読み終えた時に訪れた寂寥感は、学生時代の親友の喪失に気付かされたからかな?あの頃の私も彼の好きだった女の子たちを、HDDのように記録していた。すぐに好きになって舞い上がっては振られて落ち込んで、超恋愛脳だった彼が今となっては一児の父だなんて信じられないくらい。そうやってジェヒも違う人生を歩んでいくんだろう。私も、主人公もすっかり取り残された側なんだ。
Posted by ブクログ
「大都会の愛し方」が読み進めるにつれ、最高に胸が痛くて涙が突き上げて来そうだった。求めてはすれ違っていく"俺"とギュホとの時間が愛おしい。不器用な2人の愛情の塊に涙が出そうだった。
本当に好き本当に大事だった、といつまでも過去を覚えてるリアリティーが切ない。ソウルを生きる爆風の中にいながら"俺"の片割れへの思いがスンッと静寂に感じられる丁寧さが沁みた。
映画にもなった「ジェヒ」は、テンポよく"俺"の入り口というか、"俺"の大きなシルエットを伝えてくれている。
4つのエピソードに分かれているが、ジェヒが自分の片割れだったと言う告白の書のようで、切ない。軽快なのに、切ない。
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小説・文芸
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