はじめての認知療法 (講談社現代新書)
by 大野裕
とくに、うつ病のときには考え方が極端に悲観的になって自分を苦しめています。だからといって、「自分の考え方が悪いからうつ病になっているのだ」と考えないように注意してください。これもまた、自分を責める悲観的な考え方の典型例です。悲観的に考えるというのはうつ病の症状です。うつ病の人が好んでそのように悲観的に考えようとしているわけではありません。
このストレス評価表を見てもうひとつ気づくのは、良い体験をしたときも私たちはストレスを感じるということです。結婚は五〇点で解雇よりもストレス度が高くなっていますし、妊娠(四〇点) や出産(三九点) も強いストレスを感じるとされています。たしかにこれらは良い体験なのですが、新しい環境の中で新しい人間関係を作り上げていかなくてはならないというストレスもあるのです。しかも、こうした体験はまわりの人たちから祝福されるために、つらい気持ちを抑え込みがちになるので注意が必要です。そのためにも、自分の考えや気持ちを客観的に考える認知療法が役に立ちます。認知療法の創始者のアーロン・T・ベック博士が『Love is never enough(愛だけでは決して十分でない)』という本を書いています。夫婦にとって愛はもちろん大事だが、お互いの気持ちや考えを理解して助けあっていけるような冷静さも大切だという内容の本です。