弥生時代の歴史

弥生時代の歴史

935円 (税込)

4pt

4.0

AMS炭素14年代測定に基づき、水田稲作の開始は従来よりも500年早かったとした国立歴史民俗博物館の研究発表は当時、社会的にも大きなセンセーションを巻き起こしました。発表時には当時の常識からあまりにもかけ離れていたために疑問を呈する研究者も数多くいましたが、その後、測定点数も4500点ほどまでにと飛躍的に増加を遂げ、現在では歴博説の正しさがほぼ確定されています。では、水田稲作の開始が500年早まると、日本列島の歴史はどのように書き換えられるのでしょうか。一言で言えば、「弥生式土器・水田稲作・鉄器の使用」という、長らく弥生文化の指標とされていた3点セットが崩れ、「弥生文化」という定義そのものがやり直しになったと言うことです。この3つは同時に導入されたものではなく、別々の時期に導入されたものでした。例えば鉄器は水田稲作が始まってから600年ほど経ってからようやく出現します。つまりそれ以前の耕作は、石器で行われていたのです。また水田稲作そのものの日本列島への浸透も非常に緩やかなものでした。水田稲作は伝来以来、長い間九州北部を出ることがなく、それ以外の地域は依然として縄文色の強い生活様式を保持していました。また東北北部のように、いったん稲作を取り入れた後でそれを放棄した地域もありました。関東南部で水田稲作が始まるのは、ようやく前3~2世紀になってからでした。とすると、これまで歴史の教科書で教えていたように、何世紀から何世紀までが縄文時代で、その後に弥生時代が来ると単純に言うことはできなくなります。水田農耕社会であるという弥生「時代」の定義は、ある時期までは日本列島のごくごく一部の地域にしか当てはめられなくなるからです。本書は、このような問題意識の元で「弥生文化」が日本列島に浸透していく歴史を「通史」として描く初めての本です。(講談社現代新書)

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弥生時代の歴史 のユーザーレビュー

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    Posted by ブクログ 2017年04月27日

    炭素14年代測定の精度が向上し、結果、弥生時代の始まりが500年早まるということになったとのこと。
    しかしながら、従来の弥生情報の中で学説を唱えてこられた方々にはなかなか受け入れられない現実もあるとのこと。
    筆者は、500年早まったということを受け入れ、縄文から、弥生、古墳時代へ変遷していく日本の古...続きを読む

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    Posted by ブクログ 2015年09月01日

    紀元前10世紀にさかのぼる稲作文化の伝来と弥生時代の成立を最新の科学技術の成果をもとに読み直す。川の中流に集落を作っていた縄文文化の在来人と下流に集落を作った稲作文化の渡来人。その交流と時間をかけた東への伝播。村の成立。寒冷化と国の成立。銅鐸、銅矛の伝来と鉄の伝来。鉄を手に入れるために海を渡る弥生人...続きを読む

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    Posted by ブクログ 2018年09月15日

    弥生時代に出土された土器、青銅器、鏡を基にその時代の様子を考えていくところはとても面白く感じられた。歴史の醍醐味だと思う。水田耕作、農耕社会、鉄器、吉野ケ里遺跡、原の辻遺跡、糸島、くに、祭祇的、政治的、板付遺跡、登呂遺跡、縄文時代も弥生時代も出土するものが少ないからそこから想像していくところがとても...続きを読む

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    Posted by ブクログ 2017年03月29日

    藤尾氏は国立歴史民俗博物館において、AMS炭素14年代測定で弥生時代の開始を500年遡らせた立役者であり、2014年にあったという「弥生ってなに⁉」展の中心人物である。それらの成果をコンパクトにまとめたのが、この一冊だと思う。

    遠く岡山の地に居て、藤尾氏のこの10数年の研究をほとんど追ってこなかっ...続きを読む

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    Posted by ブクログ 2016年01月09日

    <目次>
    プロローグ  弥生前史~弥生開始前夜の東アジアと縄文晩期社会…コメの出現
    第1章  弥生早期前半(前10世紀後半~蝉世紀中ごろ)…水田耕作の始まり
    第2章  弥生早期後半~前期後半(前9世紀後半~前5世紀)…農耕社会の成立と水田稲作の拡散
    第3章  弥生前期末~中期前半(前4世紀~前3世紀...続きを読む

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    Posted by ブクログ 2018年06月19日

    本を読む楽しみには、知らなかった事を知る、分からなかった事が分かるという事がある。この本を読んで、知らなかった事が、分かった、とはならない。分かってたつもりの事が、分かってなかった、となる。分からないことが分かるのは貴重だ。しかし、欲求不満にはなる。
    炭素14年代測定の成果に依拠した、弥生時代史。考...続きを読む

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    Posted by ブクログ 2018年10月31日

    水田稲作が日本に伝わるルートは、朝鮮半島南部経由説で考古学者の意見は統一されている。朝鮮半島南部で水田稲作が発展すると、身分の差が顕在化して社会の内部に矛盾が生じ、それを逃れ出た人々が九州北部に水田稲作を伝えた。土器に付着した炭化物などのC14年代測定から、弥生時代の開始はBC10世紀後半と考える。...続きを読む

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    ネタバレ

    Posted by ブクログ 2015年09月23日

    習ったものとは結構違ってきているんだなあ。弥生は結局関東より西だけ、稲作は一旦東北まで上がるがそれと弥生はリンクしきらない、クニの成立は環壕集落、威信財の時代から実用財の時代へ、などなど。そうか、東北と沖縄諸島には弥生がないんだ。

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