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これまで「ヒストリア・アウグスタ」などの、多くの歴史書により、堕落した無能な皇帝と不当な評価を受け、その実像を歪められてきたローマ皇帝ガリエヌス。しかし、実際は父皇帝ウァレリアヌスの、ペルシャによる虜囚、更に蛮族やパルミラの僭称女王ゼノビアなどの数多の外敵の侵攻、 更に相次ぐ将軍達の帝国内での反乱などの苦難に満ちた治世の中、精力的に戦い、各地の治安を回復した。そしてその後のローマ帝国の基盤となっていく、新たな統治形態創設と軍制改革を行なった、精力的な改革者。また彼はそのギリシャ文化愛好、更にしばしば反元老院的政策を行なったことでは、ハドリアヌスとも重なる。更にやはりガリエヌスと同じくギリシャ哲学を愛好し、また円満な夫婦関係であった点などは、マルクス・アウレリウスと重なる。
そして彼がローマ帝政の創始者アウグストゥスと共に手本として仰いでいたのが、ハドリアヌスでもあった。
この巻では、ポストゥムスの簒奪と「ガリア分離帝国」の出現。そして帝国東方諸属州防衛のための、パルミラのオダエナトゥス起用。また、その単独治世開始から相次ぐ反乱や蛮族の侵入に対し、ほとんど息つく間もなく、精力的に鎮圧や撃退を試みているにも関わらず、四世紀の歴史書「ヒストリア・アウグスタ」を代表的なものとして、なぜ皇帝ガリエヌスは、いわば女々しい暴君として、ここまで否定的に描かれているのか?という謎の解明。そして彼の治世中に数多く発行された、多種多様な種類のコインやその肖像などを用いて行われた、ガリエヌスの皇帝としての巧みなカリスマ性のプロパガンダについて。
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