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Posted by ブクログ
フランスの売れっ子作家と聴き、興味深く読み始めたが、幕開けが奇妙かつ派手な事件、その舞台となるのが冬のピレネーの山村、とアクロバティックで一気に引き込まれる大スケール&アクション・ミステリーであった。これがデビュー作ならフレンチ・ミステリーのスターダムに一気に輝いたというのも容易に頷ける。
連続する猟奇殺人にしても、山麓の村にある重罪犯を集めた研究所の存在にしても、相当に不気味である。腕利き警部マルタン・セルヴァスの活躍の中に挿入されるのが、その不気味な研究所にやってくる女性心理学者ディアーヌ・ベルクの章である。事件と並行して存在感を増す連続猟奇殺人犯と研究所の存在が、気になって仕方ない。
注目される連続殺人犯は、ジュリアン・ハルトマン。死体を残さないが、40人以上の女性の不審死の容疑者とみなされる。またシリアルキラーでありながら元検事、という特異な知的犯罪者の容貌を持つところなど、心を操る知的犯罪者としての側面から、どうしてもハンニバル・レクターを連想させる。この作者、よくぞ勇気ある勝負に出たものだ。
しかし彼を考慮に入れずとも、ロープウェイの山頂駅で最初に発見される皮をはがされた首なし馬の
死体という劇場型バイオレンスに始まる連続猟奇事件のミステリとして十分にサービス性が満点なのだ。二体目の殺人も、渓谷に発見されるが、劇場型であるところ、まるで横溝正史か? と懐かしささえ覚える。
派手な事件に、複雑に絡む人間関係。裏側に潜む真実はかなり深い部分に、そして時間軸を掘り下げてゆくことで真相は近づく。多くのミスリードの向こうに見えてくる真実。つまり語り口、プロットともに優秀な作品だからこそ、優れたエンターテインメントとしての完成度を誇る。ミステリーにとどまらぬ大自然を使った昔懐かしい冒険小説的魅力も兼ね備えているところがもしかしたら、最大の魅力なのかもしれない。
それにしても巻末解説においてこの作家の作品を、しかもセルヴァス警部のシリーズを、ぼくは既に
読んでいた。そして楽しんだということに気づいてしまった。シリーズ三作目の『魔女の組曲』! そう、これは一気読みの面白さであったが、セルヴァス警部としての個性は目立たなかった。運動神経オンチで、銃の扱いも乗り物も苦手。恰好悪いが事件の真っただ中に突入してしまうこの中年刑事は、本作では、とても存在感濃厚である。『魔女の組曲』は、ストーリーと被害者のほうが目立ち過ぎて、警部は救世主ではあるのに、狂言回し的な地味な役柄なのであった。
それにしてもストーリーテリング最高の作家に出会えました。とりあえず、フレンチ版ジェフリー・ディーヴァーと呼んでおこう。
Posted by ブクログ
ベルナール・ミニエ『氷結(上)』ハーパーBOOKS 。フレンチ・ミステリー。物語はピレネー山脈の水力発電所で発見されたサラブレッドの惨殺死体という突拍子もない幕開けから始まる。しかも、現場から見付かったDNAはヴァルニエ精神医療研究所に収監されている猟奇殺人鬼・ハルトマンのものだった。そして、次に起きた殺人事件の現場からもハルトマンのDNA が発見される。マルタン・セルヴァズ警部による捜査とヴァルニエ精神医療研究所にスイスから赴任して来た心理学者・ディアーヌ・ベルクの二人の視点で物語は展開していく。衝撃的な事件の割りにはストーリーはゆっくりとしたペースで進んでいく。恐らくはヴァルニエ精神医療研究所に隠された秘密が事件に関係しているのではないかと思うが、この先、どうストーリーが展開するのか全く見えない。
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