狼がやってきた日

狼がやってきた日

小説・文芸
447円 (税込)

2pt

5.0

昭和四十八年の石油ショックは戦後最大の危機であった。当時の状況を、未発表の資料や当事者の証言を基軸に再現し、危機状況においていかに行動すべきかを考えるドキュメント。

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感情タグBEST3

    Posted by ブクログ

    昭和に起きた石油危機について書かれた、渾身のルポルタージュ。

    素晴らしく濃密な本だった。
    40年以上前に書かれた本だが、今読んでも色あせない多くの学びがある。

    まず驚いたのは、現在の社会状況と重なる部分が非常に多いこと。
    人間の行動なんて、時代や社会が変わっても、そう変わるものではないのかもしれない。

    特に大衆がパニックに陥る心理については、多くの共通点があるように思う。

    オイルショック下では、多くの企業や役人が、大衆やマスコミに吊るし上げられた。
    だが後の検証で、そのほとんどは的外れな批判であることが分かっている。

    結局のところ、「諸悪の根源」という手頃な生贄を欲していただけ、というのが真実だろう。
    これは大衆の普遍的な心理であることを認識し、大いに反省するべきだ。


    また、政治家や官僚、石油会社の人たちの奮闘には心を打たれた。

    国が不安定になると、とかく政治や役人は叩かれがちだ。
    しかしオイルショックという前例のない危機に対して、国民の生活を守るために、身を粉にして働いた人たちが大勢いた事は事実だ。
    何が正解かも分からず、準備する時間もなく、途方もないプレッシャーを感じながら。

    そういった困難な状況の中で、何とかアラブ諸国とのタフな交渉を乗り切った点は、評価に値すると思う。

    確かに日本側の対応は、100点満点とは言えない。
    また、多くの問題を残してしまったことも事実だ。

    しかしそれでも、この時に彼らが最低限「対応を間違えなかった」から、その後も豊かな生活が維持できている。
    その点について、我々は少なくとも敬意を持つべきではないだろうか。

    間違っても、ストレス発散のために、ロクに調べもせず「政治が悪い」と叩いていい存在ではないはずだ。


    自分が本書を手に取ったのは、今起きているアメリカ・イラン問題について学ぶためだ。
    過去を振り返ることは、未来を知るための貴重な財産になる。

    全体的な印象としては、とても丁寧に、公平に取材されていると感じた。
    単純に「国民は愚かだ」「マスコミが暴走した」で片付けずに、その先を見つめようとする目は、とても真摯なものだと思う。

    また本書には、慧眼とも言うべき、鋭い指摘がいくつも残っている。

    ・日本人は、まるで資源を持たないのに、エネルギーに関する関心が薄すぎる。
    ・アメリカが石油備蓄に力を入れるようになれば、いずれエネルギー問題は再びやってくる。
    ・省エネルギー化や代替エネルギーの開発に、もっと本腰を入れるべきではないか?

    これが40年以上前に書かれたものだということには、驚くばかりだ。

    「喉元過ぎれば熱さを忘れる」に陥らないために、本書のようなルポルタージュを読むことは、大いに役に立つだろう。

    0
    2026年06月15日

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