Posted by ブクログ
2014年06月22日
第一話をWebで無料公開し、残る一巻分を丸々書き下ろしたという少々特異な経緯で発刊に至りました。
その後、同一世界で別の学生を主人公にした『彼女になる日 another』の連載も決まるなど、反響はなかなか好評であったようで、一応完結したこちらも連載が開始され、続刊が出ることが決定されました。
...続きを読む そんなわけで今後巻数表記のされていない、版数の若い単行本を持たれている方は自慢されてください。このようなことはなかなかないそうなので。
この世界では男女の数/バランスを均一に保つため、後天的に性転換を起こす現象「羽化」が起こり、法整備や社会認知も進んでいます。
で、今作はその一ケース。そんな現実を割と(表面的には)あっさり受け入れて、男言葉で小ざっぱりした「間宮」と、そんな元彼との好敵手としての親友、女がニガテでめんどくさい性格の「三芳」との関係を描きます。
で、この作品何がいいかと言えばバランスがいい。
漫画としても「TSF(性転換)」としても。
現実の延長線上で深刻になり過ぎないくらいにはシリアス、コミカルな調子もちゃんと出せる。
男から女への変化における立場や意識の違い、そこから生まれる男女間の変遷を何があってこうして、と言った流れを一巻と言う区切りの中で出来るだけ丁寧に詰め込んであります。
少女漫画的なお色気もあるけれど、ビビッドでシャープな絵柄が過度に傾くのを許さない。それでいて、時折ゾクゾクさせる様な線を書いてくるのですから。
積極的/消極的な二人。
男→女の肉体と精神のお互いの認識のズレはこの手のジャンルではお約束ですが、思春期から青年期への過渡期と言う年代において茶化さず真摯に描写されています。
果たして普通の男女の恋愛なのか、性別を超えた結びつきなのかは最後になっても結論は出なかったのかもしれませんが、私はこの話を好ましく思います。