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傷つきやすい若者たちの心の奥底を著者会心のエスプリをきかせて描出する傑作アンソロジー。話題作全五編を一挙収録。
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Posted by ブクログ
当時、今で言う所のBL的なものを摂取しようと思うと、元祖のJUNEか、プチフラワーに掲載される作家さんを張っているしかない、と言う状況だった。プチフラワーと言う雑誌は、それだけ当たりが来る確率の高い雑誌だった。少女漫画のジャンルのくくりに独自性があって、好きな人間にはタマランものがあった。西炯子さん...続きを読むのコミックスは出る度に買った。今回再読して、何より記憶に残っていたのは、1話1話と言うよりは、読んだ当時、舐めるように見た「止め絵」だった。おタケさんの丸ピアスの描き方とか、もう、本当に穴が開くほど見つめた。 今読むと、現在自分が読んでいるBL作家さんの絵の方が抜群に上手い、上手いが、当時、一見線が安定しない危ういものも含めて、西炯子さんの作品の繊細な所がぎゅっと詰まっていて、何度も何度も読み返した。いつしか、そう言う繊細なものを求めるより、もっと即物的なものを求める様になっていって、JUNE的なものから一旦心が離れた時に、さほど惜しいとも思わずに古本屋に売ってしまったものを、今買い直したくなったのは、回顧趣味ではなくて、色々読んで原点に戻ったと言う事だろうか。 「犬とあなたと春風と」乱暴者の一徹と、一徹の腰ぎんちゃくな千春との関係性はくされ縁の友人どまりでしかないが、惰性で始まったものが継続して行く様がタマランかった。 「ここへおいで」おタケさんの長い髪にノブの指が絡まっているコマを何度見つめ直した事か… 「水が氷になるとき」最後の、きみはやさしい人間だね、って言われた時のおタケさんの凍りつく様な表情にぞくっとした。本人は息してちゃんと生きてるんだけど、周囲の人間に「手の届かない皆を喜ばせる楽しい人」と言うか、みんなの○○さんになっちゃって、1対1の関係性に踏み出して貰えない人気者の孤独を持ってるキャラだなー、って。思えば、眼鏡キャラが今ほどもてはやされてなかったと思う中、長髪で眼鏡かけて美形なんかよ!!って驚きを感じた、当時。見てすぐに分かる美形しか解しない稚拙な脳みそしかなくて(筋金入りのメンクイでした・笑)
天才・西炯子の初期短編集。JUNEに描いていた頃の彼女のラインは粗いけど神がかっていたよなあ。この頃は大好きでした。
途中でふと出てきた「本を読めば読むほど自分がからっぽになっていく気がするね」という台詞が読み終わった後も残っていた。主人公の心の多面性が好き。
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