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「ロシアで過ごした3年5ヵ月の間に、息子は3歳になり、モスクワで娘が生まれた。戦争は終わらなかった」
日常を覆っていく重たい空気を、じっと見据えるために。戦時下の生活を、小さな主語で記したエッセイ集。
「すごい内容でした……。
優しさと、美しさと、生活と、なのにいかんともしがたく戦争であることと、
その感覚がループして胸に迫ります。」
──古賀及子さん推薦
【目次】
予感
スイカの歌
越冬
イタリア料理店でボルシチを
カモメの飛ぶ空
暗夜に
あか、あお、きいろ
聖母の右頬
ラリーサとミーチャ
ちいさな靴下
こどもが絵筆をにぎるとき
前へ
あとがき
【あとがきより】
……
ウクライナ侵攻がはじまって以来、ニュースにもSNSにもロシアにかんする言説は溢れています。もちろん、多様な意見が飛び交っていることじたいは健全な状況でしょう。でもわたしは目眩を覚えることがたびたびありました。
たいていの議論では「ロシア」か「ウクライナ」が主語にされて話が進められていくからです。大統領や政府高官の言動ばかりが取り沙汰され、現地のひとびとが置き去りにされているように感じていました。たしかに、ロシアやウクライナの市井のひとが当事者としてとりあげられることはあります。しかしその場合でも、境遇の過酷さは伝わってきても、ひととなりや感情の機微まで細かく描写されることはほとんどありません。それに、モスクワにはまるで「ロシア人」しかいないかのように思われている発言を目にすることもよくありました。
わたしはまさに渦中のモスクワにいる。ちょっと外に出れば、今日もだれかと顔を合わせる。それぞれの名前とさまざまな来歴をもったひとたちとのささやかな関わりのなか、小さいけれどひとつの世界をたしかに生きている。それなのに、わたしが暮らしているはずのモスクワは、目に入ってくる言説空間のどこにもない。
そうしたギャップにいつも、なにがほんとうなのか分からなくなり、じぶんの視野の狭さにおそろしくなっていました。それが息苦しさの一因でもありました。
しかしそうやって「わたしにはなにも分からないのだから、なにも言うべきではない」と口を噤んで過ごしているうちに、このような状況だからこそ、とるにたらない日常を書き留めることが大切なのではないか、と気づきはじめました。
……
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Posted by ブクログ
あまりに美しい表紙。モスクワの空の青。目を逸らしながら、普通の暮らしをしようと思えばできてしまう、攻撃する側の空の青。
何かに蓋をするような普通の暮らしがかえって残酷に感じるモスクワでの生活。非日常の中で日常を演じるような不安な日々。
ウクライナ侵攻が始まったあとのモスクワへ小さな子を連れて移住する。どんなに心細かっただろう。でも、その子供がどれだけ救いになっていたのかが端々の描写から伝わってくる。
日々のことを綴っただけのエッセイなのに、出版するまでにどれほど苦労があったのかを思うと気が遠くなる。これでも、書けないことがたくさんあったんだろうな。
Posted by ブクログ
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わたしはこの日、
モスクワの空は
どんなに
青いときでも
不自由なのだと
思い知った。
「息子は三歳になり、
娘が生まれた。
戦争は終わらなかった」
戦時下の生活を、
小さな主語で記した
エッセイ集。
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金曜日の仕事帰り、ご褒美として立ち寄った書店。
とても綺麗で目を引く表紙に、思わず手に取りました。
夫の仕事の関係で、
モスクワに住むことになった著者。
小さな子どもを抱えて。
2022年8月から2026年1月まで。
著者の生活圏のなかで、
著者が経験した目にした暮らし。
異国で小さな子どもを育てることは、
本当に不安だし大変なんて言葉では語れないものがあると思いました。
淡々と、だけどじわじわと、
戦争の気配を感じながらの生活。
それでも息子を気にかけてくれる周囲の人々や、街の風景、そしてモスクワで世界を広げていく息子の成長。
これは書くことにとても勇気が必要だったんだろうなあと思います。
でも著者が書いてくれたからこそ、私はこの本に出会えて。読めてよかったです。
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