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状況さえ許せば、「理屈」抜きの面白い話をつくりたくていつもうずうずしていた人なのだ――30年間、担当編集者として名作誕生の現場に寄り添った著者が、深い敬愛とユーモアを込めて“司馬さん”を綴る。国民作家の意外な癖とは? 感嘆すべき人間力とは? 日露戦争、新選組、戦国大名などなど歴史余話も楽しい洒脱なコラム111篇!
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Posted by ブクログ
和田宏(1940-2013)、文藝春秋の編集者。30歳の時から司馬遼太郎の書籍(全集や単行本)を担当し続けた。2006年から『週刊朝日』に連載された「週刊司馬遼太郎」中のコラムを執筆した。本書は、そのうち111回分を収録。余談と断るだけあって、どれも軽妙。 1回分見開き2ページ、作品の内容のプチ解説...続きを読む、フォローアップ、注釈、こぼれ話やトリビア。どこまでが史実で、どこからが(なにが、だれが)司馬のフィクションかにも触れている。司馬作品を読む際にはvery useful。ただし、時代もの・歴史もの限定。紀行とかエッセイはあつかっていない。 著者は2013年10月22日に逝去。本書の刊行は12月10日。奥さんに捧げられている。
著者は文藝春秋で、「司馬担当編集者」を30年も続けた名物編集者。 「週刊朝日」2006年から続く連載「週刊司馬遼太郎」のコラム「余談の余談」111回分を文庫化したもので、タイトル通り司馬遼太郎に纏わる肩の凝らない軽い読み物だが、書き手の和田氏の軽妙な文章がこれに拍車をかける。 例を上げると、 「...続きを読む余談24・胡蝶の夢」から 江戸の地所は武家屋敷と寺社で85%を占め、残りに町人がひしめくから、多くは長屋住まい。10平方米ばかりでは土間にかまどを据えれば、あとはノミ・シラミの棲む六畳一間きり。便所は共同、風呂は銭湯。混浴だったが、残念なことに暗くてなにも見えない・・・(略)・・・夜は長いがすることがない。出歩こうにも町木戸が閉まっている。出たところで物騒で、治安といえば目明しの半七も平次も芝居では恰好いいが、実態はごろつきに近い。 (暫し閑話休題 以下私の感想) そういえば、明治の初めに来日したイザベラ・バードの「日本奥地紀行」(1887年)に「蚤の大群が襲来したために、私は携帯用の寝台に退却しなければならなかった」と書いてあったのを思い出した。 芭蕉の句にも皆さんご存知のように以下のものがある。 「蚤をふるいに起きる暁」 「蚤虱馬の尿する枕もと」 その日本が今や世界一清潔な国になっているのが不思議。 「余談25・胡蝶の夢」から 新入りに古株がちょっとした意地悪をする、というのは世界に類のない日本の文化である。と司馬さんはたびたび指摘した・・・(略)・・・古株の方だって気を付けねばならぬ。近頃では根に持たれて何をされるか分からない。いや、昨今に限らないか。ほんの意地悪のつもりが、相手が逆上して殿中で斬りつけてきたばかりか、その家来どもが47人も束になって首を取りにきたという例もあるから、ほどほどにしないといけません。 意地悪を通り越して編集者をいじめるのが趣味と評判の作家がいたが、司馬さんは真逆で人付き合いの達人。一座を愉快にすることに心を砕く人であった。そのためにこの人はまぎれもない天才であったが、周りにそれを意識させなかった。座持ちのいい天才などいたためしがあろうか。 等々・・・寝る前に読むのに是非お勧めの一冊です。
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