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Posted by ブクログ
光文社文庫編集部・編『ちょっと怖イイ物語』光文社文庫。
ついに手持ちの未読文庫本がこの1冊のみになってしまった。次に新刊文庫を購入するのは1週間後なので、明日にも古本屋で10冊くらい購入して来なければ、活字中毒の禁断症状を起こしてしまいそうだ。
さて本作。23人の作家による41編のホラーショートのアンソロジーである。読んだことのある作家は黒史郎、黒木あるじ、岩下志麻子、川奈まり子、平山夢明の5人だけだ。
黒木あるじ『かかめさま』。自分の通っていた中学校は開校してまだ4年目だったので、校舎も設備も新しく、怖い噂の類いは無かった。中学校に伝わる七不思議の1つ『かかめさま』。20年後、母親と同じ中学校に通う娘から今だに『かかめさま』の噂が生きていたことを知る。
我妻俊樹『散歩』。久し振りに実家に帰り、寂れた商店街を散歩する男が20年前に遊んだ大きな白い犬に出会う。3年ほど前まで市街地のアパートに住んでいた自分は夕食後の散歩を日課にしていた。様々な枝道や裏道を歩き、普通に歩けば15分で行ける大型書店に30分以上掛けて歩いたりしていた。今は田舎のポツンと一軒家に暮らしているので枝道に入ろうものなら熊や猪に襲われたり、遭難してしまいそうだ。
春南灯『うぶめ』。何か不穏な感じはするものの決定打に欠け、歯切れが悪い。北の町で暮らす母親と娘。母親は産婆の手伝いを生業にしているのだが、何故か誰かが産気付いたことをいち早く知り、呼び出しが来る前に支度を整えていた。
蛙坂須美『顔の家』。小さなぶつぶつがたくさん集まっているのを見ると背筋がざわめく。顔の家はそんな感じなのだろう。廃虚となった家の2階の部屋に広がる異様な光景。部屋一面が切り抜かれた顔写真で埋め尽くされているのだ。
富士玉目『拾いもの』。幸運を運んで来る動物というのは実際にあるかも知れない。我が家では夏の夜に網戸に張り付き、以来、1ヶ月家に通って来た小さな黒猫を家に入れると何故か幸運が舞い込むようになった。ちなみに網戸に張り付いた黒猫は網戸から名前を取って、アミちゃんと名付けた。犬を拾ってから大金が入るようになった女性。その代わり母親を亡くし、住んでいたアパートが類焼するという不幸が続く。
黒木あるじ『夏音』。このアンソロジーでは黒木あるじは2作目の掲載。思い出したくない過去が蘇るという、なかなか巧いホラー。都会での仕事に疲れて故郷に帰り、裏山を散策している時に耳にした懐かしいメロディ。
岩井志麻子『貧者の一笑』。お笑いの世界もなかなかシビアなようだ。お笑いでは月に1万円も稼げず、バイトばかりする芸人も多いようだ。お笑い芸人を目指した男がなかなか売れぬまま、やはり芸人を目指す母親ほどの歳上女性に食わしてもらう。
田辺青蛙『お仏壇』。一昨年、父親が亡くなり、実家でも仏壇を購入した。日々のお供えや彼岸や命日のお花や供え物など色々と気を遣う。先日、地震の度に転げ落ちる父親の位牌に地震対策をして来た。ばあちゃんの家にある仏壇の声を聞く少年。仏壇は町内で誰が死ぬのか教えてくれる。
黒川進吾『猫のお知らせ』。猫は不思議だ。時に人間の言葉が解るのではないかと思う。我が家の黒猫のアミちゃんは義母から電話が来ると電話越しに話していると言う。婆さんの飼っている猫は25年も生きており、誰かが耳の遠い婆さんの悪口を言うと婆さんに教えてくれるという。
渋川紀秀『鎮魂』。そういう結末もありだな。鎮魂と祈りのための花火が上がる会場で警備を行う主人公が目撃したのは亡くなったという噂の同僚の近藤というジイさんだった。
クダマツヒロシ『夏の日』。もう一つ捻りが欲しかった。まさか父親のお化け騒動だけで話が終わるとは思わなかった。父親の三回忌で親族たちが父親の思い出を話している。30年前に父親がお化け騒動を起こしたという。
小原猛『小人の蝶番』。この位の思い切った結末の方が満足する。昔、入院した叔母は主人公に蝶番に住む小人たちの話をしてくれた。
富士玉目『迷子』。富士玉目も、このアンソロジーでは2作目の掲載。よくあるパターンかな。認知症で施設に入り、亡くなったジイちゃんの話。
黒木あるじ『ウブメ』。黒木あるじは3作目の掲載。面白さは無い。しかも、『ウブメ』というタイトルは春南灯の『うぶめ』とカブっている。実家に子どもを連れて帰ったバツイチ女性がウブメという化物の話を思い出す。
鈴木捧『ゴルジュヘッド』。このアンソロジーでは珍しい山岳ホラー。なかなか良い。ソロの沢登りを専門に行う男が遭遇した恐怖。
我妻俊樹『弟』。我妻俊樹も2作目の掲載。小原猛の『小人の蝶番』と同じパターンだった。一緒に遊んでいたはずの弟が姿を消してしまう。
北野勇作『水源』。自転車で水源を周る主人公。傍らにいる女性は妻なのか、誰なのか判然としない。この短編自体が、何を描きたいのか判然としなかった。
松本みさを『手向け花』。俗に言う死人に呼ばれるという話の逆パターン。幼稚園の正門の前にお供え物や花が置かれるようになり、それを止めさせようとするが。
黒史郎『未来から来たブスの幽霊』。コンプライアンス的にアウトなタイトルだ。よく解らぬ短編。
つくね乱蔵『土曜日、二十一時五十一分』。このアンソロジーのタイトルが『ちょっと怖イイ物語』であることを思い出した。なかなか良い話である。著者のつくね乱蔵というペンネームは夢枕獏の『九十九乱蔵』シリーズから取ったのだろうか。不動産屋に騙されて事故物件に住むことになった男性。その部屋には毎週土曜日の夜に男性の霊が現れる。
小田イ輔『彼女の誕生日は命日』。女性と付き合うのはなかなか難しい。好きだと言うタイミングや結婚を切り出すタイミングを間違えると女性は去ってしまう。近所の同い年の彼女が年上のバイク乗りの男と付き合い、彼女の誕生日にバイク事故で彼女だけが亡くなる。
黒史郎『バランス』。黒史郎も2作目の掲載。骨になった夫婦の争い。面白くない。
黒川進吾『永遠の二人』。黒川進吾も2作目の掲載。そういうオチだったのか。幽霊に魅入られる話はよくあるが、こちらはイイ物語だ。大学時代はアメフトでならした巨漢の友人と久し振りに会うと激痩せしていた。話を聞けば恋をしていると言う。
小原猛『旅の終わりに』。小原猛も2作目の掲載。昔の演歌のタイトルに『旅の終わりに』というのがあったような気がする。何とも哀しい余韻を残す話だ。沖縄で知り合った50歳位の男性は本土の病院で植物人間になった妻を殺害したことを告白する。
川奈まり子『をんな沼』。ショート短編の中に余りにも詰め込み過ぎたようで面白くない。短い中にも間を取らないと息が継げない。
花園メアリー『銀の玉地獄変』。タイトルに銀の玉とあるので、パチンコの話だろうと思ったら、その通りだった。三つ子の魂百までも、ミイラ取りがミイラになるといったことわざを連想させる。
平山夢明『うみ』。何とも巧い短編だ。タイトルの『うみ』は海なのか、産みなのか、はたまた膿なのかと読者を悩ませた挙句に、やはり『うみ』だった。
黒木あるじ『いくなのもり』。何と黒木あるじは4作目の掲載。立入禁止の森に踏み入れた主人公が味わう恐怖。
黒史郎『クラップ』。黒史郎も3作目の掲載。クリスマスにサンタクロースに扮して転落死した父親の話。悲しいクリスマス。
我妻俊樹『赤い鍵』。我妻俊樹も3作目の掲載。夜道で拾った赤い鍵が世界を変える。なかなか面白い。
神薫『塩の家』。失恋を癒すために海辺の家に移り住んだ女性。不動産屋から玄関の脇の盛り塩を絶やすぬようにと不思議な忠告を受ける。怖いのは嫉妬に燃えた女性だ。
富士玉目『ヒサヨの同窓会』。富士玉目も3作目の掲載。古希を迎える同窓生たちの元に現れる自殺したヒサヨ。そう言えば、久しく同窓会の話を聞かないな。
岩井志麻子『眠れない街』。岩井志麻子も2作目の掲載。女性の幽霊に取り憑かれた男性の話。余り面白くない。
田辺青蛙『生まれ変わったら』。田辺青蛙も2作目の掲載。弁護士ながら営業が下手で妻に出ていかれ、何もかにも上手くいかない父親が息子と共に練炭自殺を図る。何とも。
鷲羽大介『親孝行』。ブラックなオチが光る。1歳半になる息子が何でも、どーじょと言って渡すことを覚える。夫の浮気を知った妻に息子が、どーじょと言って渡した物は。
黒川進吾『とあるラーメン屋の話』。黒川進吾も3作目の掲載。何をやってもダメなテナントビルの一角。女性の幽霊が出ると曰く付きのその場所にラーメン屋を開店しようとする男性が居た。確かにダメな場所は何度店が変わろうと長続きはしない。
黒木あるじ『かがみよかがみ』。黒木あるじはついに5作目の掲載。由緒正しきねがひのかがみに願い事をした女子高生がもたらした惨劇。
雨宮淳司『霊香』。孤独死の現場の特殊清掃に訪れた男が出会った過去の亡霊。若い人たちにはおよそ解らぬだろうP弾を持って来る感覚がどうにも。
小田イ輔『気の利いたご利益』。小田イ輔も2作目の掲載。ヤクザな暮らしに嫌気が差し、死を決意した男が頭が欠けた石地蔵の願いを叶えると、次から次へと幸運が舞い込む。人生に於いては、幸と不幸にバランスというものがあるのだ。
平山夢明『魚籠』。平山夢明も2作目の掲載。自分だけが知る荒磯の釣り場に釣りに訪れた男はそこに違う男の姿を見掛ける。ゾワッとする話。
本体価格760円
★★★★
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小説・文芸
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