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この世界の秘密をあなたに教えたい――。わたしはこのホテルの、たったひとりの掃除婦。殺されたゾンビの骸を拾い集めて、世界を美しく保つのだ。一気読み必至の圧倒的虚構世界〈リアルライフ〉。
AI〈やつら〉に侵食された世界で、夫とともに職を失ったわたし――の前にもうひとつの現実がたち顕れた。三十数年良い子で大人になったわたしは、これまでと変わらずに、賢明にひたむきに役割をこなしていく。
感謝されず、褒められもしない。それこそまるで「 」みたいに?
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Posted by ブクログ
国家において人間よりも上の存在である憲法で、働くことが義務とされている。その重さというか、逃げられなさというか。
自分も仕事辞めてから次の仕事に就くまでのあいだニート生活をしていた経験があって、お金の不安とかももちろんあるのだけど、「働いていない」こと自体に罪悪感を感じたのを思い出した。
主人公はそれに加え、幼少期に親からかけられた言葉や期待によって「誰かの役に立たなければ」と強く思いすぎる人格に形成されているらしく、生きにくいだろうなあ、と。
VRの世界ではプログラミングされたことしか起こらないけど、現実世界ではそうはいかない。これは良い意味でも悪い意味でも。
それと、ゾンビ・アラスカは僕だと思った。社会で生きるというか生きさせていただくためには、何かしらで貢献しないといけない(という気がして)、それがつまり労働。それに対して僕は苦手意識があって、怖くもあって、でもやるしかないから挑戦して、失敗してまた怖くなって、クマに相談することも多々。
Posted by ブクログ
この作品の本筋ではないが、主人公の労働観に共感した。
この資本主義社会の中で、会社からは際限なく成長を求められ生産性で価値を測られ続けるしんどさや、そんな思いで必死にこなす仕事もその実、あってもなくても社会に大した影響はなく、私自身も代替可能な要員としてなけなしの『個性』を発揮するという、労働本来の喜びから疎外されている虚無感、それなのに仕事から抜け出せないという自己矛盾を実感させられた。
口唇期ホテルというのは、『頑張ってるから褒めてよ!』という欲求が満たされることへの執心から来てるのだろうか?手榴弾や銃という攻撃性も口唇期ぽいなと思った。
Posted by ブクログ
最近、会社でExcelコードを組む時に、
ChatGPTを使っている。
私がこうしたいと言ったことを丁寧に汲み取る。
そしてエラーのでないコードを出してくれる。
私は「ありがとう」と言いつつも、少し思う。
「これ、GPTが直接やった方が早くない?」
一方で私は、派遣先での存在価値を探している。
結局派遣社員というのはお手伝いであって、
正社員ほどの業務も責任も持てない。
持たせてもらえないが正解かもしれない。
子供もいない、結婚してもない。
そんな私が自分の存在価値を見出せるものは、
現時点で仕事しかない。
本作「ゾンビ回収婦」は、まさにそんな話。
AIによって解雇された女性がAI機能によって自己を育てる作りをしているVRゲームにのめり込んでいく物語だ。
ゲームの中で彼女は、仕事をこなす。
NPCのはずなのに、元々設定されていたキャラを銃で撃ち殺し、自らの仕事として引き継ぐ。
爆撃されたゾンビたちを回収し綺麗にすることで、自分の存在価値を見出すし、ゾンビたちのことを同じ会社を構成する同僚社員のように思っている。
ゲームは、彼女の中では会社だ。
支配人(社長)に認められたい。
ゾンビたち(同僚たち)と完璧な仕事(ゲーム)を果たしたい。
撃ち殺した元設定の男(元々そこの業務を果たしていた先輩)が気に入れられていることが気に食わない。
無理やり解雇に持ち込んで引き継ぐ。
AIに居場所を奪われたのに、奪い返している。
自らが過去にかけられた『承認』に値する行動や言動に苦しめられながら、認めて欲しいとすがる。
VRという孤立した空間の中で、新しい平和な居場所を見出す。
一方で、ゲームの生みの親、ミーシカも仕事に対して悩みを持つ。
「そんなゲーム、おもろくないだろ」と、
自身の根幹を否定するような言葉を何万と受け、
期待に応える気力をはあれど、焦った上手くいかない。次第に誰とも触れ合いたくなくて孤独になって、ミーシカもまた、彼女と同じようにゲームの中に閉じこもって、誰にも評価されない見えない業務を淡々とこなす。
ミーシカはどちらかというと評価を受けたいのではなく、誰も見ていないような業務を静かにこなすことで、本来の自己、「自分らしさ」や「人間らしさ」を他者に左右されたくないと思っている。
誰かのためじゃない自分を探し続けている。
ミーシカも彼女も、仕事に求める対価は違えど、自分以外と誰かと上手く関わり合いたいと思っている。
AIのせいで。
AIのおかげで。
AIだけど。
機械的なものに壊されたもの。
人間の無慈悲な言葉で壊されたもの。
何が正解でもないし、どれが違うでもない。
ただ物語のラストの結末は何も解決しなかった。
結局、仮想現実は仮想現実であって現実世界とは全く違うものだと改めて知らしめるラスト。
彼女を救えるのはもはや現実ではない。
彼女はずっと居心地のいい場所で人間として生きる。
現実世界で彼女は回収されるゾンビ側となって、
同じことを繰り返しながら生きていくしかないのだ。
一見、SFディストピアかと思ってましたが、
読み出すと現代を生きる社会人の心情をすごく上手く表現しているなと。
めちゃくちゃ好きなお話でした。
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