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Posted by ブクログ
ギリシャ悲劇の一つ、エウリピデスのメデイア。
金羊毛を目指すイアソンに一目惚れして弟ぶっ殺し、イアソンの敵を謀殺し、ついに正妻ゲットだぜと思ったら、(この後が本編)旦那を若くてピチピチした亡命先のコリントス王女に猛禽的略奪され、ヤロウ全員ぶっ殺してやる、というメデイアの復讐譚。
メデイアはイアソンもコリントス王も王女も憎さのあまり、自分の生んだ子まで殺してしまうが、その過程におけるメデイアの心情の揺れ動き、すなわち怒りと冷静さと理性の間を入ったり来たりがこの話のポイント。
怒りで復讐を思いつき、冷静さで殺人計画をじっくり練り上げるが、理性によって躊躇う、しかし怒りでやはり計画を決行し、子殺しまで果たしてしまう。
ギリシャ神話ではメデイアは悪女として捉えられることが多いが、こうしてみるとやっちゃったことはそうだけど、そこまでの心理課程を見ると、神話の登場人物が非常に人間的になってくる。
また、ギリシャ悲劇では神の抗いがたい運命を前にした人間を描いたりするが、ここではあくまで人間だけの物語だから、一層メデイアの人間臭さが出てくると思う。
まあ、イアソンも、コリントス王クレオンも、全く登場しないけどコリントス王女グラウケも、何よりメデイアも全員クソ。過去作品の価値観を現代の価値観で評するのはご法度とはいえ、ゲラゲラ笑いながら「やっべークソだw」と楽しむのも一興。
Posted by ブクログ
2026/07/26 - 2026/07/28
目的があり手に取ったが、古典の悲劇というのはあまり読んだことがなく、ここまで劇場的な表現なのか、という構成に驚いた。
エウリピデスのメデイアを読んで、一番印象的だったのは、母による子殺しでもなければ、イアソンに対する憎悪でもない。強烈なまでの家父長制とそれらに翻弄されるメデイアやクレウサといった女性たちの立場である。
p29-l2
ところがわたくしたち女は、夫ひとりを頼りにしてゆかねばならないのです。
p40-l15
心得は充分、おまけに女と生まれついた身だ、善いことにはからきし力がないが
悪いことは何事であれ、その上なくうまくやり遂げてみせるという女に。
p41-l8
世の中変わってこれからは、わたくしたちのほうがきちんとした生き方になりましょう、
女の評判が高くなるのです。
女を貶す風潮はもうなくなりましょう。
これらの表現は特にそれを感じさせた。
同時に、存在を毒にしなければ生きていくことも、自身の尊厳を立てることもできないという悲劇に押し込められていくメデイアや、ただ父の命令によりイアソンと婚姻をすることで毒牙へとかかるクレウサに痛ましい思いすら感じた。
自尊と愛を天秤にかけ、前者を選ぶということが本当に悪いことなのか。
これは現代人ならではの視点かもしれないが、あまりにも悲劇に向かう彼女に同情を持たずにはいられなかった。
子殺しも人を呪い殺すのも、前提としてあり得ないことではあるが、文字通り身を割く手段をメデイアに取らせたのは、それこそ魂の殺人を犯したのはクレオンやイアソンではないかと感じる。
破滅に向かう自分を鼓舞するメデイアの様子は抱きしめてあげたくなるほど切なかった。
手段は決して良くなかったが、一人の人としての尊厳を踏み躙るということは国一つ滅亡させてもおかしくないほど重いことだと痛烈に感じる物語だった。
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