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Posted by ブクログ
「生い立ちの歌」がイチバン好きです
Ⅰ
幼年時
私の上に降る雪は
真綿のようでありました
少年時
私の上に降る雪は
霙のようでありました
十七〜十九
私の上に降る雪は
霰のように散りました
二十〜二十二
私の上に降る雪は
雹であるかと思われた
二十三
私の上に降る雪は
ひどい吹雪とみえました
二十四
私の上に降る雪は
いとしめやかになりました
Ⅱ
私の上に降る雪は
花びらのように降ってきます
薪の燃える音もして
凍るみ空の黝む頃
私の上に降る雪は
いとなよびかになつかしく
手を差伸べて降りました
私の上に降る雪は
熱い額に落ちもくる
涙のようでありました
私の上に降る雪に
いとねんごろに感謝して、神様に
長生したいと祈りました
私の上に降る雪は
いと貞潔でありました
※パブリックドメイン(public domain)
Posted by ブクログ
中也全詩集を時間をかけて読んだ。今彼の詩を読んで所謂名作と言わてるものが物凄く際立っているように思えた。
好きだった作品をあげてみる。
山羊の歌より
・帰郷
・失せし希望
・汚れちまった悲しみに……
・生い立ちの歌
・時こそ今は…
在りし日の歌より
・冷たい夜
・湖上
・骨
・北の湖
・一つのメルヘン
・冬の長門峡
未発表詩篇より
・春の夕暮
・(概念が明日となれば)
・(秋の日を歩み疲れて)
・秋の日
・幼なかりし日
・夏の海
・夏
・湖上
・砂漠の渇き
・(吹く風を心の友と)
・(疲れやつれた美しい顔よ)
・コキューの憶ひ出
・細心
・酒場にて(定稿)
・脱毛の秋
・いちぢくの葉
・朝
・山上のひととき
以上29篇、高名な「山羊の歌」「在りし日の歌」以外にも抒情性豊かな詩篇があり、僕がこの本を手にした理由だ。
また、巻末にこれも高名な大岡昇平と小林秀雄の評伝が掲載されており、素晴らしい。
Posted by ブクログ
東京に、雪が降った。街に光に照らされて、雪が落ちて行く。
そんな時に、ふと思い出すのが、「今日も小雪の降りかかる 汚れちまった悲しみに」というフレーズだった。そして、本棚から、この詩集を取り出す。それで、読んでみる。その詩の最後のフレーズ「なすところもなく日は暮れる」という終わり方に、雪は心の中にも降りしきるようだ。
この詩集は、不思議なことに、買ったときからずっと持っている。50年以上前の詩集で、紙は日焼けしている。存在感がある。中原中也に憧れた時期がある。悲劇のような喜劇のような詩人である。
京都から恋人の年上の女優になりたい女と一緒に東京に行き、そして小林秀雄と仲良くなって、小林秀雄にその女を取られる。一緒に住んでいた荷物を、小林秀雄の家に持って行ってやるのだ。
寝取られた上に、優しさを発揮する。「汚れた悲しみ」に雪が降って、何事もなかったような白い世界となる。朝になると雪が溶けて、汚れてしまった悲しみがあらわになる。「私はかたくなで、子どの模様にわがままだった。私はおまへの優しさを思ひ、また毒づいた人を思ひ出す。今朝はもはや私がくだらない奴だと、みずからを信じる」と歌う。どこに怒りをぶつけたらいいのか。その自分の不甲斐なさ。酒屋で飲んだくれて、人に絡みついた。悲劇を喜劇のように演じて、詩人は、言葉を磨き続ける。敗者としてのとぎすまされた言葉を磨く。その恋人は、結果として小林秀雄さえも捨ててしまうのだが。
小学校からの友人が、中学生の頃に高村光太郎の「さびしき道」と中原中也の「月夜の浜辺」を教えてくれた。波打ち際のボタンが落ちていて、それを拾ったら、どうする?と言われた。
彼は、海に向かって思い切り遠くまで、投げてやると言った。彼は、野球選手だった。用のないボタンは、もういらないのだと。スッキリしているのだ。私は、やはりポケットの中に入れると思った。
彼はもう地球上にはいない。
30歳で人生を閉じた中原中也。昭和12年。戦争が本格的に始まる頃だ。ピカソがゲルニカを描いた頃。中原中也は、1冊の詩集しか出版していなかった。2冊目を作って、小林秀雄に託して死んだ。
サーカスのブランコは、「ゆあーん ゆよーん ゆやゆよん」とゆれる。
そして、「私の上に降る雪は真綿のやうでありました。私の上に降る雪はいとしめやかになりました。私の上に降る雪に いとねんごろに感謝して、神様に 長生きしたいと祈りました」
夜の東京で、雪が降ると 雪を歌った詩人のことを思い出す。
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