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田んぼから見える、日本社会の原風景
四季のうつろいとともに水を湛える田んぼ―。
この美しい風景の裏に、二千年にわたる日本社会の成り立ちがある。
本書は、著者がタイにJICA専門家として滞在した経験をもとに、同じ稲作社会でありな
がら異なる発展を遂げた日本と東南・南アジアを比較し、「日本らしさ」の起源を探る試みである。
●一期作の日本、二~三期作のアジア
タイやスリランカでは、豊かな日射と水を生かして年に二度も三度も稲を収穫できる。
自然の恵みの中で人々は祈りとともに暮らし、仕事にも時間にもおおらかだ。
一方、日本は厳しい寒暖差のもと、年に一度しか稲を育てられない。そのため、限られた季
節に労働を集中させ、互いに協力して用水を管理する必要があった。
この自然条件こそが、勤勉さ、正確さ、協調性といった日本社会の基盤を形づくったのである。
●稲作が映す文化と信仰の違い
日本では「いただきます」「ごちそうさま」と命に感謝する所作が日常に根づき、神に供えた
米を共に食べる行為が共同体の絆を深めてきた。
他方、東南・南アジアの仏教社会では、輪廻と喜捨の思想が生活を支え、僧侶は修行に没頭
し労働をせず、施しによって生をつなぐ。
同じ仏教国でも、大乗仏教の日本と上座部仏教のアジアでは、自然や労働、信仰に対する姿
勢がまったく異なる。
水田は単なる農地ではなく、人の暮らしと心を映す鏡である。
本書は、稲作の歴史を軸に、日本人の勤労観・信仰・社会秩序の深層を解き明かす。
田んぼという身近な風景から、私たち自身の社会と文化を見つめ直す一冊。
【著者】
齋藤 晴美(さいとう はるみ)
1952(昭和27)年 兵庫県生まれ。
1976(昭和51)年 京都大学農学部農業工学科卒業後、農林水産省に入省。
農林水産省、外務省、岡山県に勤務。農村振興局次長を務め2011(平成23)年に退職。
元(一財)日本水土総合研究所理事長。農学博士。
監修に「アフリカ農業と地球環境」(家の光協会)。
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