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その路地にさしかかったとたん、ひどく嫌な気分がした。どういうこともない書店街の一郭。一見見落としそうな路地の突き当りに緑の扉、ハイツ・グリーンホームはあった。父親の再婚を機に、高校生の荒川浩志はひとり暮らしをすることになった。ハイツ・グリーンホーム、九号室──それは、近隣でも有名な幽霊アパートだった。引っ越した当日、からっぽのはずの郵便受けには、小さい丸い白いものがひとつ、入っていた。プラプラした手触りの、人形の首だった――。「出ていったほうがいいよ」不愉快な隣人の言葉の真意は? 幽霊を信じない浩志ですら感じる「ひどく嫌な気分」の正体とは? ラストまで一気読み必至の小野不由美の家ホラーの原点とも言える本格ホラー&ミステリー小説。解説・杉江松恋(ミステリー評論家・書評家)
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Posted by ブクログ
映像なしの文章のみで、ここまで恐怖を引き出せるとは。お見事。引き込まれて、2日で一気に読んでしまった。
「営繕かるかや」のように、家にまつわるホラーではあるが、「かるかや」が短編ゆえに比較的早く収まりがつくのに対し、「緑の我が家」は長編ゆえに、すぐに解決せず、じっくり追い詰められる分、より深く怖さに浸れる事ができた。
ホラーとしても一級品だと思ったが、それ以外にも、小学生の頃の描写のリアルさ(オサルというアダナ、「ヘンキョウ」と呼ばれる場所、誰かが「オサルはナマイキだ」と言い始めて無視を開始する、など)、この世ならざる世界の理屈、後味の悪くない終わり方なども、良かった。
最初に書かれたのが1990年らしく、若干の時代の古さ(携帯ではなく固定電話が出てくる所とか)はあるが、あまり大きな問題ではなかった。それよりも、35年経ってもなお、(多少加筆修正しているにしても)秀逸なホラー作品として読める事が凄い。
Posted by ブクログ
【短評】
直感に従って手に取った小野不由美は、数々の名著を生み出すに至った彼女の初期作品とのことだ。1990年発表の作品であり、凡そ35年前という恐るべき隔世の書を引き当てたわけだが、十分に令和の読書に耐えうる一作だったと思う。
両親の元を飛び出した高校生・荒川浩志(あらかわひろし)は<ハイツ・グリーンホーム>に引っ越すこととなった。6号室の奇妙な少年・和泉聡(いずみさとる)は、初対面の浩志に「出ていったほうがいい」と告げる。それ以来、不気味な落書きをする男の子や頻発する無言電話など、気味の悪い出来事が頻発するようになりーー
良くも悪くも「ハートフルホラー」の見本のような作品である。
良く言えば王道的。悪く言えば類型的。
良点を挙げるならば、伏線の張り方、恐怖の描写等、丁寧に小説を組み上げているのが良く分かった。程なく才能が爆発する予感を感じさせる秀作だ。他方、正直、瑕疵が無いとは言えない作品ではある。文章のリズムはイマイチだったし、作者の意図よりワンテンポ早く「真相」に気付けたりもした。
しかしながら、作品の「余韻」は素晴らしいの一言。仰々しい感動に振らず、静かに美しく幕を下ろしたのが、凄く好みだった。
三点か四点か最後まで迷ったが、変調気味な作品ばかりを摂取してきた反動からか、本作のストレートな作風が結構刺さったので、四点評価とした。
【気に入った点】
●断片的に唸らされる描写があった。流石は小野不由美である。男の子の落書きとか、手紙の内容とかゾゾッと来るものがあった。
●飛行機というモチーフが良い。安易にお涙頂戴の別れに流されないところが良い。バランス感覚が凄いなと素直に思った。
【気になった点】
●専門的な指摘は出来ないが、内面描写における括弧の多用とか、文章にノイズめいた癖があるように感じた。
●もっとキャラクタの内面を掘り下げて欲しかった。浩志と両親の確執とか、物語に溶け込めていない感もあるし、「ある人物」の葛藤などは全面に押し出しても重厚感が出たのではないかと感じる。
才能の原石の輝きを楽しむ一冊。
ホラーとしても感動物としても一定の水準に達していることは間違いない。
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