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近似する言語を持つ隣国タイ。その強大な政治・文化の磁場にさらされ続けるラオスにとって、言語の独自性は独立の証しである。国民語を創り、守り育てる現場からのレポート。
以上を踏まえた上で、本書では、ラーオ語がラオスの国民語としていかにして「つくられて」きたのか、タイ語との関係に注目しつつ明らかにしていきたい。これはまた、一つの「言語」を「つくる」ということが、いかに政治や社会・経済状況、ナショナリズムといった、本来「言語」にとって「外的」であるはずの要因によって、左右されるものであるか、ということを示す試みでもある。
本書では特に、フランス植民地時代から一九七五年の社会主義革命までの、約八十年間を考察の対象として設定し、この問いに対する答えを探っていきたい。この期間を対象とする理由は、現在のラーオ語とタイ語をめぐる諸問題の原点を知るためには、植民地支配、内戦と、国家としての「ラオス」の存在が、より不安定であったこの時期の状況を明らかにしておくことが、ぜひとも必要であると思われるからである。(本文より抜粋)
【目次】
はじめに──「つくられる」国民語
一 「ラオス」の誕生──メコン川に引かれた国境線
二 ラーオ語を「つくる」──正書法をめぐって
三 ラーオ語の「歴史」──「ラーオ語族Sakun Phasa Lao」の形成
四 ラーオ語か、タイ語か──言語ナショナリズムの昂揚
おわりに
引用文献
あとがき
【著者】
矢野順子
2009 年、一橋大学大学院言語社会研究科博士後期課程修了。博士(学術)。
現在、東京外国語大学、上智大学非常勤講師。一橋大学大学院言語社会研究科特別研究員。
主な著書に『国民語の形成と国家建設―内戦期ラオスの言語ナショナリズム』(風響社、2013 年)などが、論文に「『ラオス国民』の形成と『武器』としてのラーオ語―パテート・ラーオの教育政策とプロパガンダを中心として」(『東南アジア歴史と文化』第 36 号、2007 年)などがある。(2014年現在)
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