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社会主義革命を経た年代記継承の有為転変をフィールドで追い、東南アジアの少数民族の波乱の歴史をたどる。
本書で取り扱うのは、この『クアム・トー・ムオン』である。これには、天地開闢に始まり、洪水神話、天からの始祖降臨、故地ムオン・ロの開拓、各地を平定しての領土拡大、その後の歴代首領の事績と歴史的事件の数々が記されている。多くが二〇世紀の写本なので、語りの終点はしばしばフランス植民地期である。
『クアム・トー・ムオン』は直訳すれば、「ムオン(くに)を語る話」である。その記述内容を、本書で分析することになるが、その際次の点にも注目したい。『クアム・トー・ムオン』が、黒タイ村落社会における信仰や日常生活と、どのように関わってこれまで継承されてきたか、である。つまり、こうした文字資料が、社会にどのように埋め込まれて継承されてきたのかを問題にしたいのである。そしてこの研究は、ある地域的枠内における文字文化継承の特徴を考える手がかりになるだろう。(本文より抜粋)
【目次】
はじめに──年代記『クアム・トー・ムオン』との出会い
一 ベトナムにおける黒タイの生活
1 地勢に応じた民族の住み分け
2 ベトナムにおける公式の民族分類と黒タイ
3 黒タイ村落の社会生活の現状
二 黒タイの文字文化と年代記
1 二〇世紀における黒タイ社会の諸文字
2 黒タイ文書継承の現状
3 黒タイ年代記
三 『クアム・トー・ムオン』が語る社会秩序
1 『クアム・トー・ムオン』の構造
2 王統史の記述が語るイデオロギー
四 『クアム・トー・ムオン』の継承
1 社会階層と『クアム・トー・ムオン』
2 『クアム・トー・ムオン』の現在
五 おわりに
【著者】
樫永真佐夫
東京大学大学院総合文化研究科超域文化科学専攻文化人類学コース単位取得退学。博士(学術)。
主な論文・著書に、「ベトナムにおける黒タイ家霊簿の現在」長谷川清、塚田誠之編『中国の民族表象─南部諸地域の人類学・歴史学的研究』2005 年、風響社、カム・チョン&樫永真佐夫 2003 『ムオン・ムアッのロ・カム一族の家霊簿』ハノイ:世界出版社などがある。(2014年現在)
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