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ヒステリーが精神医学の表舞台から退場し,多重人格や劇的な身体症状は今や見るも稀な現象となりつつある――しかし,巨大なヒステリーの幻影は未だ潜勢している。ヒステリーから表現形を変えた解離症状は,気配過敏,想像的没入,人格交代,空間的変容/時間的変容,幻覚・幻聴をはじめとする多彩な表情を見せつづけて延命する。
本書の前半・症状構造論では,「色」「夢」「眼差し」など解離に特徴的な表象を手がかりに,気配過敏,想像的没入,人格交代,空間的変容/時間的変容,幻覚・幻聴など解離の典型的症状を論じながら,当事者の主観的世界を触知する。本書の後半・鑑別診断論では,境界性パーソナリティ障害,自閉症スペクトラム障害,統合失調症との困難な鑑別方法を症候学的観点から解説していく。そして終盤の治療論では,「犠牲=身代わり」「場所」「救済者人格」を足がかりとしながら,夢と現実の境界線上に「いま・ここ」を構築して交代人格と交流をはかり,安全な場所のなかで回復に至る軌跡を描いていく段階的治療論が語られる。
症状構造から治療のエッセンスまでを析出した,解離性障害を理解するための比類なき決定書。
Posted by ブクログ 2024年04月21日
【目次】
序章 ヒステリーから解離へ
I-解離と時代
1 解離と色
2 仮面からヴェールへ
3 解離の舞台
II-解離の症候と構造
4 怯えと過敏
5 隠蔽空間
6 想像的没入と眼差し
7 時間的変容の諸相
8 交代人格の系譜
III-幼少期と夢
9 解離の病因論
10 解離の幼少期体...続きを読む
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