ベートーヴェン捏造

ベートーヴェン捏造

1,870円 (税込)

9pt

「運命」は、つくれる。
犯人は、誰よりもベートーヴェンに忠義を尽くした男だった──
音楽史上最大のスキャンダル「会話帳改竄事件」の全貌に迫る歴史ノンフィクション。

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【イントロダクション】

「事件」が発覚したのは、1977年――ベートーヴェン没後150年のアニヴァーサリー・イヤー。
震源地は、東ドイツの人民議会会議場で開催された「国際ベートーヴェン学会」。

ふたりの女性研究者が、ベートーヴェンの「会話帳」――聴覚を失ったベートーヴェンがコミュニケーションを取るために使っていた筆談用のノート――に関する衝撃的な発表を行った。

会話帳に、ベートーヴェンの死後、故意に言葉が書き足されている形跡を発見したという。

犯人は、ベートーヴェンの秘書、アントン・フェリックス・シンドラー。
ベートーヴェンにもっとも献身的に仕えた「無給の秘書」として知られた人物である。
ベートーヴェン亡きあとは全部で3バージョンの伝記を書き、後年の──あるいは現代における「楽聖べートーヴェン」のパブリックイメージに大きな影響を及ぼしていた。

たとえば、ベートーヴェンが『交響曲第5番』冒頭の「ジャジャジャジャーン」というモチーフについて「運命はこのように扉を叩くのだ」と述べたという有名なエピソードは、シンドラーの伝記を介して世に広められたものだ。

そんな人物が、会話帳の改竄に手を染めていたとなれば。
それはベートーヴェン像の崩壊に等しかった。

以降、シンドラーは音楽史上最悪のペテン師として、研究者や音楽ファンから袋叩きに遭うことになる。

だが、彼をいたずらに非難することは本当に正しいのだろうか。
シンドラーのまなざしに憑依する──つまりは「犯人目線」で事件の全貌を追うことによって、いまいちど、彼が「嘘」をついた真の動機を明らかにすべきなのではないだろうか。

生い立ち、学生時代の行状、ベートーヴェンとの関係。
ベートーヴェンの死後、会話帳改竄に至るまでの経緯。
罪を犯したあと、どうやってそれを隠しとおしたのか。
そして、100年以上にわたってどのように人びとをだまし続けたか。

それらを知らずして、音楽史上最大のスキャンダル「会話帳改竄事件」の真相に迫ることはできない。

音楽史上最悪のペテン師を召喚し、彼が見た19世紀の音楽業界を描き起こす前代未聞の歴史ノンフィクション ――ここに開幕。
新聞
・「中日/東京新聞」 2018年10月28日付朝刊 /三品信氏(中日新聞文化部記者)
・「共同通信」2018年11月24日以降地方紙配信/江川紹子氏(ジャーナリスト)
・「読売新聞」2018年11月25日付朝刊/宮部みゆき氏(作家)

雑誌
・「週刊現代」2018年11月17日号
・「週刊文春」2018年11月22日号
・「小説すばる」2018年12月号/栗原裕一郎氏(評論家)
・「音楽の友」2018年12月号/小沼純一氏(音楽・文芸批評家、早稲田大学文学学術院教授)
・「モーストリー・クラシック」2019年1月号/澤谷夏樹氏(音楽評論家)
・「週刊ポスト」2018年12月3日号/井上章一氏(国際日本文化研究センター教授)
・「ぴあクラシック」Vol.49 2018/19冬/橘ララら氏(ライター)

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ベートーヴェン捏造 のユーザーレビュー

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    Posted by ブクログ 2023年11月21日

    なんだこの本は!めちゃくちゃ面白いじゃないか!!

    あまり詳しいことはわからないけれど、クラシックは嫌いじゃないです。交響曲何番、とか言われてもパッと曲がわかるほどの知識は残念ながら持ち合わせていません
    なので
    ベートーヴェンに秘書がいた、なんてこともこの本で初耳

    最初は秘書、シンドラーの生い立ち...続きを読む

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    Posted by ブクログ 2023年11月19日

    積読をしていたら、何と文庫化されてしまった。というわけで、読み始めたのだが、これが滅法おもしろかった。

    ベートーヴェンといえば、いかつい目つきにモジャモジャ頭…。小学校の音楽室に必ずといっていいほど飾られた肖像画を連想する。そして、授業や書籍で語られてきた印象的な数々のエピソード。「運命はこうして...続きを読む

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    Posted by ブクログ 2020年07月07日

    力作。面白かった。

    天才とそうでない自分。シンドラーの気持ちも分からんでもないなぁ…嘘が年月を重ね本当の事のように思えてくる。イタイけど憎めない。シンドラー。あぁ…笑

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    Posted by ブクログ 2021年06月06日

    運命のモチーフだとかテンペストを読めだとかメルツェルと交響曲8番の第二楽章とか人って話は怪しいってよく聞く、その根拠の怪しさを説明してくれているのがこの本。
    シンドラーというちょっと空気読めない系の人物が、会話帳を改竄したり、エピソードを捏造したり。それを現代の音楽業界の話風に面白く書いている。ベー...続きを読む

    0

    Posted by ブクログ 2020年04月11日

    ベートーヴェンの存在を確かめるのは本人の作った曲と、書いたとされる書物、そして関わる人たちの言葉を同じく残した書物。しかし耳が聞こえなかったベートーヴェンにとって会話帳は、僕らでは考えられなかった事実だ。それをうまく使い、人を騙すことは、目的とすることは、今の時代なら考えられることだが、その当時はそ...続きを読む

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    Posted by ブクログ 2019年02月10日

    ベートーヴェンの「会話帳」なるものがあることも、ましてや、それが書き換えられていたことも知らなかった。

    現代人的な感覚に寄せて、
    シンドラーの行動の真意を読み解いているので
    真実かどうかは定かではないが、
    面白く、引き込まれる。

    だいそれたことをやらかして
    しまうときの人間の心理って、
    部分的に...続きを読む

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    Posted by ブクログ 2018年12月19日

    ベートーヴェンの「秘書」だったアントン・フェリクス・シンドラー。あれこれ奔走して第九の初演を成功に導く手助けをするなど、本人はめいっぱいベートーヴェンに尽くしているつもりなのだが、当のベートーヴェンからはウザいやつだと思われていて、演奏会の収益を着服した、などといういいがかりとともに追い出されてしま...続きを読む

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    Posted by ブクログ 2019年06月05日

    ベートーヴェン伝説の捏造者シンドラーの視点。ベートーヴェンの会話帳を現代のSNSに見立てたアイデアがとても面白かったです。「運命は、つくれる」「19世紀のポスト・トゥルース」のキャッチコピーにも心をつかまれました。芳崎せいむさんのカバーイラストも好き(『金魚屋古書店』も好き)。

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    Posted by ブクログ 2020年11月25日

    鬼滅の刃で盛り上がっている昨今。
    私は、密かにベートーベン生誕250周年の記念イヤーで盛り上がっている。

    現在、NHKのEテレで、さまざまな番組でベートーベンを取り上げている。

    私はベートーベンが好きです。

    一昨年、稲垣吾郎さんがベートーベンを演じた舞台...続きを読む

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    Posted by ブクログ 2020年05月10日

    著者の修士論文を小説風に書き直した本。新聞に紹介されていたので予約して読んだ。クラッシックの知識はほとんどないが面白く読めた。ベートーベンの

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