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1931年9月18日の柳条湖事件を機に満洲を侵略したのちに「満洲国」建国を宣言し、戦争拡大、日米開戦への道を決定づけたともいえる満洲事変。後世からは「軍部の暴走」と評されることが多いが、本当なのか? 歴史のターニングポイントであるこの事件を、関東軍高級参謀として石原莞爾とともに決行した板垣征四郎にスポットライトを当て、その人間像や思考、彼を中心とした人間関係から分析し、真実を浮かび上がらせる。
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Posted by ブクログ
歴史とは見方によって様々な解釈ができるものだ。本書は満洲事変を中心に時の参謀であり、事件に深く関わった板垣征四郎について記載される。その満洲事変も現地駐屯軍である関東軍の野心的で独断的なものと見るか、原因の一つとなった中国(支那)の排日政策への反抗と見るかによってだいぶ評価は変わるものだと思う。歴史...続きを読むは、特に戦争に於いては、常にある方向から見れば、大義に基づいた正当な行為であり、真逆の立場から見れば侵略的な行為に映るものだ。そしてその様に捉えられるだけの二面性、三面性の意味合いを持っていることも間違いない。日本が大東亜戦争と呼ぶ「アジア解放戦争」という言い方は、如何にも正義真に溢れる民族自決を謳ったものに映るし、乏しい資源を求めて東南アジアに石油を求めた侵略的側面は間違いなくあるし、更には日本の大陸政策を良く思わないアメリカの仕掛けた罠でもあるし、何と言ってもその先々まで見据えたソ連の長期的な戦略に基づき動かされた。こうした様々な見方は、いずれも否定できる事ではなく、そうした事実が少なからず、いや大いにあったと捉えることもできるだろう。 本書が扱う満洲事変について見てみると、そもそも日露戦争後のポーツマス条約にて、ロシアから権益を譲渡された南満洲鉄道とその守備隊として配備された軍隊=関東軍により画策された柳条湖事件に端を発する。張作霖爆殺後に後継者となった息子の張学良は当時日本に対する抵抗姿勢を強め、排日運動を主導する立場にあったから、これを利用して、鉄道爆破の責任を押し付けつつ、正当防衛に見せかけた戦闘を開始する。その後、事変の拡大防止を企図する軍部中央の指示を聞かず、現地関東軍が戦線を拡大しながら満洲全土を支配するに至る。その後、この地に五族協和、王道楽土を掲げた満州国を設立するに至る。こうして見ると、如何にも中国全土の支配に向けた足がかりとして先ずは満洲を資源供給地として手に入れた、という見方ができるが、日本、そして当時日本が支配していた朝鮮半島と隣接するロシアや中国との間の緩衝地帯として地政学的戦略から押さえたという見方もできる。何より当時の国際社会は白人中心の世界、アジアの有色人種はヨーロッパを中心とした白人の搾取の対象となっていたから、アジア人自らが決起し、協力し合う必要性を強く考える人々が居てもおかしくない。一人は石原莞爾であり、もう一人は本書の主人公である板垣征四郎だ。 本書はその生い立ちから、関東軍参謀として活躍するまでの間に、当人が書いた論文なども全文掲載していく。よってページ数も500ページを超え読み応えはかなりある。本人の言葉と時代背景、性格や考え方を読み取ることで、前述した様な多面性を持つ歴史の中から、正義の信念とも取れる様な考え方を持っていたと見ることができる。本人が居ない今となっては、様々な書籍からくるイメージに偏りがちではあるが、当人が書いた論文をはじめとした様々な文章から、概ね正義心に溢れ、真の五族協和を目指していたと捉える方が自然だろう。そしていよいよ東京裁判で裁かれた後に、処刑前に書いた「銃後に望む」は、そこまで読んできて身近に感じる板垣の最後の言葉として、まるで現在を生きる我々に対しても、理想と期待を持ち、常にそこに向かって信念で進むことの大切さを語りかけてくるようである。 板垣の実際の言葉は、本文よりもやや小さめのフォントで引かれているため、それを考慮しても600〜700ページ分ぐらいの厚みに感じる。あまりフォーカスした書籍は多く見かけない分、板垣に対する認識や理解を深める良い一冊になるだろう。
これまで自分が抱いていた「満州事変=関東軍の暴走」という単純なイメージが大きく揺らいだ。実際には、当時の日本全体が満州に希望を託し、現状を打破しようとする空気を共有しており、その思いを具体的な作戦として実行したのが板垣征四郎や石原莞爾を中心とする関東軍だったことを知った。 また、戦後の裁きについて...続きを読むも強い違和感を覚えた。戦勝国が敗戦国を一方的に裁く構図は公平とは言い難く、板垣が提出した数々の証拠も、満州国の利権や民族尊重の側面を示すものであったにもかかわらず、証拠としてさえ受け付けられなかったという事実には納得できなかった。 さらに印象的だったのは、板垣が投獄された後もなお日本の未来を案じ続けていた姿である。彼の行動や思考からは、日本を深く愛し、その行く末を真剣に考えていた人物像が浮かび上がってきた。過去の歴史に学ぶとともに、今を生きる私たちも国を思い、より良い未来を築こうとする姿勢を持たなければならないと強く感じた
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板垣征四郎の満洲事変~本当に独断だったのか?~
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関口高史
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