Posted by ブクログ
2017年11月30日
プラグマティズムについて簡単な説明をおこなうとともに、現代のアメリカの政治哲学のなかでプラグマティズムが「下部構造」の役割を果たしているという著者の見方が示されています。
「プラグマティズム入門」というサブタイトルがつけられていますが、パース、ジェイムズ、デューイらのプラグマティズムについては本書...続きを読むで参照されている魚津郁夫の『プラグマティズムの思想』(ちくま学芸文庫)がありますし、ローティ以降のネオ・プラグマティズムに関しては、やはり本書で参照されているヘーゲルや現代思想に詳しい岡本裕一朗の『ネオ・プラグマティズムとは何か―ポスト分析哲学の新展開』(ナカニシヤ出版)があります。さらに本書と同じ新書で刊行されているものとしては伊藤邦武の『プラグマティズム入門』(ちくま新書)という良書があり、本書のやや不親切な解説よりも深い理解が得られるのではないかと思います。
本書の特徴となっているのは、むしろ後半の政治哲学における下部構造としてのプラグマティズムについて語っているところです。ただ、著者の考えそのものは興味深いと思うのですが、新書という厳しい紙数のなかで多くの議論を詰め込みすぎているため、個人的にはやや理解しづらいと感じるところがあります。もう少しじっくりと著者の考えが語られている本を読んでみたいと感じさせられました。