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二つの戦争、そして戦後国際秩序の行方は
ロシアによるウクライナ侵攻とイスラエルによるパレスチナへの非人道的な攻撃。目まぐるしく国際情勢が変化するなか、この二つの戦争に向き合い、プーチンとネタニヤフに逮捕状を出した国際刑事裁判所(ICC)。日本人として初めてそのトップに就任した著者は、ほどなくしてプーチンから逆指名手配を受けることにもなった。さらにはトランプ大統領の大統領令による経済制裁の脅威にさらされるなど、世界規模の戦争犯罪に向き合ってきた国際刑事裁判所はいま、存続の危機にある。
第二次世界大戦後にホロコーストに向き合ったニュルンベルク裁判、日本の戦争責任を裁いた東京裁判。二つの軍事法廷裁判にルーツをもち、国際平和秩序を守ろうと奮闘してきた国際刑事裁判所とはいかなる機関か。二つの戦争という異例の事態にどう向き合ったのか。「世界の警察」アメリカが過去のものになりつつある戦後国際秩序の行方とは――。
「世界で起きていることが日本では起きないとは限らない」。「力による支配」がむき出しになりつつある今こそ「法の支配」による安全保障が必要だ。
「ウクライナ戦争の勃発で完全に覚醒した」と語る赤根さんが、その奮闘を通じて未来への責任を語りかける。
※本書電子書籍版は刊行後の国際情勢の変化を鑑み、2025年10月に記述の一部を更新しました。
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Posted by ブクログ
全く疎い分野で、知らないことばかりだった。
今、国内でも世界的にも力の強いものがの声が大きい流れになっていることに、どうしたら良いのかと思うばかり。ICCは、特に国際的に弱い立場の国、人にとって拠り所になる唯一の存在なのでは、と思った。
「裁判が行われ、その犯罪に責任のある者が罰せられたからといって、彼ら・彼女ら(事件の被害者たち)の悲しみ、苦しみが消えてなくなるわけではない。しかし、自分たちの被害が放置されることなく、しかるべき扱いを受けるということは被害者やその家族にとって極めて重要です。人間の尊厳を守るために、私たちはこれからも活動を続けていかなくてはならない。」(p116)
そうだ、脅かされているのは人間の尊厳だ。
防衛費に膨大なお金をかけるよりも、法整備を進めたり、外交に力を入れたりすることにより、世界のみんなが気持ちよく生きていけるようになれば、と平和を祈らずにいられない。
コラム「ICCが捜査・訴追した事案」は、知らない事柄も多く、とても勉強になった。
Posted by ブクログ
ICCについて、恥ずかしながらこれまで全く知らなかった。「力の支配ではなく、法の支配を」「公正・公平に」という理念を知り、国際社会において法が果たしている役割の大きさを実感した。何百年、何千年と力の支配によって虐げられた被害者は数知れない。
一方で、日本はICCに多くの資金を拠出しているものの、政治的には慎重な姿勢を取り続けていることを知り、少しがっかりした。平和な日本に暮らしていると、平和や法の支配が当たり前に存在しているように感じてしまうけれど、それを守るために世界で何が起きているのか、自分はあまりにも知らなかったのだと思う。いわゆる平和ボケというものを、自分自身のこととして痛感した。
また印象に残ったのが、日本の若者についての言葉だった。「日本の若者は内向きだ」と言われがちだけれど、機会や知識を与えれば、世界に目を向けて情熱を持って挑戦する若者はたくさんいるという。(大学で勤められていた経験や公園等で実際に肌で感じられていた。)若者に意欲がないのではなく、意欲を向ける機会が十分に与えられていないだけなのかもしれない。
そして、赤根さん自身が「女性初の○○」とされることについて、日本の女性の職位の低さに忸怩たる思いがあると語っていたことも印象に残った。「女性初」が特別なニュースにならないくらい、女性がさまざまな立場にいることが当たり前になってほしい。
ICCという一つのテーマから、国際社会、法の支配、日本の外交、若者、女性の社会進出まで、恥ずかしながら、自分の知らなかった世界が一気に広がった本だった。
もっと自分の視野を広げたいな。日本国内だけで物事を見るのではなく、世界で何が起きていて、その中で日本がどんな立場にいるのかを、もう少し知るように今から行動を変えたい。
Posted by ブクログ
恥ずかしながら、ニュースで耳にするまでICCの存在やその所長が日本人女性であることさえ存じ上げず、なぜこのような国際的に重要度の高い機関に対し、大国アメリカが制裁を加えたのか理解したく本書を手に取りました。
ICCは法の下に平等に戦争犯罪を裁くことで、世界に平和と秩序をもたらす存在であるのに、しばしば政治的経済的問題が複雑に絡み合い、干渉を受けてしまうということが起きているのかなと理解しました。
私は法に携わるような仕事はしておりませんが、一市民として、ICCの活動を支援する立場でいたいと思います。現在、アメリカ・ロシア・中国などの大国は加盟国ではないものの、このような機関が存在しないとミドルパワー以下は強者の論理に平伏すことになります。赤根さんや、ICC職員の方々のように人として高い倫理観を持って正しいことを行いたいと感じました。
Posted by ブクログ
2026年8月18日、アメリカのトランプ政権が、国際刑事裁判所(ICC)の赤根智子所長と、検察局のアブドゥライェ・セエ上級公判弁護士の2人を、新たに制裁の対象に指定すると発表してから、SNSで「この本を買って読んだ」という人を良く見かけるようになり、気になっていた本。
本書は「語り下ろしの本」だと買ってから知った。本人の言葉そのままを期待している人にとっては、もしかしたら少し期待はずれの本なのかもしれない。しかし、国際刑事裁判所(ICC)という組織について、全く知らない私からすれば、この本は良い意味で熱が入りすぎておらず、要点がかいつまんであってとても読みやすかった。編集部が作成したという「コラム ICCが捜査・訴追した事案」など、本文の内容を補填する資料が間に挟み込まれているのも良い。「語り下ろし」という形の本を私は今回初めて読んだけれど、入門書としてはとても良い形態の一つなのかもしれない。
2026年8月18日にアメリカからの制裁が大きく報じられたのを機に話題になったこの本の初版は2025年5月20日。一時、どこの本屋でも売り切れになってしまい、私が買えたのは2026年9月5日の第5刷の版のものだった。
冒頭は2023年夏、当時ICCの裁判官だった著者が、日本へ一時帰国していた際、NHKの速報で自身がロシアから指名手配されたということを知ったという話から始まる。そこから、自分の仕事がどういうものかについて、戦争犯罪とは何を指すのか、国際刑事裁判所の成り立ち・その存在意義、自分の生い立ちから現在の社会への問題提起、未来への希望などが綴られている。
>法律の専門書のような硬い内容とするつもりはありません。そのため法律的にはやや不正確な部分も残ってしまうかもしれないと思います。
(赤根智子・著『戦争犯罪と闘う 国際刑事裁判所は屈しない』p.27~p.28)
著者自身がこのように書いているように、とても取っつきやすい内容の本となっていた。
しかし、ロシアから直接スパイが送り込まれてきたり、さらにはアメリカからの厳しい制裁で電子システムが思うように使用できず、限りある人的資源が紙での書類仕事に忙殺されたりしているという現状だとさらっと書かれているのを読むと、自分の日常とはあまりにも違っていて目を見張ってしまう。国際刑事裁判所がそんな風に常に存続の危機にさらされている場所だとは全く知らなかった。
日々のニュースを聞いていると今もジワジワと状況は悪くなっている部分があるのかもしれない。先日、国連では深刻な資金不足に見舞われていて、ボロボロのイスに座っているというニュースを耳にした。自国の景気が悪い時に国際秩序に使える予算は無いと、強国がどんどん国連機関から足抜けをしている風潮を感じている。ICCもまたそうした流れの中で支えを失いつつある。
このような小さい話に落とし込んでいいものか、すこし気が引けるけれど、ふだん払っている町内会費に意味があるのかと問いたくなることはある。しかし、実際にそれが「役に立ったな」と実感するのは災害等の有事に私が見舞われた時だろう。
政治的意図に左右されない公正な裁判が虐殺の抑止力となること。国際秩序に貢献するということは、あきらめることなく、地道な活動を続けることがまず第一歩なのだと思った。私は国際秩序に貢献できるようなスキルを何も持ち合わせていないけれど、せめてそういう世論の一端を担っていたいな、と思わせる一冊だった。
様々な困難に対する赤根さんの不屈で前向きな姿勢にも大いに励まされる本でもある。内容的に高校生ぐらいの学生さんにもおすすめできる一冊なのではないかと思う。
Posted by ブクログ
国際刑事裁判所(ICC)所長:赤根智子氏によって綴られた新書。編集部作成のコラムページ『ICCが捜査・訴追した事案』有り。
プーチン大統領に逮捕状を出した結果、ロシアから指名手配される…ことを休暇中に見たTVから知る。そんな場面から始まった。
国際刑事裁判所の成り立ち、その役割、現在置かれている状況が綴られ、ご自身の来歴と未来の展望までも。一貫していたのは、理不尽な状況に、忖度せずに対処し、声を発すること。
法科大学院で教鞭を執っていらした時の教え子達が、実際にハーグまで訪れ、帰国後も周囲に働きかけて、声明を出すことに力を貸し、メディアにも話し…様々な活動で赤根氏を支援していた。そして赤根氏は、そのさまを「法の支配」を支える立場に回ったと、彼らは既に私を超えている…と評す。(p214参考)それが一番、胸に深く刻まれた話だった。
【下記:主に説明】
まず国際刑事裁判所のことをよく知らなかった、ということが分かった。
ICCは、戦争犯罪や人道に対する犯罪などを行った個人を、ローマ規程(「国際刑事裁判所に関するローマ規程」という名称の国際条約)による国際的枠組にもとづいて訴追・処罰することをその使命とする裁判所です。設立は2002年。オランダのハーグに本部があり、現在、125ヶ国が締約国となっています。日本は2007年にメンバーに加わりましたが、アメリカ、中国、ロシアなどは締約国ではありません。
(「戦争犯罪と戦うー国際刑事裁判所は屈しないー」p12から引用)
一昨日読み終わったばかりで、まだあまり感想はまとまっていないが、“不屈”という言葉はこの方の為にあるのかもしれない、と思った。けれど同時に、それは国際刑事裁判所所長一人の肩に託すものではなく、平和を望む全ての人々が目指すものだ、とも思う。日本は拠出金第1位の国であり、赤根氏に裁判官選挙への出馬を打診した国でもある。でも今は、安全を守ろうとすることができていない。法の支配から力の支配へ戻りつつある今、その逆行を、許してはならない。
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