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敗戦の屈辱に耐えながら炎天下で重労働を強いられた兵士たちは、飢えと望郷の日々の中で何を考え、どう行動したのか。英軍によるジャワ・シンガポール・ビルマ抑留から、米軍によるフィリピン抑留、豪軍によるラバウル抑留まで、日本軍人・軍属の貴重な日記類を読み解き、南方抑留の歴史的背景と過酷な実態を明らかにする。
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Posted by ブクログ
1945年のシンガポールにて、記録映画「デリーへの道」の撮影に来ていた報道部の小津安二郎が、戦局に話が及ぶと「"デリーよりの道"になってしまいましたね」と肩を落としたというエピソードが紹介してある。その懸念通り、戦局悪化で撮影は中止され、やることのなくなった小津は日本軍がイギリ...続きを読むス軍から接収したアメリカ映画の鑑賞にふけっていたという。「デリーよりの道」のエピソードは、日本興業銀行から南方派遣を命じられた園部達郎の日記をまとめた『レンパンに生きて』(1979)より、アメリカ映画を観ていた話は西原大輔『日本人のシンガポール体験―幕末明治から日本占領下・戦後まで』(2017)より引いてある。ただし、『レンパン』の方は非売品なので確認面倒かも。 また、抑留中の食事の貧しさを少しでも紛らわせようとして、内地のお菓子の名前を次々と挙げては、聞き手の「咽喉をぐいぐいならし」た話を歌人の橋本徳寿がしている。具体的に固有名を羅列して書いてあって、読んでいるだけで涎が出てくる。虎屋の羊かん、不二家のシヨートケーキ、中村屋の肉饅頭、梅月の汁粉、風月の栗饅頭といったお菓子屋の名物や、津軽の水飴、山口のういらう、長崎福紗屋のカステラ、神戸の瓦煎餅、伊勢の赤福餅、札幌五番館のバターボール、台湾高雄の落花生飴、琉球の黒糖板などのご当地銘菓がずらりと並ぶ。『刑務所の中』という映画で、正月に振る舞われる年に一度のごちそうについて受刑者たちが事細かに話している楽しい(切ない)場面があったが、あれと似ている。
シベリア抑留だけではなかった南方の抑留。 「アーロン収容所」「虜人日記」で漠然とひ知っていたが、敗戦後も抑留され労役を課された旧軍人軍属たち。貴重な一次資料を駆使して抑留生活を再現していく。 虐待された元捕虜と立場逆転した降伏兵。戦争という狂気の中で復讐と和解。歴史になるにはまだ早い近現代について...続きを読む考えさせらました。
林禮二さんの手記が秀逸なので紹介する。 参謀とは、人柄を知らない時には、全く素晴らしく偉い人に思はれるのだが、近附けば近附くだけ嫌になるやうな人柄の人が多い。軍が国民と全く遊離してゐるといふ時の軍人の典型は参謀である。全くの利己主義、独善主義、そして傲慢、而も立身に対する極端なる希求。早く、こんな型...続きを読むの軍人の消去るべき日の来らんことを」(一九四五年七月六日)、「軍人の視界は前方にだけ向いてゐる。その癖何でも知っていると自信満々。危いことはこの上もない」 92ページの将校の人物描写もおもしろい。 今も昔もこういう人困った上官いるよねという秀逸な描写。 水木先生の「総員玉砕せよ!」で登場する人物が実在の人物として記述されたことに驚きました。 木戸参謀松浦参謀だったのかと。参謀は、適当な時に上手に逃げます。という記述も生々しい。 多数の注からもわかるように、よくぞここまで文献を調べて1冊の本にまとめられたなと尊敬する。 間違えば、遺族から訴えられるリスクも承知の上できちんと根拠を持って記述されてるあたりが素晴らしい。本当に大変だったのではないかと思う。 我々は、事実を記録に残す責任があると思う。
抑留といえば「シベリア抑留」ばかりが思い浮かぶが、南方でも抑留されていた兵士たちがいたことが頭になかった。日記類を読み解いたこの本は色々なことを知ることができ、また感じられることがあり、戦後80年の今年、とても良い本であった。
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南方抑留―日本軍兵士、もう一つの悲劇―(新潮選書)
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林英一
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