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一九一七年の革命から生まれ、一九九一年に崩壊した社会主義国家・ソ連。二〇世紀の歴史上に巨大な存在感を持つこの国は、いまだ「冷戦の敗者」「失敗した社会主義国」「民意を無視した全体主義国家」といったイメージで論じられる。しかし、その歩みの内側からたどると、従来の印象に収まらない様々な試行錯誤がおこなわれていたことが見えてくる。簡潔で奥深いソ連史入門。
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Posted by ブクログ
名前を知っているだけの旧ソ連の歴史や指導者たちについて その善悪も入門レベルで知ることが出来るように思う。 ”悪”とみなされることの多い旧ソ連。 結果としてうまくいかなかった事実は揺るがないが、 民意を汲み取ろうとし、民意に応えようとした事実もまた揺るがない。 教科書だけでは分かりえない一国の歴史の...続きを読む一面を、 もっと興味をもつように書かれた一冊
偉大なゴルバチョフ、そしてスーパー独裁者スターリンの足跡と、ソ連の社会主義における計画経済を深くしれた。
淡々と中立的にソ連の通史を扱う。極端な事例からは教訓を多々得ることができる。現代日本にあまり引きつけすぎるのは良くないものの、いくつかの点では非常に示唆的だった。本当にソ連というのは、理想社会だったのだなあ、ということが強く残った。共産主義自体は日本以外のどこかでまたやってみてもいいんじゃない?とは...続きを読む無責任に思う。
[壮大なる実験を振り返って]間違いなく20世紀の「主役」の1つであろうソ連。その誕生から崩壊までの出来事を、内政的にも外政的にも網羅的に記述し、なおかつイデオロギー色に過大に左右されない評価を下そうと試みた作品です。著者は、ソ連史を専攻し著書・論文ともに数多く手がけている松戸清裕。 まだ崩壊から...続きを読む20数年しか経っていないにもかかわらず、どこか「歴史」となってしまった感じの強いソ連ですが、本書ではそのソ連が何をしたか、またソ連に何が起きたかを主に時系列的に丹念に記しています。そのため、ソ連に関する前知識がまったくない方への入口として非常に有意義な一冊だと思います。記述が若干淡白で教科書的な気もするのですが、ただでさえなにかとイデオロギーの問題がつきまとうソ連という存在を記述するには適切なのかもしれません。 また、ソ連の行ったことなどについて評価を下す際、本書においてはなぜ著者がそのように考えるかを明確にしてから記録してくれているため、黒白二分法に依らない評価を読者自身が行う際の手助けを提供してくれているように思います。東欧や中東におけるロシアの影響力が高まる中で、(著者にとっては意図せずしてかもしれませんが)今改めて本書を手に、ソ連を振り返る価値は十二分にあるのではないでしょうか。 〜ソ連における政策は、民意によって形成されていたわけではないが、民意をまったく考慮しないものでもなかった。〜 参考文献が充実していたのも嬉しい☆5つ
1917年のロシア革命で実権を握ったソビエト社会主義共和国のレーニンが中心に社会主義革命を進めていく。思い半ばで亡くなりスターリンが後を継いで進めていくが、第一次、第二次世界大戦の疲労で計画通りには経済が回らなかった。また国営のコルフォーズ、ソフォーズも計画は達成できずに食料不足から餓死者まで出てし...続きを読むまう。対戦後は軍備に大量の予算を投入しアメリカと核開発で張合い冷戦時代を一方の雄として過ぎる。1990年にゴルバチョフの時に経済的に限界になり社会主義国家の限界を示す。しかし福祉には力を注ぎ自由主義圏では参考にせざるを得なかった。 非常に解りやすく纏めており参考になった。
本書は、所謂“政治史”、“外交史”というような分野に止まらず、“経済史”、“社会史”とでもいうような分野に関して詳しい。それが興味深い。 「過ぎ去った体制(=ソ連)に関して読んでも…」と切捨てず、本書に付き合う価値は存外に高いように思う。現在、“ソ連”が語られる場面は非常に少なくなっている訳だが、...続きを読む本書は「好いタイミング」で登場したかもしれない…
ソ連に対する私のイメージは、「冷戦の敗北者」「独裁的な社会主義国家」というステレオタイプなものだったのだが、本書を読んで、自身の単純な認識を改めることになった。 特に興味深い点を2点挙げる。選挙の祝祭としての役割と環境問題である。 一党独裁制であったソ連だが、人民の抑圧という反面、民意を汲み取る...続きを読む努力を欠かさなかった点は甚だ意外であった。選挙は、ソ連共産党への追認に加え、人民統合の舞台装置として活用されていた点が面白い。 また、利潤の最大化を目的としない社会主義国家であっても、環境問題が深刻化していたことは逆説的に感じた。日本と異なり、法整備がなされて尚、環境破壊が続いた点に、ソ連の環境問題の独自性があると思う。 この他にも、大テロルの要因、大祖国戦争の実態、雪どけ後の経済停滞、ソ連崩壊の理由が端的にまとめられており、ソ連史の基礎知識習得に大いに役立った。適宜再読し、20世紀の大国への理解を深めていきたい。
社会主義というものが実際にはどのように運用されたのかということに興味があり読みました。 ソ連の成立や崩壊は二度の世界大戦や冷戦が時代背景として大きくあるのでそれが経済に与えた影響が甚大だったことがよくわかりました。 人民の生活なども含めて簡潔に動向がまとめられており、読みやすかったです。
「ソ連」という言葉。懐かしくないですか? 1972年生まれの僕としては、17歳くらいまで存在した国。有名だった国。 そして、忽然と無くなっちゃった国。 「戦争と平和」を読んだり、ドストエフスキーは読んだりしたのですけれど、「良く考えたら、詳しいことは全然知らない」と思って、ふっと衝動買い。 著者の松...続きを読む戸さんという方は、1967生だそうなので、2017年現在50歳くらいですね。 西洋史、ロシア史の研究家で大学教員さん。 去年だったか、「嘘つきアーニャの真っ赤な真実」という本を読んで。冷戦時代の東欧で少女時代を過ごした米原万里さんの自伝的エッセイ。 ソ連時代の東側で少女時代を過ごした各国の人々が、ソ連崩壊以降にそれぞれに流転して大人になっている有様を描いて大変に面白かった。 あの本なんか、「ソ連史」を知ってから再読すると、またしみじみとオモシロイんだろうなあ。 # 全般として、読み易く、そして大胆に省略しながらひたすら叙事的に語ります。 ぢゃあツマラナイかと言うとそうでもなくて。 細部のドラマに入らない代わりに、「どうしてそうなったのか?」という「理由」はちゃんと説明してくれます。 つまり、お金。食糧。生活事情。軍事バランス。政治。メンツ。 なんで、簡潔で短いのだけど面白い。納得しながら読み進められます。 # 一読、いちばん印象に残ったのは、 「冷戦の頃は、アメリカと並んで、二大大国、というイメージを持っていたのだけれど、内実で言うと、アメリカと比べて貧しい国だったんだなあ」 ということです。 それだけでも大いに発見でした。 # それから、全体を通して、 「この時期にまだ青年だったゴルバチョフは、こう回想している」 みたいな感じで、ゴルバチョフさんの目線がたびたび登場します。 これはこれで、読み手としてはライブ感があってわかり易かったです。 当然だけど、ゴルバチョフさんはスターリン時代もフルシチョフ時代も知っている訳で。 変な話ですが、ものすごくゆるい、「ゴルバチョフが主人公の現代歴史大河ロマン」を読んでいる錯覚(笑)。 ####################### 以下、備忘録のようなもの。 # ロマノフ王朝だった1914年、第一次世界大戦勃発。 帝政ロシアも参戦します。 まず、この時点でまだ純然たる「帝政」であっただけでも、大まかに言うと、最新モデルの経済先進国ではなかったんですね。 思ったより全然長引いて、総力戦になってしまった第一次世界大戦。 さらに、これは、「祖国防衛戦争」ではなくて。 国際政治利害ではじめちゃって、引っ込みがつかなくなった感じの戦争。 (どこの国もですが)厭戦気分が国民に広がります。 そして、この本を読んで思ったんですが。 2017年の日本からは想像も出来ないくらいに、食料がとにかく足らなくて、生活環境が悪かった。 それで、二月革命。 ただこれは、不徹底な革命だった。 そのときに国外にいたレーニンさんは、大慌てで焦って帰国。 扇動して軍部と繋がって、史上初のマルクス主義革命。 「ボルシェビキ革命」。これが十月革命。 まずここで、大事なのは、マルクスさんは、 「資本主義が発達して、勝ち組負け組の格差拡大など、欠陥点が多くなり、共産主義になる」という理想?というかを描いたんですが、 このときのロシアは全くそういう状況ではなかったんですね。 全然まだ流通も商業も、近代的インフラが無くて、貧しい広大な国でした。 そこで、権力をレーニンが握りますけれど、面白かったのは、 「えっーと、どうしようかな」 という感じだったんですね。ほんと。 イデオロギーとしての理想はあるけれど、何しろ前例が無い。 その上、マルクスさんの前提と違って、圧倒的に貧しい。まだ資本主義が熟していない。というか、始まってすらいないんぢゃないかレベル。 とにかく第一次世界大戦から「いちぬけた」します。戦争している場合ぢゃなくて。国内の反革命勢力との内戦優先です。 大まか言うと、「全ての農地は、工場は、国のもの」ということなんですが、歓迎する人も、反発する人もいます。 そこで細かくいろいろ、制度を修正していきます。 とにかく、恐ろしいくらい巨大な国。そして、国民の九割は教育も行き届いていない、迷信深い人々。 別段、この段階でレーニンもスターリンもトロツキーも悪役ではなくて、 「どうやったら国民みんながいちばん幸せなんだろうか。考え方としては、資本家が搾取して、勝ち組負け組に引き裂かれるドッグレースな社会より、共産主義の方が絶対良いんだよなあ」 と、模索する訳です。 模索しているうちに、飢饉でも起こったら一発で国民的窮状に陥ります。 その上、イギリスやアメリカなどを筆頭に、 「資本家から全財産奪うような前提の国家だあ?そりゃアカンやんか」 ということになって、色んな形での嫌がらせというか反発がはじまります。 ソ連側としては、 「俺らのこの思想でみんなレッツ革命」という気分で、仲間を増やしたかったのですが、なかなか上手く行きません。 それでも第一次世界大戦で列強が疲弊していたこともあって、どうにか政権は持ちこたえます。 どうにか持ちこたえているうちに、スターリンの世の中になります。 でまあ、たしかにスターリンさんは、権力暴力で反対派を根こそぎ虐殺するわけです。 この1930年代の恐怖政治はすごいですね。 歴史は色んな必然と、それを上回る偶然で作られているんだと思います。 ナチスが出てきて第二次世界大戦が始まります。 とにかく内政、工業化で必死なソ連なので、日本ともドイツともいいように外交して、 「まあ、周辺の小国は好きに切り取っていいから、お互いに仲良くしようぜ」 という内容の、秘密条約を結んでいます。 この秘密条約は、ポーランドさんとかからすると、トンデモナイひどい話です。 ところが、膨張し続けるヒトラーがソ連に攻め込んできます。 この、独ソ戦は、すごかったんですね。 とにかくモスクワ直前まで攻め込まれて、ソ連は蹂躙されます。 もう、ナチス側も「財産を収奪する」ためにやってきたようなものなので、まさに見るも無残に荒らされて、殺されて、無茶苦茶になります。 なんだけど、ナポレオン以来の冬将軍、ソ連という地理的な奥深さから、最終的には押し返して、ソ連は「勝ち組」に入ります。 なんですが。 アメリカは、真珠湾くらいしか、「アメリカの国土」は荒らされていません。 なんだけど、ソ連はもう、むちゃくちゃにされちゃったんですね。 なので、終盤戦はその恨み?ぢゃありませんが、逆に無茶苦茶に簒奪します。 とばっちり?を食ったのは日本(満州国)ですね。 まあ、条約があったとはいえ、この頃の不可侵条約なんて、どっちかがいずれ破棄することが予想されるわけだから、防衛機能を持たないのに広大な植民地を大陸に持っていた日本側の国家軍事経営者がどうなのよ、と思いますが。 とにかくシベリア抑留など、満州にいた日本人たちは田んぼを刈り取られるように虐殺されて拉致されちゃいました。 そして、スターリンさんは、1930年代に身内を大虐殺して恐怖政治を敷いて、貧しい大国をかろうじて率いていた訳ですが。 1940年代に、文字通り「祖国防衛戦争」を率いて、一応勝ったことになります。英雄ですね。 そして、冷戦構造が始まるわけですが。 「ソ連は、独ソ戦で国土の西半分を虐殺されてしまったようなものなので、そのトラウマから、とにかく領土を接する隣国は防波堤として事実上属国にしておきたかった」 という視点は、なるほどなあ、と思いました。 なんていうか。 「攻撃していくため」 ではなくて、 「あの悲惨な思いをもうしたくないから」 という防衛思想なんですね。 ま、これはアメリカも同じなんだと思います。 # そして、また、戦争の焼け跡からの工業復興。 えらいこっちゃです。 そして、「共産主義・社会主義の卸元」という立場ですから、何かとアメリカ側とやりあいます。 何しろ、アメリカは原爆もってますから。 スターリンは大いに無理をします。 (スターリンのあとのフルシチョフも) なにしろ、「ソ連共産党が経営している広大な会社=ソ連」みたいなものですから。 国民の消費的幸せとか、食料の確保とか、ライフラインの普及とか。 そういうのがまだまだなのに、無理して重工業軍事産業に金をつっこみます。 原爆、水爆、大陸間弾道ミサイル… と、軍拡レースです。 # あと面白かったのは。 「スターリンのおやっさんの恐怖政治路線は、誰も踏襲しなかった」 ということですね。 あまりにインテリを殺しすぎて、産業としての社会の効率が悪くなった、というのもあるでしょうし。 やっぱり、あんなに殺したら、そりゃ不満もでますがな、という感じなんです。 フルシチョフだってその後だって、スターリンに比べたら分厚いカリスマ性も薄いので、徐々に雪解け路線になります。 # そして、50年代60年代は、それなりに重工業主体になんとか成長してはいたんですが。 やっぱりちょっと田舎にいったら、電力も下水道もない、なんてことがザラにあって。 都会でも、金はあっても買うものが市場にない。 ひどい話です。 # そして、「国家まるごと官僚主義」みたいなものですから。 行政ノルマの達成に追われて、ごまかしが横行。 ノルマさえ達成すれば、あとは頑張っても収入が変わらないし、豊かさも実感できない。 結果、どんどん勤労意欲が低下していく。 面白かったのは、「商品がない。闇市場にはある。商品が買える、という情報があったら、みんなどんどん仕事なんか勝手に休んで行列に並ぶ」というライフスタイル。 その上、戦争で男手が恐ろしく減っています。 (その前にスターリンが勢い良く内部虐殺もしていますしね) なので、労働市場で言うと、売り手市場なんです。 ちょっとさぼったからって首にしてたら、必要なときに人手がなくなる。 経営者?側も、ノルマさえ達成していたら、それ以上がんばってもしょうがない。 (そのノルマ達成も、ごまかしが横行しています) なので、首にならない。 ほんとにひどかったみたいですね。 # で、そういうことを、政権側も自覚してたんです。 「もっと食料とか、生活必需品を生産して分配していかないと、みんな不貞腐れて働いてくれないよ」 みたいなことなんです。 50年代60年代に、西側陣営も一斉に戦争の焼け跡から経済復興して、きらびやかに商品が出回っているわけで。 なんだけど、こうなっちゃうと、 「広大な荒れ地と膨大な無学国民を抱えてもともと貧しいのに社会主義やっちゃった上に、重工業がんばらないと冷戦レースに遅れちゃう」 という足かせが重い。 どうにもならない。 その上、今と違って、「うち、こんな困ってんですよ」という情報が、あんまり外国にバレないから。 やっぱりねえ。 自分の家が実は貧しくて火の車だって言うことは、他人様には隠したいですしね。 見栄をはっているうちに、どんどん国家の経営状態は悪くなっていく。 (見栄をはる=アフガン出兵とか) # でも、「どうにかせんならん」というのは政権内部でもあったんだと思います。 そうじゃないと、ゴルバチョフに託さないですよね。権力。 1980年代、ゴルバチョフ。 もう、国内ぐちゃぐちゃ。 流通も出来てなくて、街では小麦粉がないのに、倉庫で腐ったりしています。 官僚主義にメスを入れて、自分への批判も含めて許可して情報公開して。 一部、事実上の民間会社を許して。 お金ないんだから、軍事費削って アフガン撤退。米ソ協調。 「社会主義(という名のものとの独裁的官僚主義)のせいで、ハッピーぢゃない暮らしをさせられている、ソ連及び周辺諸国の人々」 の、打倒現政権、西側合流の「東欧革命」が1989−1990。 # つまりは、ゴルバチョフが、 「もう見栄はらないよ。とにかく金がないねんから、小さな政府に仕立て直さなあかんねん」 ということですね。 ただ、ここぞとばかりに20世紀初頭から抑え込まれてきた、周辺諸民族国家が独立求めて立ち上がってきます。 ソ連邦の解体までには、ゴルバチョフさんもバルト三国とかに軍事介入していますから、ここまで早く、激しく、「ソ連」というヤクザ一家が壊滅するとは、意外だったんでしょうね。 # こうやってふりかえると、 「いやあ、貧しいのに、無理してきはったんやなあ…」 というのが率直な感想。 なんかほんと「お疲れ様でした」という感じ。 興味を持って読むと、この手の新書、お手軽に俯瞰図を見せてくれて、なかなか面白いものです。
概観がコンパクトにまとまっていて、他の本で挫折した私には程よい長さでした。基礎を一からというより、ある程度歴史や政治に対して前知識があった方が読みやすい内容だと思います。
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