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集団をつくり、他者との関わりをもって生きていこうとする性質である「社会性」……本書では、昆虫が苦手だった筆者がすっかり魅了され、10年以上にわたって見つめてきた、アリの不思議な世界をご紹介します。 【目次】第1章 なぜアリを研究するのか?/第2章 アリの生活史/第3章 孤立アリは早死にする/第4章 鍵はすみっこ行動/第5章 アリから学ぶ社会と健康
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Posted by ブクログ
タイトルに惹かれて購入。 蟻を細胞レベルで考察する機会なんて、この本を読まない限りはないかと思う。 ニッチな研究に人生を捧げる研究者に敬意を抱きつつ、孤立アリにおけるさらなる解明を期待したい。
とてもわかりやすい文章で、生物研究の手法やアプローチの最前線を垣間見ることができた。DNAの解析や改変方法がここ10年ほどで、ノーベル賞を受賞するレベルでとても進化している。人の病気や寿命などに恩恵を得られる日も、そのうち来るのかもしれない。。と思った。また、全く知らなかったアリの生態を様々知ること...続きを読むができた。 ひとりぼっちになったアリは、体内の肝臓に似た臓器に活性酸素が蓄積し、壁ぎわ(すみっこ)に留まるようになり、グループで暮らしているアリたちより何倍もの速さで死んでしまう。これは実験に基づいた事実。ただそれがなぜかは今後の研究が待たれる、とのこと。 以下、トピック。 ・育てやすく、1世代が短く、小さな生き物(ショウジョウバエなど)はモデル生物と呼ばれ、すでに遺伝子情報が解読されており、その遺伝子を改変することで様々な事象を観察・実験できるようになっている。世界の何ヶ所かでモデル生物のリソースセンターが運用されており、特定の遺伝子改変を施された生物が維持されていて、それを買うこともできる。たとえばアルツハイマー病の治療について、この手法でも研究がなされている。 ・筆者は、人は「なぜ他者との社会的な関わりが行動や生命機能、さらには生死という運命や寿命にまで影響するのか」について、アリの社会性を研究することで解明しようと試みる。 ・あるアリは、砂に埋もれた他の個体を見つけた時、同じコロニーのアリは助けようとするが、別のコロニーのアリは助けようとしない。つまり、家族とそれ以外を見分けた上で、仲間を積極的に助けようとする習性を持っている。また、シロアリを集団で襲って捕食する習性を持つあるアリは、戦いで負傷した仲間のアリを、その怪我の程度を判断して治療する。 ・あるカビに感染したアリは、重篤の場合、仲間に感染させないように、巣には戻らない。軽微なアリは巣に戻るが、他の未感染のアリはこのアリに積極的に近づきコミュニケーションする。微弱感染個体と接することでワクチン効果を得ているのではと考えられている。 ・以下、クロオオアリについて。子供を産まない労働アリほ、たまご、幼虫、蛹の世話や、ゴミや死骸を一箇所のゴミ捨て場に集める内勤と、巣の外で餌探しなどを行う外勤で分担している。若いアリは内勤で、歳をとると外勤へと労働内容を変化させる。年老いた個体が外に出て危険な仕事を担っている(アリの世界、容赦ない)!また、アリの数に関係なく、2割が外勤、残りは内勤になる。コロニーの状態を把握して指示を出している個体はいない。この仕組みにはまだよくわかっていないことが多い。 ・ショウジョウバエと異なり、アリは交配・繁殖が難しい。なぜか。クロオオアリは、あるコロニーで女王アリとオスアリが育ち、一年の特定の時期(東京なら4月後半から5月)の雨が降った翌日でよく晴れて風の静かな時に巣から飛び立ち(結婚旅行)、空中で交尾する。オスアリはそのまま死に、女王アリは新たな巣を作る。このように自然条件が整う必要があるため。 ・現在のゲノム編集の方法。CRISTR-Cas9というゲノム編集システムにより、特定の遺伝子の改変が可能になっている。 2012年に発表され2020年にノーベル化学賞を受賞した方式で、食品や医療などへの応用研究が急速に進められている。 ・アリをコロニーから離してそれぞれ、1匹、2匹、10匹ずつ孤立させ、餌や生存環境は整えておき生存期間を調査。結果、前者から順に生存期間が長くなる。1匹と10匹では約10倍異なる。また、アリ1匹に幼虫を数匹配置すると、明らかに1匹だけの場合より生存時間が長くなった。1匹だけと比較して3倍長く生存。また1匹の場合、巣に戻らずずっと外をうろうろしていたり、壁際(すみっこ)に長く止まったり、消化機能が低下するなども観察されている。 ・トランスクリプトーム解析。細胞が今どんなタンパク質を作るまたは作ろうとしているかを、細胞やmRNAの情報を網羅的に読み取って、遺伝子の発現情報を一括取得できる技術。これにより、生殖活動有無や外勤内勤などの行動の違いにどの遺伝子が関係しているか調査しやすくなった。また、同じような発現変化を示す遺伝子をグループ化する手法(WGCNA解析)なども利用し、孤立アリとグループアリの差異を特定していく。 ・アリは、その役割や月齢に応じて体内の脂肪量が変化する。若い内勤の労働アリの脂肪は多い、それは女王アリを養うという大切な役割を担っているからと考えられる。年取った外勤のアリは脂肪が少ない。また、結婚旅行前の女王アリは多いが、同タイミングのオスアリは少ない。脂肪量が行動変化を起こすのか、行動が変わって脂肪量が変化するのか、アリの場合はまだわかっていない。ハチの場合は脂肪量が変化した後行動が変化することがわかっている。 ・1匹ボッチアリの場合、脂肪体が活性酸素によって酸化してダメージを受けることで寿命が短くなっている。このアリに、抗酸化剤(メラトニン、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド)を投与すると、寿命が著しく延長することがわかった。ちなみに人間も、老化や睡眠障害、様々疾患によって酸化ストレスが引き起こされる。 ・また、抗酸化剤剤を飲んだアリは、壁際に留まる時間が有意に少なくなった。これは、酸化ストレスが起こった結果として壁際に留まる行動が発生した事の証明となる。今後は、脂肪体(ヒトの肝細胞に近いと考えられている)のなどの機能の性質をより理解する事で、孤立環境に対してより耐性を備えた体づくりを促進できるようになるかもしれない。
『ぼっちのアリは死ぬ』というタイトルから、心理学の本かと思って手に取ったが、意外にもサイエンス本だった。 たしかに、アリの“気持ち”を測ることはさすがにできないものね。 本書でいう「ぼっち」とは、集団の中で浮いている個体ではなく、隔離された1匹のアリのこと。 1匹になると子孫を残すことも、社会的な...続きを読む役割を果たすこともできなくなるので、「それはストレスだろうな」と思ってしまうが、本書はあくまで科学的アプローチで、からだに起こる変化に焦点を当てている。 孤立環境に置かれたアリでは、脂肪体で活性酸素が発生し、結果として短命になる――どうしてそうなるのかは、今後の研究に委ねられているという。 以下、枝葉ながら興味深かった点: ・アリ社会は基本的にメスで構成されており、オスは生殖を終えると死ぬ。 ・女王アリは10年生きるが、労働アリの寿命は1年ほど。 ・女王アリ以外は子どもを産まない。「子どもを産める=メス」という定義ではないのか、と少し不思議に思った。 ・働きアリには内勤と外勤があり、リスクの高い外勤は高齢のアリが担い、若いアリは巣の中で赤ちゃんの世話をする内勤を担う。
タイトルにぞっとして購入。 ぼっちのアリは死ぬんだ。じゃヒトはどうなの? 社会性昆虫であるアリはヒトと似て、他社と関わり社会の中でそれぞれの役割を演じながら生きていく。 本書では、アリの社会構造や分業の仕組み、そして孤立したアリがどのような影響を受けるのかが詳しく解説されている。 例えば、アリは...続きを読む仲間と協力しながら生活する生き物ですが、孤立するとストレスを受けやすくなり、健康状態が悪化することが研究で明らかになっている。 孤立したアリは酸化ストレスが上昇する。さらに寿命の短縮とも深く関わっているのは、壁際に長く滞在してしまうというすみっこ行動であることが示された。 つまり、孤独したアリは酸化ストレスが増え、すみっこ行動する傾向にあり、寿命が短くなる。 すみっこ行動と寿命の関係はまだ明らかになっていないようだが、アリの行動ながらなんとなく恐ろしいものを感じてしまう。
孤独になったアリの寿命と行動パターンの研究。労働者として女王アリを奉仕し、自らは子孫を残さない役目が生まれながらにして決定されている中で、社会からの孤立が生物にどのような影響を与えるのかを理解した。
アリを1匹にすると死んでしまう現象についての研究をまとめた書籍。ヒト以外の生き物の生態に関する研究が重要ということもわかるが、1匹にして亡くなることがわかっていて、敢えて1匹にする研究がどんな風に役に立つのかわからなかった。犠牲になる生き物が気の毒になってしまう。
X上で見かけて、ほぼタイトルのジャケ買いをした書籍である。 書籍の内容はアリを題材として社会性の研究をするために、どのように実験を計画し、結果を評価するのか、その評価のための遺伝的手法と解析方法を説明したモノである。 生態学というよりは、遺伝子解析やその評価方法の説明を研究結果の論拠の説明のために多...続きを読むく紙面を割いており、遺伝子解析の基礎知識が無い人向けに解説するため苦労したのが垣間見えた。 (正直、読んでいて「なんでその結論になるんだ?」と思う箇所がいくつかあったが、 説明するためにはもっと踏み込んで解説する必要があるが断念したと認識した。)
アリ(社会性昆虫)の生態研究の成果(細胞や遺伝子のレベルの影響によりや変化)を人間にも応用可能かもしれない、という展望の今後が楽しみ。
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ぼっちのアリは死ぬ ――昆虫研究の最前線
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