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平均余命15カ月。手術や抗がん剤、放射線では治せない悪性脳腫瘍「膠芽腫」に3つの最新治療法が挑む。原子炉・加速器を使うBNCT。楽天の三木谷浩史が旗を振る光免疫療法。そして「世界最高のがん治療」と礼賛されるウイルス療法。産学官を横断して取材を重ね、「がんvs.人間」の最前線をまるごと描き出すノンフィクション。
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Posted by ブクログ
私には、ノンフィクションで「この作家の本は必ず手に取る」と決めている著者が何人かいるのですが、本書の著者下山進氏はその一人です。 今回、下山氏がとりあげるのは癌治療。現在、癌の標準治療として国際的に認知されているのは、外科手術、抗癌剤、放射線の3方法です。本書冒頭で紹介されている「膠芽腫」という癌は...続きを読む”最も難しい癌”と呼ばれ、平均余命はたったの15か月しかありません。発見されて、速やかに外科手術を行っても、みるみる再発し、そして死に至るという経過をたどります。この膠芽腫に、上記の標準治療以外の方法で挑んだ関係者を、丹念に描いたノンフィクションです。 採り上げられる治療法は、ホウ素中性子補足療法、光免疫療法、ウィルス療法の3つです。それぞれの治療法の詳細の説明はレビューでは割愛しますが、本書はそれぞれの治療法の開発の部分よりは、それが厚生労働省の治験を、いかにクリアしようとしているのか、というプロセスに重点を置いています。 癌の治療には様々な民間療法(”○○でみるみる癌が消える”みたいなうたい文句のやつ)が存在します。しかしそれらは厳密な治験を経て効果が確認されておらず、その治験をクリアしたのが冒頭の3療法です。しかし治験の基準は本書を読むと厳密に科学的に進められるだけではなく、時の政権の方針や、研究者の政治力など、科学的な側面以外の部分が大きく寄与していることが分かります。そういう医療の政治的な部分と、現場の関係者が不治の病に向き合って開発に携わる科学的な部分と、非常にバランスよく、また両者を密接に関わりを持って描いているノンフィクションでした。 癌や免疫に関する知識がそれほどなくても、読み通せると思います。光免疫療法では、楽天の三木谷氏が非常に重要なキーパーソンとなるのですが、どういう関わりで登場するのかは、是非本書を手に取って読んでみてください。 今後、これらの3療法が、どのような経過をたどるのか、興味を掻き立てられる医療ノンフィクションで、今回も下山氏の手による本という期待を裏切らない内容でした。
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