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ヒトの脳に比べてなきに等しい昆虫の脳。ところが、この一立方ミリメートルにも満たない微小脳に、ヒトの脳に類似した構造が見られることが明らかになってきた。神経行動学は、ファーブルやフリッシュを驚嘆させた「陸の王者」の能力を、精緻な実験によって脳の働きと結びつけ、ダンスによる情報伝達、景色記憶、空間地図形成能力など、昆虫の認知能力の解明に乗り出している。本能行動の神秘に迫る最新生物学の成果。
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Posted by ブクログ
あまり知られていない事柄も含めて、昆虫の脳についての一般的な知識をもれなくコンパクトにまとめた印象。 左右と額の三つ目や錯視も扱う。個体と群れかによって、変温動物だが恒温動物としても受け取れるというあたりはおもしろい。 『群れは意識を持つか』でも考えさせられたが、昆虫は個と群の社会性の問題があるの...続きを読むで、読んでいてどれも飽きない。
バイオロジーのバックグラウンドがないと全てを理解するのは難しいが、説明にも手抜きがない力作。長年、真摯に昆虫研究に打ち込んでこられた様子が垣間見えて好感が持てる。C.Elegansのように、全ての遺伝子、ニューロンの配置が解明された生物もあるが、昆虫は1ミリ立方の脳に100万個程度のニューロンとそこ...続きを読むそこ複雑だ。霊長類のような大型の動物との違いはもちろん多く、色覚など紫外線、青、緑に感受性があり(赤はない)、短波長側にずれている。体が小さいため視力も0.01とか0.02程度で空間分解能に劣る。その代わり明暗の検出や時間分解能は優れており、ハエには蛍光灯のちらつきも見えているそうだ。神経回路は単純で、バッタの羽のニューロンは2-3個しかない。面白かったのは、相違点よりも類似点の話。これには記憶におけるCREBの役割など、古くから保存されてきたものもあるが、動きの検出回路などのように、単眼と複眼では全く違うハードウェアにも関わらず大型動物と同じ原理のものがあり、これが異なる進化の過程を経て同じものにいたる収斂進化の好例となっている。カニッツァの三角形など、錯視も起こるそうだ。また、ゴキブリのニューロンに電極を刺す苦労や、ハチのダンスが正しく解読できたかどうかロボットを使って確認する話など、実験の現場の話もとても面白かった。■行動のしくみを一つ一つニューロンの働きに還元して理解したい
バイオミミクリーへの関心から派生して「昆虫」の本を読んでみる。 そういえば子供の頃は、昆虫好きだったなと思い起こしつつ、最近の「昆虫」への関心は、1年半くらい前に宮古島でキャンプをした時にスタートしている。 自然のなかで、ボーとしたり、散歩したりしているなかで、目の前を蝶とか、蛾とか、色々、昆虫...続きを読むが飛んでいる。 ふと、こんなに小さなものが、どうやって飛行を制御しているのだろうという疑問が湧いた。 小さの蝶の大部分は、羽で胴体の部分は限りなく小さくて、脳もほとんどないに等しい大きさ。 こんな小さな脳でどうやって様々な情報を処理して、それを動きに伝達して、風とか、色々な条件の変化に素早く適応しているのだろう、ということが不思議で仕方なかった。 昆虫は、なんだか地球外からやってきた生命というか、高性能の工学機械のような気がした。 という感じで、この本を読んみた。 新書にしては、かなり本格的な本かな?素人的には細かいところはついていけないところもあったが、興味の対象は全く同じかな? こんな小さな脳でどうしてこんなに複雑なことをなしているのか? ということ。 純粋に好奇心が満たされるとともに、そのメカニズムを知ることは、色々な領域で応用できそうな進化的な知恵がたくさんあることに納得した。
(アリ飼育者向けのレビューです) 直接アリに言及しているのは「第10章 ハチやアリの帰巣と偏光コンパス」くらいだが、この章がなくても十分に読む価値のある本。 昆虫がどのように周囲の情報を受容し、処理し、活動しているのか、研究の最前線を紹介しつつ、一般向けに解説した意欲的な新書である。 個別の昆虫につ...続きを読むいての話ではなく、ゴキブリ・トンボ・ハエ・コオロギ・ハチなどトピックによって使っている昆虫は違うが、昆虫一般に共通する内容を取り上げているようだ。 昆虫の行動を見て「ちっこいくせに、ちょこざいな!」と思ったことのある方で、どんな仕組みになってるのか興味があるなら、必読。 読んでみてまず、昆虫が思ったよりも「賢い」ことにびっくりした。 「ムシは学習しない」と思い込んでいたが、ゴキブリやコオロギやショウジョウバエでさえ「学習」や「記憶」ができるとか。ムシの能力を見くびっておりました。ごめんしてね。 また、昆虫は人間に比べて非常にコンパクトな設計の神経系なのに、必要な情報だけに絞って素早く処理するルートを持っている。ハエを叩こうと思ってもなかなかうまくいかないのは、ハエの視覚は画像解像度は低いけれども時間当たりの処理量がバツグンに多い(素早い動きを見切れる)ためだとか。 ニューロンだのキノコ体だの、難しい単語がバンバン出てくるし、誰々がどこそこの研究室で、といった話も多いが、ついていけるところだけ飛ばし飛ばし読んでも非常に刺激的な内容。 「誰がどのようにして解明したか」といった話は、たいがい自慢話みたいでつまらないように思うが、この本に関しては、「ひー、そんなめんどくさいことを!」と言いたくなるような研究(ムシの脳のニューロン1コ1コに電極を刺すとか)ばっかりなので、そういうことをしてくれた研究者の方々にひたすら頭が下がる思い。あの、今まで「なんでアリの研究はちっとも進んでないの!」とかほざいてましたが、もう言いません。この本読んだら言えません。すごく当たり前のようなことでも、それを科学的に証明しようとすると、ものすごーく面倒な手順が必要になるということを知った。 アリ飼育においても、非常に実践的に役立つ本である。 まず、「アリをあんまりバカにしちゃいかんな」という戒めになる。 そして(こっちがメイン)、餌にするハエなどを確実に捕まえられるようになる。 上述したように、ハエの視覚は時間処理速度は高いが画像解像度は低い。周囲の状況はうすぼんやりとしか見えていないが、素早い動きをするものには間違いなく反応できる。この本を読んで以来、飲食店などでブーンとごちそう(アリの)が飛んできてテーブルに止まると、「いらっしゃーい!」という気分になる。まずそっと捕獲容器(管ビンや円筒ケースなど)を準備する。そして極力ゆっくりと容器をハエにかぶせる。もうね、百発百中。最後の瞬間にシュパっと動きたくなるが、そこも我慢。最後の最後までスローモーションでやれれば、ハエは全く気づかない。明暗はけっこう分かっちゃうみたいなので、容器は透明なほうがいいのかも。容器の下に紙などを差し込んで持ち上げてから蓋をすれば、可愛いアリンコちゃんたちへのお土産ができる!我が家のアリンコたちの食糧事情は、おかげで少し改善されました。 あ。でも、飲食店であまりにも奇異な動きをしているとご迷惑かも。行動目的が「ハエの捕獲」であることも含めて。なるべく目立たないようにやることをおすすめします。
興味深い本だった。面白い、というには読むのに努力が必要だ。専門用語が山のように登場するためだ。そこはまあ仕方がない。神経に関わる言葉、化学的な用語、略称の山。それはまあ読み飛ばすつもりでも大丈夫ではある。 冗長性のあまりない小さな昆虫の脳がいかに優れているのかがよく判る。そしてほ乳類い代表される大型...続きを読むの、冗長性の高い脳のあり方との違いがよく判る。 虫の眼で見た世界が自分の見ている世界とどう違うのか、この本で初めて理解出来た。複眼の歴史の本やらいろいろ出会ったことはあるけれど、ここまできちんと書いてくれないと判らない。もちろん専門用語は今でもよく判っていないのだけれど。 しかし、昆虫には自分のことを考える余裕はなさそうだ。残念ながら。
水波誠 著「昆虫ー驚異の微小脳」、2006.8発行。この本も池澤夏樹氏が書評の本で面白いと推薦されていたので、一読しました。私にはとても専門的で難しい内容でした。ただ、ヒトの巨大脳に比べ、1立方ミリメートルにも満たない昆虫の微小脳が素晴らしいものであることはよくわかりました。陸の王者、昆虫の素晴らし...続きを読むい点は3つ。翅による高い移動能力、変態により成長と繁殖の完全分離の実現(効率的な資源利用)、花をつける植物と共生関係。いずれも神経系の働きが密接に関係しているそうです。ヒトと昆虫は進化を極めた双璧なんですね!
昆虫にも記憶や学習ができるとは全くの驚き。特に蜂やアリのような社会性を持ったやつらは、他の昆虫たちに比べ、コミュニケーションが必要な分、頭がいいらしい。高々100万個程度のニューロンで景色を記憶できるのだから本当に、驚異の微小脳である。
昆虫の神経行動学がここまで進んでいるとは驚き。この知見は応用がいくらでも利くだろうし、今後の発展が楽しみ。
ムズイ!論文を読んでいるよう。これで平易に解説をされているとは・・。でも昆虫は人間が思っている以上に高度な脳をもっていることが大変よく分かりました。
昆虫は、地球上で最も繁栄した動物群である。その繁栄の秘密は、彼らの小さな脳(微小脳)にある。本書は、新書ながら、昆虫の神経科学についての知見を網羅した教科書的な本である。 とても勉強になったが、厳密性を追求するあまり、決して読み易いとはいえないのが残念だ。一般向けの読み物というよりはむしろ、専門家...続きを読むを対象とした巨大な総説である。執筆には相当の労力を費やしたと思われる。(実際、5年もかかったらしい。)航海中の船は、幾度も難破しかかった。 大気によって散乱された太陽光が偏光していることは、知らなかった。レイリー散乱によるものである(空が青く、夕焼けが赤い理由)。ハチやアリの複眼は、偏光方向を検出する能力がある。偏光が最大である方向と、波長の長短の情報から太陽の位置を割り出し、その情報を使って正確に帰巣することができるのだ。 ハチやアリのもつ偏光検出器は、様々な向きに配置された偏光板のようなものである。一体、いかなる分子的メカニズムによって、レチナールの向きを揃えて光受容体を発現させることが可能なのだろうか?
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