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念願だった映画の宣伝会社に転職した弥生。そんななか、夫から切り出された「ある提案」を受け入れられず、忙しさにかまけて決意を先延ばしにしていた。だが、その日は確実に迫っていて……(「あなたのママじゃない」)。
優良メーカーに内定が決まった大学生の健生。サークルで知り合った恋人未満の彼女から同棲を仄めかされるが、うやむやにしていた。そんなある日、アパートに帰宅すると、かつて池袋で暮らしていた美空が現れ――(「BE MY BABY」)。
初対面なのに物怖じせず、屈託のない転校生の美月を前に、副担任の杏子の心は騒めいた。懸念されることの一つは、クラスの中心的人物で問題児である莉愛の虐めの標的になることだったが……(「まだあの場所にいる」)。ほか全5話。
閉塞的な現実を背負う人たちの、さまざまな葛藤の中で現れた「気づき」とは。
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Posted by ブクログ
私の信頼する書評家 藤田香織氏が朝日新聞書評欄で「打率十割」と紹介した一冊。
古矢永塔子初読。5話収録。
1話目の「あなたのママじゃない」は、読み終えて、あれ?、と思った。道に迷ってぐるっと回って、また同じところに出てきてしまった感覚。でも2度目に見る景色なので、既視感と、どこで間違えてしまったんだろう、と首を捻る感じ。
2話目で、藤田氏の言う意味がようやく理解でき、なるほどそういうことか!と膝を打つ。
今度はまるで違う場所に出てきてしまった感覚。「BE MY BABY」母として、ちょっといいよねとニヤけてしまう話。
3話目「デイドリームビリーバー」はイチオシで面白かった。次こそはどこかにあるはずの道案内を見落とすまいと、意気揚々と読み始めたのも束の間、物語に引き込まれ、気づいた時には「うわーまたか!」と身悶えた。
仕掛けもさることながら、純粋に、胸が熱くなる物語。
どれも確実にページを遡らずにいられない、恐るべし古矢永ワールド。
でもからくりだけじゃない。どの物語も、一つ一つは十分悲劇、なのにどこか底が抜けたような明るさが漂う。「胸を張って生きなよ」というメッセージを感じる。「こんな小説が読みたかったのだ」との藤田氏の言葉に大いに頷く。
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