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Posted by ブクログ
「胚培養士」、
この本を手に取るまでは職業として
そういった仕事があることすら知らなかった。
ヒトの胚(受精卵)を扱い、医師の指導の下、人工授精、体外受精、顕微授精などの生殖補助医療を行う仕事。
つまり、受精卵を育て、お母さんの子宮に戻すまで育て、未来に繫ぐ仕事。
胚培養士として働く長谷川幸が、
自分の出生の秘密を抱えつつ、
妊娠を望む女性たちと
ぞれぞれの人生の選択と幸せとは何かを見つめていく。
望んだ人たちみんなに授かってほしいと思っても、
どんなに医療の技術が進歩しても、
妊娠は努力したことが必ず報われるわけではない。
「治療で一番苦しいのは授からないことではなく、
やめどきがわからないことなのかもしれない」という言葉。
まるでゴールが見えないマラソンを走っているようで、
高い治療費、精神的な負担がのしかかり、
女性たちの行き場のない嘆きや悲しさに、
なんともやるせない気持ちになった。
女性たちの言葉、
胚培養士や医師の立場からの言葉、
そのどれもが心に刺さるものが多かった。
本山さん、乳がん患者さんのお話「おっぱいエール」以来でしたが、
胚培養士さんや妊娠を望む女性たちの
とてもリアルな心情が描かれており、
きっとたくさん取材されたんだろうなと思うし、
受精卵を「地球」
胚培養士さんを「世界でいちばん小さな命の保育士さん」と表現されていて、
とても素敵な作家さんだなぁと感じました。
Posted by ブクログ
【330冊目】とても面白かった!
長崎出身、32歳女性の胚培養士が主人公。恋人はおらず、結婚願望も、出産願望もない。だけど、顕微鏡が好きで、誘われるままに胚培養士になるため上京した。長崎の実家とも色々抱えていて…というお話。
物語自体も面白かったのですが、妊娠出産や不妊治療にまつわる論点や課題の多くが、話の筋に無理なくカバーされており、不妊治療の入門的に読むのもアリじゃないかなぁと思いました!
女性のしんどい思いはもちろんのこと、ある種の不妊治療に臨む男性の苦しい思いも書いてあったりして、公共交通機関の中で涙目になりながら読みました!
当たり前だけど不妊治療を考えるということは、すなわち家族を考えるということ。親との関係、子との関係だけでなく、夫/妻との関係や子どもがいる友人との関係をどう考えるか。作家さんの丁寧な取材のおかげで、それぞれがうまぁい塩梅で書いてあります。つらい現実をごまかさず、でも優しい眼差しで見つめる作家さんだなと思いました!
Posted by ブクログ
不妊治療クリニックで胚培養士として働く長谷川幸。
基本治療が保険適用となり不妊治療がより身近になった現代でも、報われない挑戦、それぞれの幸せが日々選択されていく。
生殖医療に関わる人間たちの葛藤と希望を描く長編小説。
不妊治療を軸に生まれた意味や家族とは何なのか、命の繋がりを問う物語のように感じました。
妊娠すること、母子共に健康に出産できることは奇跡なんだと何度も思い知ると同時に、不妊治療の現実を突きつけられた気がします。
何年も治療を経験した人にしかわからない苦しみと戦い、心も身体も限界を迎え、それでも授かれなかったときは自身で治療を終える判断をしなければならない。
諦め、絶望、周りのプレッシャーといった負の感情がダイレクトに伝わって、患者と治療する医療従事者の両方の思いに胸が詰まりました。
子供が生まれる尊さはかけがえのないものだけど、授かれなかった人も子供を持たない人生を選んだ人も、決して気の毒だったり不幸な訳ではありません。
結婚して子を持つことが「普通」とされる常識が変わり、個人の選択した幸せが尊重される社会であって欲しいと思います。
後半は幸とその両親の考えにあまり共感できずモヤモヤしましたが、網子がスパッと言葉にしてくれてスッキリしました。(網子も花岡先生も医院長も魅力的なだけに、田舎の価値観に囚われた両親たちが痛々しく見えてしまいました…。)
世代や年齢、性別を問わずもっと沢山の人に知って欲しい一冊です。
Posted by ブクログ
フォロワーさんの本棚で見かけ、興味を惹かれて手に取った一冊。
舞台は、不妊治療を支える「胚培養士(はいばいようし)」という、普段はあまり耳にすることのない生殖医療の世界だ。
一見すると重たくて敷居が高そうなテーマだけど、全体的に明るいタッチで描かれていてスルスルと読めちゃいました。
不妊治療の原因は女性側にあると思われがちだが、実際には男性側に要因があることも多いと知った。本来、夫婦で同じスタートラインに立っているはずなのに、いつの間にか女性だけが孤独に走り続け、心身を削っている現実がリアルに描かれている。男性側の「協力してやっている」という無自覚な傲慢さや、親世代の「孫の顔が見たい」という何気ない一言。それらが刃となって、いかに女性を追い詰めていくか……その描写が本当に切なくつらい。
なかでも、不妊治療の出口が見えない五十嵐夫妻の「法律で(やめどきを)決めてくれればいいのに」という言葉が深く心に残った。
多額の費用と時間を投じても、必ず報われるとは限らない。ゴールのない道を走り続けることが、どれほど残酷で孤独なことか。胸が締め付けられる思いがした。
新しい命の誕生は、まさに奇跡だよね。
胚培養士は「世界で一番小さな命の保育士さん」
顕微鏡の中に広がる「銀色の地球」たちが、一つでも多く無事に産声をあげられる世の中であってほしいと、願わずにはいられない。
「銀色の地球」もちょっと見てみたいかも。
ふと、十二国記のように木に子供が実る世界なら女性の負担も軽くなるのかな……なんて妄想してしまった。
でも、もし間違って半獣の実をもいでしまったら?と考えると、命の誕生は結局ままならないものなのかなと思わされる。
「女性だけの孤独な戦い」にさせないためにも男性にこそ手に取ってほしい一冊。子育てと同じく不妊治療も夫婦二人三脚なのだから。
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