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第66回 群像新人文学賞受賞作!
この部屋の住人は、みんないなくなる? 都市の片隅にあるマンションの一室、408号室に入れ替わる住人たち――。奇想天外な物語が、日常にひそむ不安と恐怖を映し出す。
同じ部屋で前の時間が見えないまま孤独と恐怖を積み重ねていく構成で細部まで考えられていた。
理不尽さと暴力的な状況がスリリングで、多様な恐怖を描ける人だと思った。――柴崎友香
一連の奇想天外な考察は、インスタレーションと呼ばれる空間芸術の手法とも似ていて、
日常性からの逸脱を効果的に演出するにはうってつけだ。
――島田雅彦
ある〈部屋〉のみを舞台にすることで、作品の〈空間〉は限定されている。
が、前の住人、その前の……と過去を連鎖的に想像可能で、今後の住人という未来も延々の想像が可で、その意味で〈時間〉が限定されない。そこに越境のポテンシャルが満ちている。――古川日出男
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Posted by ブクログ
とある街にある ( 恐らくはワンルームタイプの ) マンション。交通や買い物等の利便性が悪いというわけでもないのに、不思議なことに住人が居つかない 408号室。その入居者の変遷と各暮らしぶりを描いた短編集。
物語は、各話ごとに問題の部屋に入居する住人の視点で描かれる。
第66回 群像新人文学賞受賞作。
◇
初音羽奈子が引き籠もりに近い生活をするようになってから、3ヶ月が経とうとしていた。正月明けから会社に出勤できなくなり、体調不良を理由に1ヶ月ごとの休職を延長して今に至っている。
その初音の趣味はハエトリグモを飼い殺しにすることだ。
部屋に侵入してきたハエトリグモを捕らえて、瓶に閉じ込めたまま放置する。そして飢え死にして干涸らびた死骸をベランダから捨て去る。別に心が痛むということはない。無断で部屋に侵入する方が悪いと思うからだ。
ある日、チャイムが鳴りインターホンに出てみると隣室の女性で、頼みがあると言う。
その頼みとは、ナンバーキーを押し間違えて部屋に入れなくなったので、ベランダ越しに移らせて欲しいというものだった。 ( 第1話「初音」) ※全4話。
* * * * *
奇妙な作品でした。4話とも異常な人たちが登場します。彼らは恐らく、おしなべて自分自身や自分の人生に強い不満があるのでしょうが、なぜそんな行動に出るのかは理解に苦しみます。なのに読むのを止められないのです。
特に第1話「初音」は、まるで『トワイライトゾーン』を観るような強烈な印象がありました。
1話目と4話目はホラー仕立てで、まだストーリーを飲み込みやすい。
でも2話目「末吉」3話目「こがね」はなんと言えばいいのでしょう。読後のモヤモヤした気持ち悪さは格別でした。
各話を簡単に紹介しておきます。
第1話「初音」。
やがて部屋から出ようとしても出られなくなる初音。ハエトリグモの祟りとか呪いなのでしょうか。 ( そうだとしたら自業自得ではありますが……。)
隣室の女の正体と、初音はどうなったのかが知りたい。
安部公房『砂の女』を思い出しました。
第2話「末吉」。
運命を信じる女に拉致された末吉のその後が気になります。助平心からチャラい行動に終始した末吉が自滅したと言えます。
第3話「こがね」。
文鳥視点の話なのだけれどファンタジーとは言い難い。
友人から預かった文鳥「こがね」を置き去りにして失踪した住人 (若葉栞)。全てに嫌気が差したようですが、これも自爆に近いと思いました。
第4話「もぬけの考察」。
売れない画家が、部屋の壁に調度類のリアリズム画を描き始め、やがて自身をも描き込んでいきます。そして、完成とともに男は部屋と一体化し、肉体は消滅してしまいました。
人間の実体を失ったのだから、画家の男は自殺と言えるかも知れません。
諸星大二郎『壁男』に似た不気味さです。
ところで、部屋をリノベしても男は部屋とともにあり続けます。新入居者のことを考えると気の毒でしかありません。やがてこの部屋は事故物件扱いになるのでしょうか。
読後はおかしなことばかり考えてしまいました。
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